ヘソ天を夢見てる。

「……どうして、わたしのこと想世って……」

「あ……そっか。ごめん。あいつがいつも想世って呼んでたから」


梶井くんがわたしを?
そんなの呼ばれたことない。
いつも「浅葱さん」としか呼ばれていなかった。


「どうしてわたしのことを知ってるんですか?」

「寝顔だったけど、写真見せてもらったから。あいつそれ見ながらよくへらへらしてた」


寝顔?
写真を撮られたことも知らない。

梶井くんはわたしとのことを「誰にも言うな」って。
それなのに、どうしてこのひとは知ってるの?


「梶井くんは、わたしのことを何って言ってましたか?」

「え? 普通に彼女って。正確には『かわいい彼女』だったかな」


彼女――? かわいい?


「1年かけて口説き落としたって聞いたよ」


1年……?
梶井くんが、うちに泊まるようになるまで……1年……


「あの沢渡って子は梶井にひどく執着してたみたいで、あいつに近づく子に陰湿な嫌がらせをしてたらしいんだ。派遣の子とかそれで何人も辞めてるって。だから想世ちゃんのことは結婚するまで隠し通すって言ってたけど、俺は会社違うから教えてもらった」


「誰にも言うな」は……わたしのため……
会社で無視されてたのも……


「プロポーズされたんだよね……記念日に決行するって、あいつ……俺に言って……」


プロポーズ?

記念日?


「想世ちゃんのマンションはペット不可だから子犬をプレゼントして……そのマンション出て俺と暮らそうって言う――って……あいつ……バカなことを……指輪も用意して……なのに……どうしてこんなことに……ごめ……一番辛いのは……想世ちゃ……」

久慈さんの声はだんだん聞き取りにくくなっていって、最後には泣き声でわからなくなった。


彼女

指輪

プロポーズ


久慈さんの話は何もかも初めて聞くことばかりで、それを信じていいのかわからない。