デートの日、喧嘩してから数日。
未だにギクシャクしている俺たちは明らかに一緒にいる時間が減った。
今までどんな風に話してたのか、触れていたのか分からなくなってしまった。
俺からの連絡は控え、お弁当も友人と食べるようになった。
帰りも待つことはない。
なるべく侑李の邪魔にならないように務めた。
喧嘩して2日経った月曜日、いつものように昼休みを一緒に食べようと侑李に誘われ2人で空き教室へ。
向かい合って俺は購買のパンを、侑李は手作りのお弁当を食べ始める。
そこからは終始無言。
何か口に出そうとするも何も思い浮かばず、また不快にさせてしまったらどうしよう、と不安になってしまい結局何も話すことはなく先にお弁当を食べ終わった侑李は今日部活内で会議あるからその準備してくる、と俺を置いて出ていってしまった。
それから間の休み時間も侑李はこちらに来ることはなく友人たちと過ごしていた。
俺のところに来てくれないんだ、と寂しく思うが今の俺といても楽しくないよな、めんどくさいんだよな…と気持ちが沈んでいった。
友人と楽しそうに笑う侑李を見て見ぬふりをした。
帰りも待ちたかったが、喧嘩した日に言われた言葉を思い出してそのまま待つことなく帰宅した。
ピロン、と通知が鳴りスマホを見ると〚気をつけて帰って。〛と侑李から連絡が入っていてこんな時でも連絡をくれるんだ、と胸が苦しくなった。
家は静かであまり好きじゃない。
吹奏楽部の合奏、集団で走る野球部の掛け声。
それからサッカーをする侑李が見れる教室。
色んな音が混じり合う放課後の学校はとても居心地が良かった。
侑李を待つ時間は苦に思ったことがなかった。ゆっくりと時間が流れる放課後が好きだった。
でも今日は真っ直ぐ家に帰った。
部屋着に着替えて今日の分の洗濯を回して風呂に湯を貯める。
小一時間勉強をして時計を見れば19時だった。
リビングでお手伝いさんの作り置きのご飯をチンして食べる。
テレビをつけるとサッカーの試合が流れ始める。そういえば試合の中継がある日は走って帰るからと一緒に帰れなかったな。
待ったとしても今日は一緒に帰れない日だ。待たずに帰ってきて良かった。
ふと幼少期の頃を思い出す。
俺もサッカーを習っていた時期があった。
父親が仕事の合間に見ていたクラブチームに自分も入った。
まずチームプレイが出来ていないと父親から叱られた。オウンゴールを何発もかましてまた叱られる。
そんな俺は入って1ヶ月程度で父母から才能がないと判断されて辞めたくない、とごねる俺を無視して俺の息子がこんなんじゃ恥ずかしい、と言って半ば強制的に辞めさせられた。
ほかの球技はどうだろうか、と野球をやった。
これもダメだった。
ボールは遠くまで飛ばせないし打つことも出来ない。投げたボールが人に当たり、危険だと判断されてまた直ぐに辞めさせられる。
ならばチームプレイもない、球技でもない水泳はどうだろうか、と習い始めた。
結果から言うと才能はなかった。
タイムを競っても最下位だし背泳ぎは大の苦手だった。
これもまたすぐに辞めた。またどうせ才能がないと言われるんだろう、と今度は俺の意思で辞めたいと伝えた。
情けない、と母親に言われたのが今でも深く傷となって残っている。
1番楽しかったサッカーをもう一度やらせて欲しいと言えば親の顔に泥を塗る気かと父親に怒られた。
二度とやりたいなんて言えなくなった。
子供ながらに親がそんな俺を見て失望していることは何となく理解した。
ある晩、喉が渇いてリビングで水を飲もうと下に降りたときにまだ電気がついているのが見えた。
中には父と母がいて2人でなにか話しているのが見えた。
「あの子、何も出来ないじゃない…。
私たちの子供なのに。」
「別に俺たちから生まれたところで必ず才能があるとは言えないだろ。」
「どうして上手にボールが蹴れないの?何をさせても上手くならない。」
「…将来はあいつをチームに入れて一緒にサッカーをしたかった。俺の夢だったんだ。」
「「ダメね(だな。)あの子は。」」
そう2人が呟いたのを聞いて水を飲むことも忘れて自分の部屋へと駆け足で階段を上る。
俺はダメな子供なんだ。何も出来ない出来損ない。立派なお母さんとお父さんから生まれたのに俺は。
その日は寝ることも出来ず朝まで涙でベッドを濡らした。
…あぁ、嫌なこと思い出しちゃったな。
ぼーっとみていたサッカーの試合から歓声が沸いたのを聞いて意識がそちらに戻る。
いつも侑李が応援しているチームが点を入れた瞬間だった。
「俺も、サッカーが上手かったら侑李と肩を並べて試合に出れたのかなぁ」
「……羨ましいなぁ」
それは侑李への嫉妬だった。
サッカーが上手くて人望もあって、家族仲も良い。
俺の持っていない物をいっぱい持ってる侑李。
羨ましい、ただそう思った。
途端に何故か寂しくなり涙が出てくる。
1番にはなれなくてもいいから侑李の2番目でも3番目でも大切なものになりたい。
明日こそは、ちゃんと侑李と話そう。またいつもみたいに笑えたら日常が戻ってくる。
サッカー部の試合が終わればまた一緒にいてくれる。
それまでの辛抱なんだ。
涙を拭って明日に備える。風呂に入り歯を磨き寝る準備をする。
憂鬱だった毎日が嘘のように今は明日が来る事を望んでいる。
未だにギクシャクしている俺たちは明らかに一緒にいる時間が減った。
今までどんな風に話してたのか、触れていたのか分からなくなってしまった。
俺からの連絡は控え、お弁当も友人と食べるようになった。
帰りも待つことはない。
なるべく侑李の邪魔にならないように務めた。
喧嘩して2日経った月曜日、いつものように昼休みを一緒に食べようと侑李に誘われ2人で空き教室へ。
向かい合って俺は購買のパンを、侑李は手作りのお弁当を食べ始める。
そこからは終始無言。
何か口に出そうとするも何も思い浮かばず、また不快にさせてしまったらどうしよう、と不安になってしまい結局何も話すことはなく先にお弁当を食べ終わった侑李は今日部活内で会議あるからその準備してくる、と俺を置いて出ていってしまった。
それから間の休み時間も侑李はこちらに来ることはなく友人たちと過ごしていた。
俺のところに来てくれないんだ、と寂しく思うが今の俺といても楽しくないよな、めんどくさいんだよな…と気持ちが沈んでいった。
友人と楽しそうに笑う侑李を見て見ぬふりをした。
帰りも待ちたかったが、喧嘩した日に言われた言葉を思い出してそのまま待つことなく帰宅した。
ピロン、と通知が鳴りスマホを見ると〚気をつけて帰って。〛と侑李から連絡が入っていてこんな時でも連絡をくれるんだ、と胸が苦しくなった。
家は静かであまり好きじゃない。
吹奏楽部の合奏、集団で走る野球部の掛け声。
それからサッカーをする侑李が見れる教室。
色んな音が混じり合う放課後の学校はとても居心地が良かった。
侑李を待つ時間は苦に思ったことがなかった。ゆっくりと時間が流れる放課後が好きだった。
でも今日は真っ直ぐ家に帰った。
部屋着に着替えて今日の分の洗濯を回して風呂に湯を貯める。
小一時間勉強をして時計を見れば19時だった。
リビングでお手伝いさんの作り置きのご飯をチンして食べる。
テレビをつけるとサッカーの試合が流れ始める。そういえば試合の中継がある日は走って帰るからと一緒に帰れなかったな。
待ったとしても今日は一緒に帰れない日だ。待たずに帰ってきて良かった。
ふと幼少期の頃を思い出す。
俺もサッカーを習っていた時期があった。
父親が仕事の合間に見ていたクラブチームに自分も入った。
まずチームプレイが出来ていないと父親から叱られた。オウンゴールを何発もかましてまた叱られる。
そんな俺は入って1ヶ月程度で父母から才能がないと判断されて辞めたくない、とごねる俺を無視して俺の息子がこんなんじゃ恥ずかしい、と言って半ば強制的に辞めさせられた。
ほかの球技はどうだろうか、と野球をやった。
これもダメだった。
ボールは遠くまで飛ばせないし打つことも出来ない。投げたボールが人に当たり、危険だと判断されてまた直ぐに辞めさせられる。
ならばチームプレイもない、球技でもない水泳はどうだろうか、と習い始めた。
結果から言うと才能はなかった。
タイムを競っても最下位だし背泳ぎは大の苦手だった。
これもまたすぐに辞めた。またどうせ才能がないと言われるんだろう、と今度は俺の意思で辞めたいと伝えた。
情けない、と母親に言われたのが今でも深く傷となって残っている。
1番楽しかったサッカーをもう一度やらせて欲しいと言えば親の顔に泥を塗る気かと父親に怒られた。
二度とやりたいなんて言えなくなった。
子供ながらに親がそんな俺を見て失望していることは何となく理解した。
ある晩、喉が渇いてリビングで水を飲もうと下に降りたときにまだ電気がついているのが見えた。
中には父と母がいて2人でなにか話しているのが見えた。
「あの子、何も出来ないじゃない…。
私たちの子供なのに。」
「別に俺たちから生まれたところで必ず才能があるとは言えないだろ。」
「どうして上手にボールが蹴れないの?何をさせても上手くならない。」
「…将来はあいつをチームに入れて一緒にサッカーをしたかった。俺の夢だったんだ。」
「「ダメね(だな。)あの子は。」」
そう2人が呟いたのを聞いて水を飲むことも忘れて自分の部屋へと駆け足で階段を上る。
俺はダメな子供なんだ。何も出来ない出来損ない。立派なお母さんとお父さんから生まれたのに俺は。
その日は寝ることも出来ず朝まで涙でベッドを濡らした。
…あぁ、嫌なこと思い出しちゃったな。
ぼーっとみていたサッカーの試合から歓声が沸いたのを聞いて意識がそちらに戻る。
いつも侑李が応援しているチームが点を入れた瞬間だった。
「俺も、サッカーが上手かったら侑李と肩を並べて試合に出れたのかなぁ」
「……羨ましいなぁ」
それは侑李への嫉妬だった。
サッカーが上手くて人望もあって、家族仲も良い。
俺の持っていない物をいっぱい持ってる侑李。
羨ましい、ただそう思った。
途端に何故か寂しくなり涙が出てくる。
1番にはなれなくてもいいから侑李の2番目でも3番目でも大切なものになりたい。
明日こそは、ちゃんと侑李と話そう。またいつもみたいに笑えたら日常が戻ってくる。
サッカー部の試合が終わればまた一緒にいてくれる。
それまでの辛抱なんだ。
涙を拭って明日に備える。風呂に入り歯を磨き寝る準備をする。
憂鬱だった毎日が嘘のように今は明日が来る事を望んでいる。

