ヘソ天を夢見てる。

それからしばらく晶はマンションへ顔を出さなかった。
「結婚準備が忙しい」と言われると、事務作業を手伝ってもらっているという立場だから、無理強いは出来ない。

もしかしたら、バレンタインをさけているのかもしれないとも思った。
友チョコは小学生くらいからもらっていたけれど、高校に入ってからは少しでも意識してもらいたくて、そのお返しに義理とは言い難いことをしてきた。俺のそういう行為を今は重く感じているのかもしれない。

晶がもうすぐいなくなる現実は着実に近づいている。


玉ねぎのたっぷり入ったオムレツと、チーズとハムを挟んだライ麦パンを朝食のような昼食として食べていると、スマホがメッセージを受信した。
晶からで、「まいだーりん」というふざけたメッセージのすぐ後に写真も送られてきた。

晶と男が一緒に写った写真。
男は見るからに人柄の良さそうなやつで、写真で見る限りはお似合いだとしか言いようがない。
明らかに年上で、実直そうなサラリーマンタイプ。
これが、晶の選んだ相手……

「――んだよ……」

既読だけつけたスマホをテーブルの上に投げた。


祝福……しないと……だよな。俺はただの幼馴染なんだから。

結婚祝いは形に残らない物を贈ろう。すぐに跡形もなく消えて無くなるような物。

そう言えば芸大の先輩は、結婚記念日に結婚した年のワインをあけると言っていた。

晶の生まれた年のワイン……か。
相手が酒を飲むのかどうかは知らないけれど、そんなことはどうでもいい。晶が白ワインを好きだという事実だけあればいい。