ヘソ天を夢見てる。

梶井くんのお通夜は、その日の夕方に行われた。

同期だけでなく営業部や他部署の人達も来ていて、泣いている人が大勢いた。その中でも沢渡さんは、人目をはばかることもなく泣き崩れていた。

「ふたりは付き合ってるって噂があったけど、やっぱりそうだったんだね」

「かわいそう……」

誰かが小声で言うのが聞こえた。


お通夜の後、同期の子達が集まって梶井くんの話をしていたけれど、その中心にいたのは沢渡さんで、それを横目にひとりで会場を出た。

お昼から降り始めた雨は更にひどくなっていて、まるで梶井くんの死を泣いているみたい。

暗い中を大きな通りに向かってぼんやりと歩いていると、「ちょっと! 待って!」といきなり傘の先を引っ張られた。

想世(そよ)ちゃん……だよね? 浅葱想世ちゃん」

知らないひと。
同じ会社じゃない。
それなのにこのひとはわたしの名前を知っている。
名前だけじゃない。話しかけて来たってことは、顔も知っている?

「どちら様ですか?」

「久慈祐樹。梶井から名前聞いたことない? 大学が同じだったんだけど」

そう言われてみれば、何度かその名前を聞いたことがある。

「……サーフィン同好会の……?」

「そう。その久慈です。あの場ですっごい泣いてたのって、沢渡って子でしょ? 想世ちゃんは大丈夫? どこかで食事でもしながらあいつの話とかする?」

「……チワワに……ご飯あげなきゃいけないから……」

頭を下げて立ち去ろうとした時だった。

「あいつ、本当に買ったんだ……じゃあ……言われたんだ? けど……こんなことになるなんて……」

久慈さんは言葉をつまらせる。

最後に会った日、梶井くんとはチワワのこと以外話していない。
やっぱり……「もう会わない」と言うつもりだったんだ……