君の1番になりたい

小さい頃から色んなスポーツをやらされた。
だけど俺には水泳も野球もバスケもバレーもサッカーも………何をしても才能がなかった。

そんな俺の親はスポーツに携わる仕事をしている。
いつからか俺は期待されなくなり通っていたスクールも全て辞めた。いや、辞めさせられた。


「どうして上手にボールが蹴れないの?何をさせても上手くならない。」
「将来はあいつをチームに入れて一緒にサッカーをしたかった。」
「「ダメね(だな。)あの子は。」」


両親がそんな話をしていたのを聞いて胸が苦しくなった幼少期。興味を持たれないことへの絶望感。
授業参観で手を挙げても運動会で1等賞をとってもそこに家族はいなかった。

一人先生とお弁当を食べる俺はレジャーシートの上で沢山のおかずが並んだお弁当を家族で囲むクラスメイト達を見て、羨ましいと思った。

1等を取れなくても、テストで100点取れなくても、周りに家族がいて、褒めてもらえる子達を妬むことすらあった。

俺が中学に上がる頃には、両親はお手伝いさんに家のことを任せ、家に帰ってくることは少なくなり自ずと話す機会も減った。
今では最後にいつ話したのかも覚えていない。
その頃には両親の関係も冷めきっていたんだと思う。

そんな何も出来ない自分が嫌いになった。
自分に才能がないせいで、期待されて産まれてきたのに失望して関心を無くした家族。
いくら努力をしても運動も勉強も平均ぐらいで。
せめて勉強が出来たら、もっと褒めてくれたんだろうか。俺に関心を持ってくれたんだろうか。

俺は誰かの1番になれるんだろうか。

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3年に進級し、俺は空白の進路希望の紙と睨めっこしていた。

隼人(はやと)

名前を呼ばれハッと顔をあげるとそこには侑李(ゆうり)が前に立っていた。

「ごめんね、待たせたね」

「ううん、お疲れ様」

俺の恋人である侑李はサッカー部で部長、そしてをキャプテンしている。
強豪校である我が校で2年でレギュラー入りを果たし、持ち前の明るさ、強さと厳しさ、そして優しさを持ち合わせた彼は人望も厚く3年に上がると侑李は副部長に大抜擢された。

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俺との関係は1年生の夏に遡る。
最初は夏期講習で出会った。
夏休みに入り、俺は家にいても暇だからと学校で開催されていた講習へ参加した。

いつもの授業とは違い、参加希望の生徒のみで人も少ない為、先生がマンツーマンで教えてくれたり、外で実験したり課外学習という名目で美術館を訪れたりと、特別な経験ができた。
それに侑李も参加していた。

俺は一方的に田島侑李のことを知っていた。
成績優秀でスポーツもこなす。
俗に言うイケメンで、女子からも人気だった。
俺の欲しかった才能を全て持っている彼を勝手に妬んでいた。俺の悪い部分だ。
だから、そんな彼が講習に参加していると知って驚いた。

ある日の午後、その日の講習は教室で行われた。解散となり身支度を済ませて帰ろうとしたところ、突然の大雨で学校から出れなくなった。生憎傘は持ち合わせておらず、雨宿りも兼ねて図書館へ移動した。

扉を開けるとそこには田島が先にいた。
俺が入ってきたのに気づいて田島が話しかけてきた。

「同じクラスの西川だよね?」

「うん、そう。雨降ってきちゃってさ、雨宿りしてから帰ろうかなって。ごめん邪魔しちゃって。」

「全然!ほんとだ、全然気づかなかった。」

話しかけてきたことも、名前を知っていたことも驚いた。
俺は田島の向かいに座る。
田島の読んでいた本をチラ、と見ると〚誰でも分かる!筋肉の付け方〛と書かれた本。

他にも筋肉やストレッチなど、身体に関する本が積まれていた。

「努力家なんだな。」

「え?あぁ、そんな事ないよ。ただ、少しでもチームのためになればいいなって思ってただけ。」

恥ずかしそうに笑う田島。
俺はただ感心していた。

「西川も夏期講習受けてるんだよね?
今度の課外学習も来るの?」

「暇だし行く予定だよ。」

「ほんと!?他に誰かと行く約束とかしてなければ一緒に行かない?」

「俺はいいけど…」

次の課外学習というのが水族館だった。
生物の生態を知る、と言う名目で夏休みの思い出を作ろうとの先生の計らいだった。

「嬉しいよ!俺の周り、講習とかめんどくさくて受けてなくてさ、1人で回るのもなって思ってたんだよね。それに、西川のことずっと気になってた。」

「え……なんで?」

「西川って昔サッカー習ってなかった?
前に授業で試合した時、俺からボール取ったでしょ?凄って思ったんだよね。」

「いや…田島ハンデ貰ってたじゃん。それでだよ。」

俺のことを知っていたことにまた驚いて、聞いてみればそういうことか。
確かに習ってはいたけどそれもずっと前の話だ。あまりいい思い出じゃない。

「それでもだよ。上手いなって思った。」

「ありがとう。でも、もうずっと前の話。小学生とか。」

「そうなんだ。才能あるよ。」

そう言われて俺は少しイラッとした。
才能があるやつにそんなこと言われたって虚しいだけだ。
だけど、こっちの事情なんて知らない田島に悪気は無い。

だから、「ありがとう」と返した。