ヘソ天を夢見てる。


わたしは……バカだ……

もっと他に方法があったはずなのに、感情にまかせてとんでもないことをしてしまった。


沢渡さんとわたしは会議室に呼ばれ、営業部、人事部、総務部の部長に囲まれて座った。

「状況を説明してもらおうか」

最初に発言したのは上司である人事部長だった。
いつもは温和な話し方の部長が怒っている。

「浅葱さんがいきなり私の指輪を取ったんです。周りにいたみんなが証人です」

「浅葱さん、それは本当なのか?」

「……はい……」

「返しなさいよ!」

沢渡さんが席を立って、バンっとテーブルを叩いた。

「座りなさい」

沢渡さんを注意したのも人事部長だった。
営業部長はさっきからポケットの中のバイブ音を気にしている。

「浅葱さん、理由は?」

その質問をしたのは総務部長。この会社で唯一役職付きの女性。


理由……理由は――


ぎゅっと目を閉じた。

あの騒ぎの時に、誰かが言うのが聞こえた。

『二股?』

『浅葱さんの勝手な嫉妬じゃないの?』

『梶井くん、沢渡さんと付き合ってながら浅葱さんにも手を出してたってこと?』

『梶井くんがあんな地味な子相手にするわけないじゃん』


バカなわたし。
わたしは何を言われたっていいけど、梶井くんが悪く言われるのは違う。
わたしのせいで……どうしてこんなことしちゃったんだろう……


「理由は……」

「浅葱さんが沢渡さんから取ったという指輪を出して」

首を振るわたしに、総務部長は「大丈夫」と付け加えた。
何が大丈夫なのかわからなかったけれど、この状況では渡すしか選択肢はない。
ずっと握りしめていた指輪を部長に渡した。

「刻印が入ってるわね。To S From M。沢渡さん、下の名前は?」

「……桐香」

「浅葱さんの下の名前は、想世よね。この刻印のSはあなたね」

「違います! 沢渡のSです!」

総務部長は大きなため息をついた。

「自分で言って、無理があるとは思わないの? 刻印を名字で入れる人がいると思う? 大之木部長、さっきからスマホばかり気にしていらっしゃいますが、何かご存知なんじゃないですか?」