ヘソ天を夢見てる。

「たまには作ってもらう喜びを味わいたい」

俺の言うことなんてフル無視で、晶は俺の手からスマホを奪うと写真を見つめた。

「意味フ。これだって、彼女が作ったみたいに書いてあるけど、実はオジサンの自作自演かもしれないよ?」

「それはない」

「どうしてそんなことわかるの?」

くすくすと可笑しそうに笑うたびに、俺の頬をその髪の毛がかすめる。
さっきからスマホを持っていない方の手は俺の肩に置かれたままでいるから、どうしてもそこへ神経が集中してしまう。

「なぁ、さっきから距離近いんだけど? こんなとこ旦那に見られて誤解されたらどーすんの?」

今度は思いっきり笑われた。

「ナイナイ! だって、成だよ? それにまだ旦那じゃない」

「春には旦那になるんだろ? 同じだよ」


大学卒業後、しばらく先輩のいるデザイン事務所で働き、独立を機に再び晶のいる地元へ戻って来た。
けれども、全てが昔と同じとはならなかった。
俺は実家からそう遠くない場所へ事務所兼自宅となるマンションを借りて住み、一方の晶は大学時代から付き合っているやつと3月に結婚を控えている。

晶からその話を聞いた時は、頭の中が真っ白になった。
付き合ってるやつがいるのは聞いていたけれど、それが結婚まで話が進んでいるとは思いもしていなかった。
しかも結婚後は相手の仕事の都合で海外へ行くと言う。


「向こうへ行ったらもう帰って来ないかも」

俺の気持ちにこれっぽっちも気づいていない晶は平気でそんなことを言う。

「式場へさらいに行こうかな」

冗談ぽく言うと、真面目に返事を返された。

「向こうでふたりきりの式を挙げるから無理だよ。私がいなくなったら空を見上げて泣いてね」

「誰が泣くか。バーカ」


バカなのは俺だ。