君の一番になりたい

「隼人、ごめんお待たせ」

「お疲れ様。行こっか。」

侑李が部活から戻ってきた。ダッシュで帰ってきたのか少し息が切れている。

「そんな急がなくても良かったのに。」

「待たせちゃってるの申し訳ないじゃん」

俺が好きで待ってるだけなんだから気にしなくていいのに。
でも少しでも早く一緒にいれるのは嬉しい。

「待ってる間さ、明日行きたい場所とか調べてたんだよね。」

「え~ありがとう!」

スマホを取りだして二人で見る。
自然と体が触れ合って顔が近くなりドキドキする。

「水族館の近くに映画館あったよね?
新作のホラー映画見たいな~」

「じゃあ映画見に行こうか。」

二人で明日のスケジュールを決めていけばあっという間に分かれ道だ。
名残惜しいけど今日も部活で疲れただろう侑李を引き止めるのは気が引けた。

「何かあったら連絡して。じゃあまた明日!」

「うん、また明日、」

今日はキスしてくれなかったな……。
侑李の背中が見えなくなるまで見ていた。

ーーーー

土曜日。デート当日。

昨晩から明日着ていく服を悩みに悩んで結局いつもと同じような緑のパーカーと黒のジーンズを履いた。
少しワックスをつけて髪を整えた。
大丈夫かな、変じゃないかなと何度も建物のガラスに映る自分を見てしまう。

家でそわそわして落ち着かなくて集合時間より少し早くついてしまった。
久々のデート、待ち遠しくて仕方がない。

いつもは集合時間より早めに着くのに時間をすぎても侑李の姿はない。


あれから30分が経ち、集合時間を大幅に過ぎていた。
LINEを入れたり電話をしてみたり色々試して見たが既読にならない。
電話にも出ないのでなにか事故に巻き込まれていたりしたらと少し不安になっていた。

1度来た道を引き返そうかと考えていたところに隼斗!と遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。

侑李が走ってこっちに向かってくるのが見える。
黒のシャツに青のジーンズ。シンプルだけどそれが侑李のスタイルの良さを引き立てている。
息切れしているから急いだんだな、と分かって遅れたことに文句を言おうとしていた気持ちも萎んでいた。

「ほんとに遅れてごめん!途中で女の子たちに話しかけられちゃって、凄いしつこい子達で撒くのに時間かかっちゃった。」

侑李はかっこいいから仕方がない、、とは思いつつ侑李との時間を少しでも奪った女子達に少しばかり嫉妬し苛立つ。

「侑李はかっこいいからね、でも無事でよかった。」

「ほんとにごめん。映画の料金奢るから。」

「気にしないでいいいよ。」

ここで俺が怒って雰囲気を悪くしたくなくて口に出そうになった言葉を飲み込んだ。

それじゃいこっか、と一緒に観たいと言っていた映画を見に映画館へ向かう。
上映時間にはまだ余裕があったのでポップコーンとドリンクを頼んで中へ入る。

「俺が持つよ」

そう言ってさりげなく持ってくれる。
侑李のこういう優しさが好きだ。

面白いと評判で中には既にかなり人がいた。
後方真ん中の席でなかなか見やすそうだ。
ホラー映画なんて久々に見る。

「楽しみだね」

「うん」

「映画が終わったらどこかでご飯たべよっか」

コソコソと次に行く場所の話をする。
侑李はハンバーグが食べたいとスマホで色々と調べていた。
俺はなにか腹に入れば良いかなと思っていたから侑李が行きたいと言っていたハンバーグ屋に決めた。

それから間もなくして場内が暗くなり映画が始まる。
侑李と手が触れたと思ったらそのまま手を繋いできた。
驚いて侑李を見ればこちらを見て笑っていた。
それだけで心臓がバクバクして映画冒頭は頭に入ってこなかった。

最初こそ内容より侑李の手の体温に集中してしまったいたが映画が期待以上のもので見入っていた。
ジャンプスケアでは周りから悲鳴が聞こえたりとホラーとしても楽しめたけど最後の最後で悲しい結末となり、感動で泣いてしまった。
侑李も楽しんでるかな、とふいに隣を見たら寝ていたのだ。

侑李が見たいと言っていた映画だった。
終わったら感想を言い合いたかったのに涙が引っ込んでしまった。

疲れてるのかもしれないけどそれより楽しくなかったのかな、起こすべき?いや、寝かせてあげた方がいいよな。

映画終盤もまたその事で集中出来ず曖昧な記憶のままエンドロールとなってしまった。
場内が明るくなり繋いでいた手が離される。

侑李はいつの間にか起きていたようで行こっか、と席を離れる。
俺も続いて席を離れ侑李の後をついていく。

「おもしろかったね」

「え?」

寝ていたのに?なんで嘘つくの?

「あれ、隼人には合わなかった?」

「いや、面白かった、凄く」

良かった、と笑いながらあのシーンとかさ、、、と考察や登場人物の心情など、気になった部分を話し始める。
寝てたはずなのになんで知ってるの?
新作の映画だから初めてじゃないと分からないはずなのに。

モヤモヤとしてしまいあまり声が届かなかった。


「隼斗?聞いてる?」

「あ、ごめん、」

「大丈夫?体調悪い?」

侑李は心配するように足を止めて顔を覗いてくる。
俺とは久々のデートなのに他の人とは遊んだの?映画見に来る時間あったんだ。

「さっき寝てたよね?」

覗いてきた顔が驚き、引きつっているのが見えた。
目が泳いでいるのを見て、嘘つかれたんだなと思った。

「なんで寝てたのに内容わかるの?誰かと来たことあった?」

「あー、隼人、それは」

「一緒に初めて見て感想言い合いたかったのに」

「……ごめん、この前友達と見に行ったんだ。」

それならそう言ってくれれば良かったのに。
なんで嘘なんてついたんだ。

「俺とデートする時間はあんまりないのに友達とは遊びに行けるんだね」

楽しみにしていた自分と一緒に初めての映画を共有できると思っていた自分が否定されたような気持ちになり投げやりに棘のある言葉をぶつけた。

やってしまった、と思った時には遅かった。