――ガァァンッ!!
炎を纏った俺のレーヴァテインと、水を纏った雨宮の剣が真正面から激突する。
「くッ……!」
押し負けたのは俺の方だった。剣を伝って両腕の骨が軋むほどの衝撃が走り、身体を弾き飛ばされる。アスファルトに靴底を擦りつけ、火花を散らしながらどうにか距離を取る。
「逃がすかよ!」
雨宮は休む間もなく、蒸気を切り裂いて飛び出してきた。水の軌跡を残しながら、猛スピードで間合いを詰めてくる。
「炎剣弐ノ型――【火燕】!」
俺は体勢を立て直しながら、迫る雨宮へ向けて炎の斬撃を飛ばした。
「【水狐】!」
「な!?」
雨宮は俺の火燕を避けることなく、同じように水圧の斬撃を飛ばして空中で相殺させた。そして、爆風を突き抜けた勢いそのままに、重い剣を振り抜いてきた。
「くそッ!」
ギリギリのところでレーヴァテインで防いだが、ダンプカーに撥ねられたかのような重撃に奥歯を噛みしめる。口の中に鉄の味が広がった。
「……あれぐらいの火力じゃあ、今の俺には効かねぇぞ?」
「……言ってくれるぜ」
強がりを口にしたが、内心は焦りで冷や汗が止まらなかった。
マズい。優斗さんから貰った指輪に溜まっていた魔力が、属性付加の維持で急速に底を突き始めている。炎の衣が、さっきから息切れするように明滅していた。このままじゃ、俺の魔力が先に切れて押し切られる。
(速くて重いッ。なんとかして強引に隙を作らねぇと……!)
俺が次の一手を必死に思考した、その時だった。
「……ん?」
突然、雨宮の剣戟がピタリと止まった。彼が視線を大きく右の方角――少し離れたビル群の向こう側へと向けたのだ。
(なんだ? 何かの罠か?)
「……どうやら、向こうは決着がついたみたいだな」
「向こう? 決着って、まさか……」
「ああ」
俺の問いに、雨宮は短く応じる。その声には、どこか冷徹な諦念と、微かな高揚が混じっていた。
「どっちが勝ったんだ」
玲奈は。あいつは、無事なのか。
「……さあな。魔力探知できねぇからな」
「探知もできねぇのに、何が分かるんだよ」
「……お前、鈍いな」
雨宮は呆れたように鼻で笑い、わずかに剣を引いた。
「理屈じゃねぇんだよ。……俺はあのお嬢様たちの傍にずっといた。嫌ってほどその気配を、魔力を肌で覚えてる。……今、それが消えた」
雨宮の言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
魔力探知ができない彼にとって、それは「波長」を読み取るような精密な作業ではない。長年積み重ねた記憶が、空気に馴染んだ知人の不在を告げているのだ。
「……お前も、探ってみろよ。機械的な数値なんかじゃなく、もっと奥のところを。……ずっと近くにいたなら、分かるだろ。西園寺のお嬢様の魔力くらいは」
「……ッ」
雨宮に促され、俺は警戒を解かないまま感覚を研ぎ澄ませた。
生来の魔力が少ない俺に、遠くの魔力を捉えるセンスなんてありはしない。……だが。
――ヒュォォォッ……。
ビルの隙間を吹き抜けてきた風が頬を撫でた瞬間、俺の全身が総毛立った。
単なる温度の低下ではない。そこにあるのは、空気を強制的に沈黙させるような、鋭く、透明な静寂。
魔力そのものは使い果たされ、すでに消えているのかもしれない。だが、玲奈が全てを賭して放った最後の一撃が、この一帯の環境そのものを「玲奈の色」に染め変えてしまったのだ。
「……これか。よく分かんねえけど……あいつな気がする」
瞳の奥に、凛として立つ玲奈の背中が浮かんだ。
氷のように鋭くて、どこまでも澄んだ意志の欠片。
玲奈が、あの水無姉妹に勝った。その確信が、削られかけていた俺の心臓を再び熱く叩き始める。
「やれやれだよ、まったく。流石は西園寺ってとこか……」
雨宮は肩をすくめて小さくため息をつくと、不意に左手を顔へ持っていった。
「……もしかすると、あっちのお嬢様が助けに来るかもしれねぇな。……だったら、こっちも悠長に遊んでる時間はねぇ」
そして、ずっとかけていた銀縁の眼鏡を外し、無造作に足元へ放り捨てる。
――パリンッ。
アスファルトの上で、レンズが砕け散る乾いた音が響いた。
「……おい、いいのかよ。見えねぇんじゃねぇのか?」
「水滴で曇って鬱陶しいんだよ。それに……」
眼鏡を外した雨宮の瞳は、これまでの理知的な雰囲気が嘘のように、ギラギラとした野生の光を放っていた。
「理屈で測れないバカを相手にする時は、こういう邪魔なフィルターは外しておいた方がいいんだよ」
雨宮の纏う水の衣が、一段と激しく波打つ。冷たい殺気が、物理的な重さを持って俺の肌をチクチクと刺してきた。
「……だったら、俺は余計にここで立ち止まるわけにはいかねぇな!」
俺はレーヴァテインを強く握り直し、雨宮に向かって駆け出した。
「「絶対に勝つ!!」」
俺と雨宮の咆哮が重なる。
踏み込みと同時、二つの影が衝突した。
――ガギィンッ! ギガァッ!
けたたましい金属音が連続して響き渡る。眼鏡を捨てた雨宮の剣撃は、先ほどまでの理詰めの軌道とは完全に別物だった。
荒々しく、貪欲で、それでいて直感に任せた異常な反射神経。
「らぁッ!」
雨宮の纏う水の衣が牙を剥くようにうねり、蒼い刃が変幻自在な軌道で俺の急所を抉りにくる。俺はレーヴァテインに纏わせた炎を撒き散らしながら、必死にそれを弾き、受け流し、時に身を捩って躱した。
重い。速い。一撃を受けるたびに、指輪の魔力がゴリゴリと削れ、腕の感覚が麻痺していく。
(だけど、退くかよ……!)
圧倒的な力で押し込まれながらも、俺は強引に足を踏み止まり、雨宮の重厚な剣を力任せに弾き返した。そこに生じた、ほんの一瞬の隙。
「炎剣壱ノ型――【火柱】!」
「単調だぞ!」
雨宮は野生の獣のような反射神経で、俺の渾身の攻撃を紙一重で躱す。
「まだだ! 炎剣弐ノ型――【火燕】!」
「ぐッ……!」
躱された反動を利用した二連撃。炎の刃が雨宮の水の衣を掠め、わずかにバランスを崩させる。
(ここだ、これで終わりだ!)
俺は全身のバネを使い、上段から剣を振り下ろした。
「負けられるかッ……【水狐】!!」
「なッ……!?」
雨宮は体勢を崩した状態から、あり得ない踏み込みで下段から斬り上げてきた。完全に虚を突かれた俺は、その水圧のカウンターをもろに受けてしまう。
「がッ……ぁぁッ!」
激しい衝撃と共に身体が宙に浮き、地面に無様に叩きつけられた。
「はぁ、はぁ……」
「息が荒れてるな。もう限界みたいだな」
雨宮がゆっくりと歩み寄ってくる。
彼の言う通りだった。今の一撃で決めるつもりで魔力を振り絞ったせいで、指輪に込められていた魔力は完全に空っぽになっていた。俺の身体を包んでいた炎の衣が、ふっと音を立てて完全に消え去る。
「……俺の勝ちだな、桐宮」
雨宮が俺にトドメを刺すべく、無慈悲に剣を振り上げる。
(……ふざけんな)
負けらんねぇんだ。みんなの期待を背負って、リーダーやってるんだ。
玲奈も、他のみんなも死に物狂いで頑張ってんのに、俺がここで負けたら、あいつらに会わせる顔がねぇだろうが!
指輪の魔力はもうない。
俺の身体には、生まれつきの「カスみたいな量の魔力」しか残っていない。炎を形作ることも、剣に纏わせることもできない、魔法使いとしては何の役にも立たない魔力。
だが、剣士としてなら――!
俺はその最後の一滴を、全身の筋肉と神経にのみ叩き込む。魔力による身体強化というより、もはや自爆に近い強制ブーストだ。筋肉の繊維がブチブチと千切れる幻聴が聞こえ、身体の中から無理やり力が溢れてくる。
「ハァ……炎剣参ノ型……」
「遅え!!」
雨宮の蒼い刃が、俺の首元へ向かって一直線に振り下ろされる。
その刃が俺を捉える直前。俺は限界まで圧縮した脚力のバネを解放し、前へ跳んだ。
「――【不知火】!!」
シュンッ! と、俺の身体が陽炎のようにブレた。
雨宮の必殺の一撃は俺の残像を切り裂き、その無防備な懐へと滑り込んだ俺のレーヴァテインが、下から跳ね上がるように雨宮を一閃する。
「ッ……!?」
――パキッ。
硬質な音が響き、雨宮の左腕につけられていた腕時計が真っ二つに割れて地に落ちた。
「……俺の、負けか」
雨宮は目を見開いたまま、ゆっくりと仰向けに倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……ッ」
俺は膝に手をつき、肺が破けそうなほど肩で息をする。身体中の筋肉が悲鳴を上げ、立っているのがやっとだった。
「……ハハハッ。……お前の方が辛そうだな、桐宮」
「……確かに、言えてるな」
大の字で空を仰ぐ雨宮の言葉に、俺は顔を歪めながらも笑って返した。
『――A組リーダーの腕時計が破壊された為、勝者はC組です』
どこからか無機質なアナウンスが響き渡る。
それと同時に、俺の足元、そして倒れている雨宮の足元に転移の魔法陣が浮かび上がった。
眩い光に包まれ、一瞬にして目の前の風景が白く染まっていった――。
炎を纏った俺のレーヴァテインと、水を纏った雨宮の剣が真正面から激突する。
「くッ……!」
押し負けたのは俺の方だった。剣を伝って両腕の骨が軋むほどの衝撃が走り、身体を弾き飛ばされる。アスファルトに靴底を擦りつけ、火花を散らしながらどうにか距離を取る。
「逃がすかよ!」
雨宮は休む間もなく、蒸気を切り裂いて飛び出してきた。水の軌跡を残しながら、猛スピードで間合いを詰めてくる。
「炎剣弐ノ型――【火燕】!」
俺は体勢を立て直しながら、迫る雨宮へ向けて炎の斬撃を飛ばした。
「【水狐】!」
「な!?」
雨宮は俺の火燕を避けることなく、同じように水圧の斬撃を飛ばして空中で相殺させた。そして、爆風を突き抜けた勢いそのままに、重い剣を振り抜いてきた。
「くそッ!」
ギリギリのところでレーヴァテインで防いだが、ダンプカーに撥ねられたかのような重撃に奥歯を噛みしめる。口の中に鉄の味が広がった。
「……あれぐらいの火力じゃあ、今の俺には効かねぇぞ?」
「……言ってくれるぜ」
強がりを口にしたが、内心は焦りで冷や汗が止まらなかった。
マズい。優斗さんから貰った指輪に溜まっていた魔力が、属性付加の維持で急速に底を突き始めている。炎の衣が、さっきから息切れするように明滅していた。このままじゃ、俺の魔力が先に切れて押し切られる。
(速くて重いッ。なんとかして強引に隙を作らねぇと……!)
俺が次の一手を必死に思考した、その時だった。
「……ん?」
突然、雨宮の剣戟がピタリと止まった。彼が視線を大きく右の方角――少し離れたビル群の向こう側へと向けたのだ。
(なんだ? 何かの罠か?)
「……どうやら、向こうは決着がついたみたいだな」
「向こう? 決着って、まさか……」
「ああ」
俺の問いに、雨宮は短く応じる。その声には、どこか冷徹な諦念と、微かな高揚が混じっていた。
「どっちが勝ったんだ」
玲奈は。あいつは、無事なのか。
「……さあな。魔力探知できねぇからな」
「探知もできねぇのに、何が分かるんだよ」
「……お前、鈍いな」
雨宮は呆れたように鼻で笑い、わずかに剣を引いた。
「理屈じゃねぇんだよ。……俺はあのお嬢様たちの傍にずっといた。嫌ってほどその気配を、魔力を肌で覚えてる。……今、それが消えた」
雨宮の言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
魔力探知ができない彼にとって、それは「波長」を読み取るような精密な作業ではない。長年積み重ねた記憶が、空気に馴染んだ知人の不在を告げているのだ。
「……お前も、探ってみろよ。機械的な数値なんかじゃなく、もっと奥のところを。……ずっと近くにいたなら、分かるだろ。西園寺のお嬢様の魔力くらいは」
「……ッ」
雨宮に促され、俺は警戒を解かないまま感覚を研ぎ澄ませた。
生来の魔力が少ない俺に、遠くの魔力を捉えるセンスなんてありはしない。……だが。
――ヒュォォォッ……。
ビルの隙間を吹き抜けてきた風が頬を撫でた瞬間、俺の全身が総毛立った。
単なる温度の低下ではない。そこにあるのは、空気を強制的に沈黙させるような、鋭く、透明な静寂。
魔力そのものは使い果たされ、すでに消えているのかもしれない。だが、玲奈が全てを賭して放った最後の一撃が、この一帯の環境そのものを「玲奈の色」に染め変えてしまったのだ。
「……これか。よく分かんねえけど……あいつな気がする」
瞳の奥に、凛として立つ玲奈の背中が浮かんだ。
氷のように鋭くて、どこまでも澄んだ意志の欠片。
玲奈が、あの水無姉妹に勝った。その確信が、削られかけていた俺の心臓を再び熱く叩き始める。
「やれやれだよ、まったく。流石は西園寺ってとこか……」
雨宮は肩をすくめて小さくため息をつくと、不意に左手を顔へ持っていった。
「……もしかすると、あっちのお嬢様が助けに来るかもしれねぇな。……だったら、こっちも悠長に遊んでる時間はねぇ」
そして、ずっとかけていた銀縁の眼鏡を外し、無造作に足元へ放り捨てる。
――パリンッ。
アスファルトの上で、レンズが砕け散る乾いた音が響いた。
「……おい、いいのかよ。見えねぇんじゃねぇのか?」
「水滴で曇って鬱陶しいんだよ。それに……」
眼鏡を外した雨宮の瞳は、これまでの理知的な雰囲気が嘘のように、ギラギラとした野生の光を放っていた。
「理屈で測れないバカを相手にする時は、こういう邪魔なフィルターは外しておいた方がいいんだよ」
雨宮の纏う水の衣が、一段と激しく波打つ。冷たい殺気が、物理的な重さを持って俺の肌をチクチクと刺してきた。
「……だったら、俺は余計にここで立ち止まるわけにはいかねぇな!」
俺はレーヴァテインを強く握り直し、雨宮に向かって駆け出した。
「「絶対に勝つ!!」」
俺と雨宮の咆哮が重なる。
踏み込みと同時、二つの影が衝突した。
――ガギィンッ! ギガァッ!
けたたましい金属音が連続して響き渡る。眼鏡を捨てた雨宮の剣撃は、先ほどまでの理詰めの軌道とは完全に別物だった。
荒々しく、貪欲で、それでいて直感に任せた異常な反射神経。
「らぁッ!」
雨宮の纏う水の衣が牙を剥くようにうねり、蒼い刃が変幻自在な軌道で俺の急所を抉りにくる。俺はレーヴァテインに纏わせた炎を撒き散らしながら、必死にそれを弾き、受け流し、時に身を捩って躱した。
重い。速い。一撃を受けるたびに、指輪の魔力がゴリゴリと削れ、腕の感覚が麻痺していく。
(だけど、退くかよ……!)
圧倒的な力で押し込まれながらも、俺は強引に足を踏み止まり、雨宮の重厚な剣を力任せに弾き返した。そこに生じた、ほんの一瞬の隙。
「炎剣壱ノ型――【火柱】!」
「単調だぞ!」
雨宮は野生の獣のような反射神経で、俺の渾身の攻撃を紙一重で躱す。
「まだだ! 炎剣弐ノ型――【火燕】!」
「ぐッ……!」
躱された反動を利用した二連撃。炎の刃が雨宮の水の衣を掠め、わずかにバランスを崩させる。
(ここだ、これで終わりだ!)
俺は全身のバネを使い、上段から剣を振り下ろした。
「負けられるかッ……【水狐】!!」
「なッ……!?」
雨宮は体勢を崩した状態から、あり得ない踏み込みで下段から斬り上げてきた。完全に虚を突かれた俺は、その水圧のカウンターをもろに受けてしまう。
「がッ……ぁぁッ!」
激しい衝撃と共に身体が宙に浮き、地面に無様に叩きつけられた。
「はぁ、はぁ……」
「息が荒れてるな。もう限界みたいだな」
雨宮がゆっくりと歩み寄ってくる。
彼の言う通りだった。今の一撃で決めるつもりで魔力を振り絞ったせいで、指輪に込められていた魔力は完全に空っぽになっていた。俺の身体を包んでいた炎の衣が、ふっと音を立てて完全に消え去る。
「……俺の勝ちだな、桐宮」
雨宮が俺にトドメを刺すべく、無慈悲に剣を振り上げる。
(……ふざけんな)
負けらんねぇんだ。みんなの期待を背負って、リーダーやってるんだ。
玲奈も、他のみんなも死に物狂いで頑張ってんのに、俺がここで負けたら、あいつらに会わせる顔がねぇだろうが!
指輪の魔力はもうない。
俺の身体には、生まれつきの「カスみたいな量の魔力」しか残っていない。炎を形作ることも、剣に纏わせることもできない、魔法使いとしては何の役にも立たない魔力。
だが、剣士としてなら――!
俺はその最後の一滴を、全身の筋肉と神経にのみ叩き込む。魔力による身体強化というより、もはや自爆に近い強制ブーストだ。筋肉の繊維がブチブチと千切れる幻聴が聞こえ、身体の中から無理やり力が溢れてくる。
「ハァ……炎剣参ノ型……」
「遅え!!」
雨宮の蒼い刃が、俺の首元へ向かって一直線に振り下ろされる。
その刃が俺を捉える直前。俺は限界まで圧縮した脚力のバネを解放し、前へ跳んだ。
「――【不知火】!!」
シュンッ! と、俺の身体が陽炎のようにブレた。
雨宮の必殺の一撃は俺の残像を切り裂き、その無防備な懐へと滑り込んだ俺のレーヴァテインが、下から跳ね上がるように雨宮を一閃する。
「ッ……!?」
――パキッ。
硬質な音が響き、雨宮の左腕につけられていた腕時計が真っ二つに割れて地に落ちた。
「……俺の、負けか」
雨宮は目を見開いたまま、ゆっくりと仰向けに倒れ込んだ。
「はぁ……はぁ……ッ」
俺は膝に手をつき、肺が破けそうなほど肩で息をする。身体中の筋肉が悲鳴を上げ、立っているのがやっとだった。
「……ハハハッ。……お前の方が辛そうだな、桐宮」
「……確かに、言えてるな」
大の字で空を仰ぐ雨宮の言葉に、俺は顔を歪めながらも笑って返した。
『――A組リーダーの腕時計が破壊された為、勝者はC組です』
どこからか無機質なアナウンスが響き渡る。
それと同時に、俺の足元、そして倒れている雨宮の足元に転移の魔法陣が浮かび上がった。
眩い光に包まれ、一瞬にして目の前の風景が白く染まっていった――。
