権威ある賞をWで受賞しても、一番に知らせたいと思った相手の隣には、他の男がいる。
それなのに独立して自分の事務所を立ち上げることを決めた時――未練がましく地元へ戻った。
今のマンションを借りてしばらく経った頃、俺の親に聞いたからと、晶が突然やって来た。
そして、事務仕事に手間取っている俺を手伝ってくれるようになった。
平日にふらりとやって来る晶に聞いたことがある。
『お前仕事は?』
『んー、辞めちゃった。ちょっと人間関係に疲れて……』
それ以上は言いたくなさそうだったから、聞かなかった。
晶の態度は、会わなかった期間なんてなかったかのように、昔と変わらない。
これまでと違っていたことと言えば――
晶が結婚するということ。
そして、晶が俺の前では何も食べなくなったこと。
前は好きだったお菓子も、すすめると「美味しいね」と言って食べはしたけれど、今思えばその表情はどこかぎこちなかったような気がする。
ふと嫌な記憶が蘇った。
大好きだった祖父が肺がんで抗がん剤の治療を始めてから、副作用で食べ物の味がしなくなったと嘆いていた。まるで砂を飲み込んでいるようだと言って、あんなに好きだった大福も食べなくなった。
その後、祖父は肺炎を併発してこの世を去った。
まさか……あり得ない。
それなのに独立して自分の事務所を立ち上げることを決めた時――未練がましく地元へ戻った。
今のマンションを借りてしばらく経った頃、俺の親に聞いたからと、晶が突然やって来た。
そして、事務仕事に手間取っている俺を手伝ってくれるようになった。
平日にふらりとやって来る晶に聞いたことがある。
『お前仕事は?』
『んー、辞めちゃった。ちょっと人間関係に疲れて……』
それ以上は言いたくなさそうだったから、聞かなかった。
晶の態度は、会わなかった期間なんてなかったかのように、昔と変わらない。
これまでと違っていたことと言えば――
晶が結婚するということ。
そして、晶が俺の前では何も食べなくなったこと。
前は好きだったお菓子も、すすめると「美味しいね」と言って食べはしたけれど、今思えばその表情はどこかぎこちなかったような気がする。
ふと嫌な記憶が蘇った。
大好きだった祖父が肺がんで抗がん剤の治療を始めてから、副作用で食べ物の味がしなくなったと嘆いていた。まるで砂を飲み込んでいるようだと言って、あんなに好きだった大福も食べなくなった。
その後、祖父は肺炎を併発してこの世を去った。
まさか……あり得ない。



