ヘソ天を夢見てる。

早江さんの喫茶店で働くきっかけとなったのはナンパ(?)だった。

先月、派遣会社の契約が満了して、次の紹介もなかなかなくてどうしようかと思っていたところを早江さんにスーパーの前で声をかけられた。

『昼間にこんなところを歩いてるってことは、今、アンタは無職だね?』

『え……あ……はい』

『だったらうちで働きなさいよ。喫茶店をやってるんだけど、近頃はひとりじゃきつくなってきてさ』

接客業なんてわたしには絶対に無理だと思ったのだけれど、「食事付きだよ」と言われ、心が揺れた。

『一瞬考えたろ? 他に仕事が見つかるまででいいよ。どうしても向いてないと思ったらすぐに辞めてもいいし』

『まだ何も……』

『これまでと同じことしてたって何も変わんないよ?』

半ば強引な誘いにも関わらず、その言葉で心が動いた。
それでそのまま働くことを決めた。


早江さんのお店は駅前にあるようなカフェとは違い、昔ながらの喫茶店で、ランチタイムになるとすごい勢いでお客さんが入って来て、またすごいスピードで去っていく。
スマイルを売っている暇なんて全くない。
それが逆に助かった。
嵐が過ぎると、お店を一旦クローズして自分たちのお昼ご飯を食べる。
それからまたお店を開けて、閉めるまではのんびりとしたもので、全くお客さんが来ない日もある。