ヘソ天を夢見てる。

生まれた時から隣同士で、保育園から高校までずっと同じ。
おまけに両家とも両親は共働きで家に不在がちだったから、どちらかの家で親の帰りを待ちながら一緒に過ごしてきた男女。
少女マンガならこれで恋愛フラグが立たないわけがない。

けれども、そう甘くないのが現実。



今日の昼食は――と言っても、もうすぐ3時になろうかという時間に、朝買っておいた全粒粉のパンで肉厚なベーコンとレタスをたっぷりはさんだサンドイッチを作り、コーヒーを淹れた。
作る時間より食べる時間の方が早いかもしれない。
早々に食事を終え、後片付けを済ませると、玄関に耳をすませる。

幼馴染の樋野(あきら)が来るとしたらこの時間帯。

マンションのドアが開き、「外は寒いよ~」という声とともにパタパタと足音が近づいて来たので、待っていたことを気づかれないようにスマホへ視線を落とす。
晶はコートを脱ぎ、いつものように空いているイスの上へかけると、すぐに俺のそばまでやって来た。

「何見てるの?」

背後から覗き込んできたので、その柔らかな猫っ毛が首元にかかる。
相変わらずの無防備な距離感は長年一緒にいた故の副産物。

「知らないやつの彼女が作ったご飯」


見ていたのは、どこの誰かも知らないやつが投稿したご飯の写真。

どのくらい前だったか、玄米ご飯にハマった時があって、いろんなレシピを検索した中にそのアカウントの写真があった。
何となくタップしたら、レシピなんか掲載されてなくて、「#玄米栗ごはん」「#大根の味噌汁」「#南瓜のいとこ煮」というメニューと一緒に「#彼女」とあるだけだった。

最初は彼女自慢かとあきれたのだけれど、あるのはご飯の写真だけ。
その「#彼女」が作る料理からも、写真を投稿してるやつからも、お互いへの愛情が伝わってくる。
こいつは、この「#彼女」のことが本当に好きなんだな、と思った。

そのアカウントは、数人からのフォーローはあっても、本人は誰もフォローしていない。
世界中の人間に「#彼女」の作ったご飯を自慢したいくせに、どこか秘密主義でもある。
そこに親近感を感じたのかもしれない。その日から投稿をチェックするようになった。
けれども、半年くらい前までは定期的とまではいかないながらもあった投稿が、今では全く更新されていない。