――ドゴォンッ!!
サラと対峙している女子生徒が、自身の背丈ほどもある大剣を無造作に、思い切り振り下ろした。
刃が叩きつけられたアスファルトは爆発したかのように砕け散り、巨大なクレーターのような窪みを作り出す。
「……危なかった~。あれ、まともに当たったら一発で終わりだよね」
サラは間一髪で後方へ跳躍し、冷や汗を拭う素振りを見せながら軽口を叩いた。
「……避けられた。だけど、まだ」
女子生徒は表情一つ変えず、クレーターから大剣を引き抜くと、間髪入れずにサラへと次なる攻撃を仕掛けた。その細腕のどこにそんな筋力があるのか、巨大な鉄塊が風を切り裂きながら横薙ぎに迫る。
「はやっ!」
サラはすぐさま、自身が手にする巨大な鎌――『三日月』の柄を盾にして、その重い一撃を防いだ。
「……なかなかやる」
「……あなたもね!」
サラは三日月の湾曲した刃を巧みに使い、大剣の軌道を逸らして弾き返した。そして、生まれた一瞬の隙を突き、そのまま反撃に出る。女子生徒の肩口に向かって、鋭利な三日月の刃を滑らせるように振り下ろした。
――ガキンッ!
しかし、女子生徒は大剣の幅広の刀身を素早く持ち上げ、それを受け止める。火花が散り、二つの大型武器が激しく拮抗した。
「……【ウィンド・ランス】」
「……ッ!」
鍔迫り合いの最中、女子生徒はこともなげに大剣から片手を離し、サラの顔面に手のひらを向けた。
至近距離から放たれた不可視の風の槍。武器を両手で押さえ込んでいたサラは予想していなかったタイミングでの魔法攻撃に反応しきれず、直撃を受けて吹き飛ばされた。
「……いたた」
サラは地面を数メートル転がり、脇腹を押さえながら立ち上がった。制服の一部が裂け、肌に赤い筋が走っている。
(まさか、あんな力の要る鍔迫り合いの中で片手を離してくるなんて……。それに、片手であの大剣を支える凄い力)
「……まだ終わらない」
女子生徒は地面を蹴り、体勢を立て直したばかりのサラへ容赦のない追撃を仕掛ける。
「……【土石流】!」
サラは女子生徒が間合いを詰めてくる前に、足元を狙って牽制の魔法を放った。地面が波打ち、鋭い岩の隆起が女子生徒を飲み込もうとする。
「……【エア・ウォール】」
だが、女子生徒は冷静だった。目の前に高密度の風の壁が生まれ、サラの放った土の魔法を正面から粉砕して相殺する。
衝突の衝撃で視界を遮るほどの土煙が立ち込めた。
次の瞬間、その煙を切り裂くようにして女子生徒が飛び出し、無言のままサラに斬りかかる。
サラはそれを三日月で辛くも防ぐが、女子生徒の片手はすでに次の魔法の形を作ろうとしていた。
(まずい、また至近距離で!)
サラは強引に大剣を押し返し、なんとか距離を取って後ろへ大きく下がる。
「……【暴君の風】」
女子生徒が冷たい声で魔法を放つ。極限まで圧縮された暴力的な風の塊が、竜巻のように周囲の瓦礫を巻き込みながらサラへと迫る。
回避は間に合わない。サラは覚悟を決め、それを三日月で真っ向から斬り裂いた。
シュゴォォッ……! と、不自然な音が鳴る。
弾け飛ぶはずの風の魔法は、まるで掃除機に吸い込まれるかのように、三日月の刃の表面へと霧散して消えた。
「……何をしたの?」
「……別に~。ただ、普通に斬っただけだよ!」
サラはとぼけるように笑って見せたが、実際には、彼女の武器『三日月』が持つ特殊な能力――魔法の吸収が発動していたのだ。
「……そう」
女子生徒はわずかに目を細め、不審そうな視線を向けたが、それ以上追及はしなかった。
(……いつかはばれるかも知れないかな。鋭いし、あの子)
「……だったら確かめるだけ」
女子生徒は足を止めず、移動しながら立て続けに魔法の詠唱を行う。
「【暴君の風】、【ウィンド・ランス】、【エア・ショット】」
連続して放たれる三種の風魔法。異なる軌道と速度を持った不可視の刃が、サラを包囲するように襲い掛かる。
サラは巨大な鎌を器用に操り、一つ、二つとそれらを物理的に避けていくが、最後の見えづらい風の弾丸だけは避けきれなかった。
――キンッ!
サラは身をよじり、三日月の刃の面でそれを防ぎ、斬る。再び魔法が不自然に吸い込まれ、消滅した。
「……ふぅ」
サラは小さく安堵の息を吐く。
「……どういうことか分からないけど。その大きな鎌には、魔法が効かないってことね」
女子生徒が確信を持ったように呟いた。
(……あーあ。あの様子、完全にばれちゃったかな?)
「……魔法が効かないなら、物理攻撃で叩き切るだけ」
女子生徒は戦略を完全に切り替えた。魔法の構築を止め、一気にサラへ接近すると、全筋力を乗せて大剣を振り抜いた。
――ガキンッ!
「くッ……重たっ!」
スピードと遠心力の乗った恐るべき一撃。サラは三日月でなんとか防いだものの、大型トラックに衝突されたような衝撃に体勢を大きく崩される。
女子生徒は反動を利用して大剣を素早く翻し、すぐさま追撃する。
「……ッ!」
サラは後ろへ跳んで避けようとするが、崩れた体勢では避けきれず、大剣の切っ先が彼女の脇腹を浅くかすめた。
「いっ……今の、危なかった……」
サラは出血した脇腹を押さえながら、脂汗を滲ませて立ち上がる。
(どうしよ……魔法は無効化できても、純粋な接近戦の技術とパワーは、向こうの方がずっと上みたいだし……)
「……次は、避けさせない」
女子生徒は呼吸一つ乱さず、再び大剣を上段に構えて突進してきた。
「……くッ……」
激しい金属音が連続して鳴り響く。サラは三日月を盾にして防ぐのが精一杯で、徐々に、しかし確実に後方へと押されていく。
「これで終わり……至近距離からの、【鎌鼬】」
(やばっ、三日月で斬るのが間に合わない! こうなったら……!)
鍔迫り合いで動きを封じられた状態での、ゼロ距離からの魔法。
鋭い風の刃が、無防備なサラの身体に直撃した。
ドォン! という鈍い音と共に、そのすさまじい衝撃でサラの身体は中空を舞い、数十メートル後方のビルまで一気に吹き飛ばされる。壁面に激突し、周囲に濃密な土煙が舞い上がった。
「……これでもう、動けないはず。あとはルール通り、腕時計を壊すだけ。いや、さっきの衝撃でもう壊れているかも」
女子生徒は大剣の切っ先を下げ、勝敗を確認するように、ゆっくりと土煙の方へ歩き出した。
「……!?」
だが、数歩進んだところで、女子生徒は思わず目を見開いた。
晴れゆく土煙の中に、サラが両足でしっかりと立っていたからだ。
「……当たったはず……」
「うん、確かに当たったよ」
サラは制服の埃を払い、腹をさすりながら飄々と言った。致命傷を負っている様子は全くない。
「……じゃあ、なんで立っていられるの」
「……属性付加――【地】」
「……」
サラの全身を、薄く茶褐色に輝く硬質な魔力のオーラが包み込んでいた。
「属性付加【地】はね、火や雷みたいに派手な見た目じゃないから分かりにくいけど……防御力がものすごく上がるんだ。あと、身体能力もちょっとだけね」
「……だから、さっきの私の至近距離からの魔法も、致命傷にならなかったってことね」
(効かない訳じゃないんだけどね。普通に打撲みたいに痛いし……。それに魔力消費も激しいから、本当はあまり使いたくなかったんだけど)
サラは内心で愚痴をこぼしながらも、表面上は余裕の笑みを崩さない。
「……だったら、大剣で直接その腕時計を壊せばいい話」
女子生徒は気を取り直し、再び大剣を力強く構えた。
(……やっぱり、そうくるよね)
「……覚悟」
女子生徒は地面を爆発させるように蹴り、一瞬でサラの懐へ飛び込むと、全体重を乗せて大剣を真っ直ぐに振り下ろした。
――キンッ!!
甲高い音が響き渡る。
「……腕時計を直接壊しにくるって分かってるなら、攻撃の軌道は読みやすくなるよ」
サラは、先ほどまで防ぐだけで精一杯だったはずの大剣の一撃を、三日月の柄で完璧に、そして微動だにせず受け止めていた。
「……防いでも無駄。純粋な力なら、私の方が……!?」
女子生徒は驚愕に顔を歪めた。
両手で渾身の力を込めて押し込んでいるにもかかわらず、サラを数ミリたりとも押し切れないのだ。それどころか、サラの足元のアスファルトが、彼女の踏ん張る力に耐えきれずに蜘蛛の巣状に砕けて陥没している。
「さっきも言ったけど、属性付加【地】は防御力だけじゃなくて、身体能力の底上げもできるんだ。……だから、力比べでも負けない!」
サラはニッと、悪戯っぽく笑い飛ばした。
「……こっからが、私の本番だよ!」
サラと対峙している女子生徒が、自身の背丈ほどもある大剣を無造作に、思い切り振り下ろした。
刃が叩きつけられたアスファルトは爆発したかのように砕け散り、巨大なクレーターのような窪みを作り出す。
「……危なかった~。あれ、まともに当たったら一発で終わりだよね」
サラは間一髪で後方へ跳躍し、冷や汗を拭う素振りを見せながら軽口を叩いた。
「……避けられた。だけど、まだ」
女子生徒は表情一つ変えず、クレーターから大剣を引き抜くと、間髪入れずにサラへと次なる攻撃を仕掛けた。その細腕のどこにそんな筋力があるのか、巨大な鉄塊が風を切り裂きながら横薙ぎに迫る。
「はやっ!」
サラはすぐさま、自身が手にする巨大な鎌――『三日月』の柄を盾にして、その重い一撃を防いだ。
「……なかなかやる」
「……あなたもね!」
サラは三日月の湾曲した刃を巧みに使い、大剣の軌道を逸らして弾き返した。そして、生まれた一瞬の隙を突き、そのまま反撃に出る。女子生徒の肩口に向かって、鋭利な三日月の刃を滑らせるように振り下ろした。
――ガキンッ!
しかし、女子生徒は大剣の幅広の刀身を素早く持ち上げ、それを受け止める。火花が散り、二つの大型武器が激しく拮抗した。
「……【ウィンド・ランス】」
「……ッ!」
鍔迫り合いの最中、女子生徒はこともなげに大剣から片手を離し、サラの顔面に手のひらを向けた。
至近距離から放たれた不可視の風の槍。武器を両手で押さえ込んでいたサラは予想していなかったタイミングでの魔法攻撃に反応しきれず、直撃を受けて吹き飛ばされた。
「……いたた」
サラは地面を数メートル転がり、脇腹を押さえながら立ち上がった。制服の一部が裂け、肌に赤い筋が走っている。
(まさか、あんな力の要る鍔迫り合いの中で片手を離してくるなんて……。それに、片手であの大剣を支える凄い力)
「……まだ終わらない」
女子生徒は地面を蹴り、体勢を立て直したばかりのサラへ容赦のない追撃を仕掛ける。
「……【土石流】!」
サラは女子生徒が間合いを詰めてくる前に、足元を狙って牽制の魔法を放った。地面が波打ち、鋭い岩の隆起が女子生徒を飲み込もうとする。
「……【エア・ウォール】」
だが、女子生徒は冷静だった。目の前に高密度の風の壁が生まれ、サラの放った土の魔法を正面から粉砕して相殺する。
衝突の衝撃で視界を遮るほどの土煙が立ち込めた。
次の瞬間、その煙を切り裂くようにして女子生徒が飛び出し、無言のままサラに斬りかかる。
サラはそれを三日月で辛くも防ぐが、女子生徒の片手はすでに次の魔法の形を作ろうとしていた。
(まずい、また至近距離で!)
サラは強引に大剣を押し返し、なんとか距離を取って後ろへ大きく下がる。
「……【暴君の風】」
女子生徒が冷たい声で魔法を放つ。極限まで圧縮された暴力的な風の塊が、竜巻のように周囲の瓦礫を巻き込みながらサラへと迫る。
回避は間に合わない。サラは覚悟を決め、それを三日月で真っ向から斬り裂いた。
シュゴォォッ……! と、不自然な音が鳴る。
弾け飛ぶはずの風の魔法は、まるで掃除機に吸い込まれるかのように、三日月の刃の表面へと霧散して消えた。
「……何をしたの?」
「……別に~。ただ、普通に斬っただけだよ!」
サラはとぼけるように笑って見せたが、実際には、彼女の武器『三日月』が持つ特殊な能力――魔法の吸収が発動していたのだ。
「……そう」
女子生徒はわずかに目を細め、不審そうな視線を向けたが、それ以上追及はしなかった。
(……いつかはばれるかも知れないかな。鋭いし、あの子)
「……だったら確かめるだけ」
女子生徒は足を止めず、移動しながら立て続けに魔法の詠唱を行う。
「【暴君の風】、【ウィンド・ランス】、【エア・ショット】」
連続して放たれる三種の風魔法。異なる軌道と速度を持った不可視の刃が、サラを包囲するように襲い掛かる。
サラは巨大な鎌を器用に操り、一つ、二つとそれらを物理的に避けていくが、最後の見えづらい風の弾丸だけは避けきれなかった。
――キンッ!
サラは身をよじり、三日月の刃の面でそれを防ぎ、斬る。再び魔法が不自然に吸い込まれ、消滅した。
「……ふぅ」
サラは小さく安堵の息を吐く。
「……どういうことか分からないけど。その大きな鎌には、魔法が効かないってことね」
女子生徒が確信を持ったように呟いた。
(……あーあ。あの様子、完全にばれちゃったかな?)
「……魔法が効かないなら、物理攻撃で叩き切るだけ」
女子生徒は戦略を完全に切り替えた。魔法の構築を止め、一気にサラへ接近すると、全筋力を乗せて大剣を振り抜いた。
――ガキンッ!
「くッ……重たっ!」
スピードと遠心力の乗った恐るべき一撃。サラは三日月でなんとか防いだものの、大型トラックに衝突されたような衝撃に体勢を大きく崩される。
女子生徒は反動を利用して大剣を素早く翻し、すぐさま追撃する。
「……ッ!」
サラは後ろへ跳んで避けようとするが、崩れた体勢では避けきれず、大剣の切っ先が彼女の脇腹を浅くかすめた。
「いっ……今の、危なかった……」
サラは出血した脇腹を押さえながら、脂汗を滲ませて立ち上がる。
(どうしよ……魔法は無効化できても、純粋な接近戦の技術とパワーは、向こうの方がずっと上みたいだし……)
「……次は、避けさせない」
女子生徒は呼吸一つ乱さず、再び大剣を上段に構えて突進してきた。
「……くッ……」
激しい金属音が連続して鳴り響く。サラは三日月を盾にして防ぐのが精一杯で、徐々に、しかし確実に後方へと押されていく。
「これで終わり……至近距離からの、【鎌鼬】」
(やばっ、三日月で斬るのが間に合わない! こうなったら……!)
鍔迫り合いで動きを封じられた状態での、ゼロ距離からの魔法。
鋭い風の刃が、無防備なサラの身体に直撃した。
ドォン! という鈍い音と共に、そのすさまじい衝撃でサラの身体は中空を舞い、数十メートル後方のビルまで一気に吹き飛ばされる。壁面に激突し、周囲に濃密な土煙が舞い上がった。
「……これでもう、動けないはず。あとはルール通り、腕時計を壊すだけ。いや、さっきの衝撃でもう壊れているかも」
女子生徒は大剣の切っ先を下げ、勝敗を確認するように、ゆっくりと土煙の方へ歩き出した。
「……!?」
だが、数歩進んだところで、女子生徒は思わず目を見開いた。
晴れゆく土煙の中に、サラが両足でしっかりと立っていたからだ。
「……当たったはず……」
「うん、確かに当たったよ」
サラは制服の埃を払い、腹をさすりながら飄々と言った。致命傷を負っている様子は全くない。
「……じゃあ、なんで立っていられるの」
「……属性付加――【地】」
「……」
サラの全身を、薄く茶褐色に輝く硬質な魔力のオーラが包み込んでいた。
「属性付加【地】はね、火や雷みたいに派手な見た目じゃないから分かりにくいけど……防御力がものすごく上がるんだ。あと、身体能力もちょっとだけね」
「……だから、さっきの私の至近距離からの魔法も、致命傷にならなかったってことね」
(効かない訳じゃないんだけどね。普通に打撲みたいに痛いし……。それに魔力消費も激しいから、本当はあまり使いたくなかったんだけど)
サラは内心で愚痴をこぼしながらも、表面上は余裕の笑みを崩さない。
「……だったら、大剣で直接その腕時計を壊せばいい話」
女子生徒は気を取り直し、再び大剣を力強く構えた。
(……やっぱり、そうくるよね)
「……覚悟」
女子生徒は地面を爆発させるように蹴り、一瞬でサラの懐へ飛び込むと、全体重を乗せて大剣を真っ直ぐに振り下ろした。
――キンッ!!
甲高い音が響き渡る。
「……腕時計を直接壊しにくるって分かってるなら、攻撃の軌道は読みやすくなるよ」
サラは、先ほどまで防ぐだけで精一杯だったはずの大剣の一撃を、三日月の柄で完璧に、そして微動だにせず受け止めていた。
「……防いでも無駄。純粋な力なら、私の方が……!?」
女子生徒は驚愕に顔を歪めた。
両手で渾身の力を込めて押し込んでいるにもかかわらず、サラを数ミリたりとも押し切れないのだ。それどころか、サラの足元のアスファルトが、彼女の踏ん張る力に耐えきれずに蜘蛛の巣状に砕けて陥没している。
「さっきも言ったけど、属性付加【地】は防御力だけじゃなくて、身体能力の底上げもできるんだ。……だから、力比べでも負けない!」
サラはニッと、悪戯っぽく笑い飛ばした。
「……こっからが、私の本番だよ!」
