ヘソ天を夢見てる。

名指しされた営業部長が総務部長の質問に答える形で口を開いた。

「結婚したい相手がいるという趣旨の話は梶井くんから聞いていた。飲みの席だったし、名前までは教えてもらわなかった。ただ、噂になっている相手ではないと、はっきり言っていた。それから、梶井くんの私物を整理したのは沢渡さんだった」

「沢渡さん、まだ何か言いたいことがありますか?」

「浅葱さんのだって証拠もないじゃないですか」

「自ら申告する機会をあげたつもりだったんですけどね」

「意味がわかりません!」

総務部長は大きなため息をつくと、人事部長に視線を向けた。

「理由はどうあれ、2人が騒ぎを起こしたことには変わりないのだから、処分なしというわけにはいかない。それは理解しておくように。それから、沢渡さんには派遣会社からいろいろクレームがあがっているので、良い機会だから話そうか」

「では解決ということで仕事に戻りましょうか」

沢渡さんと人事部長を残して会議室を出ると、スマホを手に営業部長が誰かと話しながら営業部へ戻って行ったので、総務部長とふたりが残された。

「社会人としては、やり方がまずかったわね」

「……申し訳ありませんでした」

それは自分が一番良くわかっている。
あんな騒ぎを起こすなんて、愚かにもほどがある。

不意に総務部長の口調が優しいものに変わった。

「相談……なのかな? 梶井くんとエレベーターでふたりきりになった時に、お勧めのジュエリーショップを教えて欲しいと言われたの。誰にあげるのか聞いたら、内緒って。でも、すぐにわかっちゃった。彼、食堂であなたをいつも目で追ってたから」


わたしだけが……梶井くんの気持ちに鈍感だった……
でも、もうどうやったって、取り返しがつかない。


「でもそれだけの理由であなたの肩を持ったわけではないの。梶井くんに勧めたジュエリーショップには知り合いが勤めていてね、内緒で教えてもらった。接客メモにちゃんと浅葱想世という名前が残ってた」

総務部長は私の手を取り、梶井くんの指輪を置いた。

「梶井くんのご実家にも確認した。指輪は浅葱さんに渡して欲しい、って言われたわ」

返してもらった指輪を両手で握りしめた。