――カァァァンッ!
ルイの槍とスペルの槍が激しくぶつかり合う。硬質な金属音が響き渡り、衝突の衝撃波で二人の髪が大きく靡いた。
そこから始まったのは、お互い一歩も引かない高速の攻防だった。二人は同時に距離を詰め、槍の切っ先を交えながら息つく暇もなく魔法を放ち合う。
スペルが至近距離から放つ炎の弾を、ルイは瞬時に氷の壁を生成して防ぐ。
そして今度は、防がれたことで生まれた隙を突いてルイが巨大な水龍を放つが、スペルはそれを軽々と上空へ跳躍して回避してみせた。
「【豪炎雨】」
スペルはそのまま空中に留まり、眼下のルイへ向けて無数の炎の雨を降らせる。
「っ!【岩の遮断】」
頭上からの広範囲攻撃に驚きながらも、ルイは冷静に対処し、分厚い土壁をドーム状に展開してなんとか凌ぎ切る。
しかし、スペルの追撃はそれで終わらない。土壁が崩れると同時に、今度は鋭い雷撃を容赦なく落としてきた。ルイは地面を転がるようにして、これをギリギリで回避する。
体勢を崩したかに見えたルイだったが、即座に手をついて地を蹴り、反転。無防備な背中を狙って迫っていた追撃の炎に対し、振り返りざまに水の斬撃を幾重にも放って相殺した。
大量の水蒸気が視界を奪う中、二つの影が同時に動いた。
「甘いですよ、兄さん!」
煙を切り裂いてスペルの懐に潜り込んだルイが、下段から槍を跳ね上げる。だが、スペルはそれを予見していたかのように槍の柄でしっかりと押さえ込んだ。
「あなたの手口など、とうに見抜いています!」
至近距離で二人の視線が交錯する。スペルが鍔迫り合いから力任せにルイを押し返し、その隙を突いて至近距離から爆炎を放つ。ルイは咄嗟に氷の盾を割り込ませたが、衝撃で数メートル後ろへと滑らされた。
(やはり、強い……!)
息の詰まるような戦いの中で、ルイは心の底から実感していた。自分と兄であるスペルの実力は、ほぼ完全に互角。ルイはまだ底を見せていないが、それは相手も同じはずだ。
このまま戦いが続いても、決定打に欠け平行線を辿るだけだろう。しかし、ルイからしてみればそれで一向に問題はなかった。
(私は、兄さんをここで足止めしていればそれでいい)
しかし、スペルはそんなルイの思考を見透かしたかのように、停滞を許さなかった。ルイの牽制の魔法を強引に掻い潜り、一気に間合いを詰めてくる。
そして踏み込みの勢いのまま、鋭い突きを放つ。ルイはその重い一撃を槍の柄で受け流すようにして後方へ飛んだ。だが、スペルはそのまま地面に突き刺さった自身の槍を軸にして身体を回転させ、強烈な回し蹴りを放つ。
「くっ……!」
ルイはこれを咄嗟に両腕でガードするが、その重い衝撃に顔を顰める。そこからも、瞬きすら許されない激しい近接攻防が続いた。
スペルの猛攻は止まらない。回し蹴りの着地と同時に、彼は槍を烈風のように連続で突き出す。炎を纏った無数の刺突がルイを襲うが、ルイもまた槍を旋風のごとく回転させ、氷の魔力を乗せてそのすべてを弾き落とした。
カキンッ!ガィンッ!と火花と氷の破片が乱れ散る。互いに相手の思考を読むかのように、フェイントや死角への攻撃が完璧に防がれていく。
「いい加減、大人しくしていてください!」
「断ると言っているでしょう!」
ルイが氷柱や岩の塊を創り出して放つと、その度にスペルの灼熱の炎が飛んで来て相殺される。激しい魔力の衝突のせいで、二人の服は既に所々焼け焦げ、細かい傷が無数に刻まれていた。
それでも二人の動きが止まることはない。そして、スペルが燃え盛る炎を纏わせた槍で地面を思い切り突き刺した瞬間、足元で大爆発が起きた。
「くっ!?」
ルイは咄嗟に目の前に幾重にも氷の盾を展開した。しかし、その圧倒的な爆発のエネルギーには耐えきれず、盾ごと後方へと大きく吹き飛ばされる。
「まだ終わりませんよ!」
スペルはそう叫ぶと、爆炎を突き破って再びルイに向かって走り出した。ルイも体勢を立て直してすぐさま立ち上がり、迎え撃つようにスペルの方へと駆ける。
「これならどうですか、【エル・ライトニング】ッ!」
スペルが走りながら左手を前に突き出すと、その手のひらから空気を震わせるほどの巨大な雷撃が放たれた。
「なるほど……これは避けきれませんね」
ルイは即座に回避を諦め、自身の目の前に先程よりも遥かに分厚く強固な氷の壁を展開する。だが、それだけでは足りないと判断し、さらにその後ろに水のクッション、そして土の障壁と、三段構えの絶対防御を展開した。
直後、荒れ狂う雷と氷の壁が正面から激突し、耳を劈くような大音響と共に猛烈な爆風が巻き起こった。
「はぁぁぁぁっ!」
スペルがさらに魔力を注ぎ込むと、雷撃は氷を粉砕し、水を蒸発させ、ついに最後の土壁をも砕き散らした。その余波だけで、周囲の木々がへし折れんばかりに大きく揺れ動く。
「……」
スペルは槍を構え直し、警戒しながらもうもうと立ち込める煙の奥を見つめる。
やがて風が吹き抜け、徐々に煙が晴れてくると――そこには、極寒の冷気で薄氷の結界を纏い、無傷で静かに立っているルイの姿があった。
「……見事です」
スペルは思わず感嘆の声を漏らした。
「実力は変わっていないようですね……いえ、むしろ昔より上がっていますか」
涼しい顔で立つ妹の姿を見て、スペルは確信した。ルイは、自分と全く同等の強さを持っていると。
「兄さんも同じく、腕を上げていますね」
ルイもまた、息一つ乱していないスペルを見て、自身と拮抗する強者であることを改めて確信する。
「こうなると、お互い出し惜しみをしていては決着がつきそうにありませんね」
スペルがそう告げると同時に、詠唱の構えに入った。合わせたかのように、ルイもまた静かに詠唱を始める。
「「汝、我が声に応えよ。闇より生まれ、来たりし大いなる罪よ」」
二人の声が重なり合い、戦場に響き渡る。
「……蔑み尽くす、大罪が一つ、傲慢の罪」
「……欺き尽くす、大罪が一つ、虚飾の罪」
両者の足元から、禍々しくも圧倒的な魔力を孕んだ黒い光が輝き出す。
「――傲れ、ベリアル」
「――飾れ、ルシファー」
詠唱の完了と共に、漆黒の輝きが濁流のように二人を包み込んだ。
「「〈悪魔融合〉」」
二人を包み込んだ黒い輝きが、鼓動のように脈打ちながら徐々に収縮していく。そして、光が完全に弾けて消え去った時――そこには、悪魔の力を身に宿した異形の兄弟が向かい合って立っていた。
スペルの額からは二本の禍々しい角が生え、背中には光を吸い込むような漆黒の翼が顕現している。見開かれた両目は血のように赤く染まり、その肉体には呪印のような赤い模様が浮かび上がっていた。
対するルイの額にも同様に二本の角が生えているが、彼の髪色は神秘的な白金色へと変化し、背中には神々しさすら感じさせる六枚の純白の翼が生え揃っていた。瞳は金色と赤色のオッドアイへと変貌し、白く透き通るような肌にはスペルと同じく赤い模様が浮かんでいる。
「……さあ、始めましょう」
スペルが静かな、しかし確かな闘志を込めて言い放つと、ルイも力強くそれに答えた。
「えぇ、参ります!」
ルイが神速の踏み込みで突っ込んでいくと、スペルもまた大地を砕いて同じように突っ込んできた。
白と黒、相反する姿へと変貌した二人の悪魔が、再び激しくぶつかり合う。
ルイの槍とスペルの槍が激しくぶつかり合う。硬質な金属音が響き渡り、衝突の衝撃波で二人の髪が大きく靡いた。
そこから始まったのは、お互い一歩も引かない高速の攻防だった。二人は同時に距離を詰め、槍の切っ先を交えながら息つく暇もなく魔法を放ち合う。
スペルが至近距離から放つ炎の弾を、ルイは瞬時に氷の壁を生成して防ぐ。
そして今度は、防がれたことで生まれた隙を突いてルイが巨大な水龍を放つが、スペルはそれを軽々と上空へ跳躍して回避してみせた。
「【豪炎雨】」
スペルはそのまま空中に留まり、眼下のルイへ向けて無数の炎の雨を降らせる。
「っ!【岩の遮断】」
頭上からの広範囲攻撃に驚きながらも、ルイは冷静に対処し、分厚い土壁をドーム状に展開してなんとか凌ぎ切る。
しかし、スペルの追撃はそれで終わらない。土壁が崩れると同時に、今度は鋭い雷撃を容赦なく落としてきた。ルイは地面を転がるようにして、これをギリギリで回避する。
体勢を崩したかに見えたルイだったが、即座に手をついて地を蹴り、反転。無防備な背中を狙って迫っていた追撃の炎に対し、振り返りざまに水の斬撃を幾重にも放って相殺した。
大量の水蒸気が視界を奪う中、二つの影が同時に動いた。
「甘いですよ、兄さん!」
煙を切り裂いてスペルの懐に潜り込んだルイが、下段から槍を跳ね上げる。だが、スペルはそれを予見していたかのように槍の柄でしっかりと押さえ込んだ。
「あなたの手口など、とうに見抜いています!」
至近距離で二人の視線が交錯する。スペルが鍔迫り合いから力任せにルイを押し返し、その隙を突いて至近距離から爆炎を放つ。ルイは咄嗟に氷の盾を割り込ませたが、衝撃で数メートル後ろへと滑らされた。
(やはり、強い……!)
息の詰まるような戦いの中で、ルイは心の底から実感していた。自分と兄であるスペルの実力は、ほぼ完全に互角。ルイはまだ底を見せていないが、それは相手も同じはずだ。
このまま戦いが続いても、決定打に欠け平行線を辿るだけだろう。しかし、ルイからしてみればそれで一向に問題はなかった。
(私は、兄さんをここで足止めしていればそれでいい)
しかし、スペルはそんなルイの思考を見透かしたかのように、停滞を許さなかった。ルイの牽制の魔法を強引に掻い潜り、一気に間合いを詰めてくる。
そして踏み込みの勢いのまま、鋭い突きを放つ。ルイはその重い一撃を槍の柄で受け流すようにして後方へ飛んだ。だが、スペルはそのまま地面に突き刺さった自身の槍を軸にして身体を回転させ、強烈な回し蹴りを放つ。
「くっ……!」
ルイはこれを咄嗟に両腕でガードするが、その重い衝撃に顔を顰める。そこからも、瞬きすら許されない激しい近接攻防が続いた。
スペルの猛攻は止まらない。回し蹴りの着地と同時に、彼は槍を烈風のように連続で突き出す。炎を纏った無数の刺突がルイを襲うが、ルイもまた槍を旋風のごとく回転させ、氷の魔力を乗せてそのすべてを弾き落とした。
カキンッ!ガィンッ!と火花と氷の破片が乱れ散る。互いに相手の思考を読むかのように、フェイントや死角への攻撃が完璧に防がれていく。
「いい加減、大人しくしていてください!」
「断ると言っているでしょう!」
ルイが氷柱や岩の塊を創り出して放つと、その度にスペルの灼熱の炎が飛んで来て相殺される。激しい魔力の衝突のせいで、二人の服は既に所々焼け焦げ、細かい傷が無数に刻まれていた。
それでも二人の動きが止まることはない。そして、スペルが燃え盛る炎を纏わせた槍で地面を思い切り突き刺した瞬間、足元で大爆発が起きた。
「くっ!?」
ルイは咄嗟に目の前に幾重にも氷の盾を展開した。しかし、その圧倒的な爆発のエネルギーには耐えきれず、盾ごと後方へと大きく吹き飛ばされる。
「まだ終わりませんよ!」
スペルはそう叫ぶと、爆炎を突き破って再びルイに向かって走り出した。ルイも体勢を立て直してすぐさま立ち上がり、迎え撃つようにスペルの方へと駆ける。
「これならどうですか、【エル・ライトニング】ッ!」
スペルが走りながら左手を前に突き出すと、その手のひらから空気を震わせるほどの巨大な雷撃が放たれた。
「なるほど……これは避けきれませんね」
ルイは即座に回避を諦め、自身の目の前に先程よりも遥かに分厚く強固な氷の壁を展開する。だが、それだけでは足りないと判断し、さらにその後ろに水のクッション、そして土の障壁と、三段構えの絶対防御を展開した。
直後、荒れ狂う雷と氷の壁が正面から激突し、耳を劈くような大音響と共に猛烈な爆風が巻き起こった。
「はぁぁぁぁっ!」
スペルがさらに魔力を注ぎ込むと、雷撃は氷を粉砕し、水を蒸発させ、ついに最後の土壁をも砕き散らした。その余波だけで、周囲の木々がへし折れんばかりに大きく揺れ動く。
「……」
スペルは槍を構え直し、警戒しながらもうもうと立ち込める煙の奥を見つめる。
やがて風が吹き抜け、徐々に煙が晴れてくると――そこには、極寒の冷気で薄氷の結界を纏い、無傷で静かに立っているルイの姿があった。
「……見事です」
スペルは思わず感嘆の声を漏らした。
「実力は変わっていないようですね……いえ、むしろ昔より上がっていますか」
涼しい顔で立つ妹の姿を見て、スペルは確信した。ルイは、自分と全く同等の強さを持っていると。
「兄さんも同じく、腕を上げていますね」
ルイもまた、息一つ乱していないスペルを見て、自身と拮抗する強者であることを改めて確信する。
「こうなると、お互い出し惜しみをしていては決着がつきそうにありませんね」
スペルがそう告げると同時に、詠唱の構えに入った。合わせたかのように、ルイもまた静かに詠唱を始める。
「「汝、我が声に応えよ。闇より生まれ、来たりし大いなる罪よ」」
二人の声が重なり合い、戦場に響き渡る。
「……蔑み尽くす、大罪が一つ、傲慢の罪」
「……欺き尽くす、大罪が一つ、虚飾の罪」
両者の足元から、禍々しくも圧倒的な魔力を孕んだ黒い光が輝き出す。
「――傲れ、ベリアル」
「――飾れ、ルシファー」
詠唱の完了と共に、漆黒の輝きが濁流のように二人を包み込んだ。
「「〈悪魔融合〉」」
二人を包み込んだ黒い輝きが、鼓動のように脈打ちながら徐々に収縮していく。そして、光が完全に弾けて消え去った時――そこには、悪魔の力を身に宿した異形の兄弟が向かい合って立っていた。
スペルの額からは二本の禍々しい角が生え、背中には光を吸い込むような漆黒の翼が顕現している。見開かれた両目は血のように赤く染まり、その肉体には呪印のような赤い模様が浮かび上がっていた。
対するルイの額にも同様に二本の角が生えているが、彼の髪色は神秘的な白金色へと変化し、背中には神々しさすら感じさせる六枚の純白の翼が生え揃っていた。瞳は金色と赤色のオッドアイへと変貌し、白く透き通るような肌にはスペルと同じく赤い模様が浮かんでいる。
「……さあ、始めましょう」
スペルが静かな、しかし確かな闘志を込めて言い放つと、ルイも力強くそれに答えた。
「えぇ、参ります!」
ルイが神速の踏み込みで突っ込んでいくと、スペルもまた大地を砕いて同じように突っ込んできた。
白と黒、相反する姿へと変貌した二人の悪魔が、再び激しくぶつかり合う。
