ヘソ天を夢見てる。

「……そろそろ帰らないと。わちが待ってる」

「わちって?」

「さっき話してたチワワの名前」

「結局、お姉さん、そのチワワ飼ってるんだ?」

「マンションもペット可の物件へ引っ越してね。今日も仕事から帰って、散歩へ行って、ご飯をあげてから出て来ました。もちろん部屋はエアコンを入れたままです」

暑すぎるのも寒すぎるのもだめだから、わちが来て以来、家のエアコンはほぼ付けっ放し。
雨の日以外は散歩もかかしていない。
わちは人や車は怖がるくせに、河川敷まで行くと途端に元気一杯猛ダッシュするから、わたしは前より健康になった気がする。

「チワワだからって、散歩をなめたらダメですね。もうあれは散歩なんて生ぬるいものじゃありません」

隣のひとはビールを飲みながら、どうでもいいような話を笑って聞いてくれている。

「で、そのワチをくれた人とはどうなったんですか?」

「彼とは……あれが最後でした。もう一年になります」

「もう一年」じゃない。自分で言っておきながら脳内で否定した。
まだ一年しかたっていない。
かなり酔っているはずなのに、その辺のところだけははっきりとしている。

「さようなら、お兄さん」

「ばいばい、お姉さん」


名前も知らないひとに手を振って店を出た。

外は夜だというのに暑くて、もあんとした空気が体に纏わりつく。


どうしようもなく気分が重いのは飲みすぎたせい?

それとも、今日がちょうどあの日から1年目だから?