ヘソ天を夢見てる。

――わちとの関係は歯型から始まった――


小さな箱の中で更に小さくなっているチワワを撫でるために上から手を入れると、指先をガブリと噛まれた。
噛む力が弱いからそこまで痛くはなかったけれど、乳歯は先が尖っているから指にはしっかりと跡が残った。
自分が噛まれたことより、その怯えた顔に胸が痛くなった。
抱き上げようとすると、小さな箱の中を逃げ回る。無理やり捕まえるようなことはしたくない。

「ごめんね。怖かったね」

声をかけると、威嚇するようなウーっという小さな返事が返ってきた。
性格なのか犬種なのか、昔、実家にいたワンコとは全然違う。

タオルと小さな器にお水を入れたものを箱の中に入れてから、財布と大きめのエコバックを持って、近所のスーパーへ走った。

スーパーには、ペットコーナーはあっても選ぶほどの種類は置いていない。缶詰類も小粒のフードもないので、仕方がなく全年齢用のフードと一番小さいトイレシーツのパック、それからスーパーに併設する100円ショップで取り急ぎワイヤーネットと結束バンドを買って、また走って家に帰った。

ワイヤーネットで作った即席のケージにトイレシーツを敷き詰めて、端っこにフランネルの膝掛けを置いてから、そこへチワワの箱を入れた。そして抱き上げなくても出てこれるように、箱の側面にハサミを入れた。
ハサミが危なくないか心配だったのだけれど、チワワは手を入れた場所から一番遠いところで小さくなっていたので、作業は比較的楽にできた。
次にフードプロセッサで買ってきた大粒のフードを小さく砕いて、お湯を注いだ。
ふやかしたフードとお水を即席ケージの中へ入れたら、あとはこの子が自分で出てくるのを待つだけ。
しばらく見ていたけれど、見ているせいなのか、段ボールから出ようとしないので、その場から離れた。
見ていないフリをしたのだけれど、段ボールから出て来ない。


見ていないフリをするのは得意な方だと思ってたんだけどな……


梶井くんのことも、いっぱい見ていないフリをしてきた。