ヘソ天を夢見てる。

「もう半年くらい更新がないんだよなぁ」

「彼女と別れたからじゃない?」

俺が持っているスマホを自分の方へ向けるために、晶の冷たい指がほんの数ミリほど俺の指に触れた。

「どの料理も手がこんでるねー」

「だろ? 俺だったら、こんな美味そうなご飯作る彼女とは絶対別れたりしないけどな」

「彼女の方から別れを告げたのかもしれないよ?」


晶が俺の元から去って行くみたいに、か。
なんて、付き合っているわけではないから、晶がどこへ行って何をしようと、それをとやかく言う権利は俺にない。


(なり)は料理上手いんだから、相手にまで求めなくてもいいじゃない。今日のお昼は何を作ったの?」

「簡単なサンドイッチ。忙しかったから」


晶だけが俺のことを「一成(かずなり)」とは呼ばず、「(なり)」と呼ぶ。理由は知らない。気がついた時にはそう呼ばれていた。


「晶は作ってくれないし」

「自分より料理の出来るひとに作るなんて嫌だよ」

「昔はよく一緒に作ってたじゃん」

「一緒に――って、作ってたのは成だけじゃん」



最初はオムライスだった。

お互いの両親が仕事から帰って来るのを待つ間、一緒に見ていたテレビでオムライスの特集をしていて、晶が「ふわふわ卵のオムライスが食べたい」と言ったのがきっかけ。
その時はもう中学生で、「お腹が空いて待てなかったら適当に何か食べておきなさい」みたいに親からも言われていたから、「じゃあふたりで作ってみようか」となった。

ネットでレシピを探し、お互いの家から材料を持って来て、いざ作り始めたら、晶がとんでもなく不器用だということが判明した。
包丁を持たせれば手を切りそうなくらい危なっかしいし、フライパンを振らせれば中身がジャンプする。殻を入れずに卵を割ることも出来ない。

それで、お互いの役割を分担することにした。
料理は俺が担当。晶はレシピ検索と材料集め。そして後片付けはふたりで。

そんな関係は、俺が地元から遠い大学へ行くまで続いた。