魔力の少ない魔法使い

「お~!やってるやってる!」
海沿いの広場に辿り着くと、すでにかなりの人出で賑わっていた。潮風に混じって、ソースや屋台特有の香ばしい匂いが漂ってくる。

そして――もう一つ、普段とは違う光景があった。

みんな浴衣姿だった。

玲奈は白地に青い花模様の浴衣で、赤い帯を締めている。
金髪が夜店の灯りを受けて柔らかく光り、いつもより大人びた雰囲気に見えた。セミロングの髪も少しだけまとめられていて、首筋が妙に目に入る。

サラは淡い桃色に桜柄の浴衣。
肩に掛からないピンクのショートカットが帯の上で揺れていて、活発さはそのままなのに、どこか可愛らしさが増していた。

橘は蜜柑色の髪に合わせたような、薄橙の浴衣。
ウェーブがかった髪が肩に落ちて、ふわっとした雰囲気がそのまま形になったようだった。

ティオナは赤い髪を腰まで垂らしたまま、朱色の浴衣を着ていた。
小さな花模様が散っていて、小柄な体格も相まってどこか幼い印象になっている。袖が少し余っているのもあって、余計に子供っぽく見えた。

五十嵐は黒地に紫の花模様が入った浴衣をさらっと着こなしていた。
背が高い分やけに様になっていて、茶髪のベリーショートも相まって妙に男前に見える。帯の位置もきっちり決まっていて、どこか武人のような雰囲気すらあった。
俺は黒髪に濃紺の浴衣、白い帯という無難な格好だ。
紘弥は茶髪に黒の甚平姿で、腕を組んで立っているだけで妙に貫禄がある。
ルイは長い水色の髪を後ろで軽くまとめ、淡い色合いの浴衣を着ていた。中性的な雰囲気が余計に強調されている。
帝は紫のさらりとした髪に白地の浴衣。
立っているだけでどこか気品があり、流石は名家の人間だ。
黒崎は少しだけ長い黒髪に灰色の浴衣。
飾り気はないが妙に様になっていて、無駄のない立ち姿は普段の戦闘時とあまり変わらない。
こうして並ぶと、まるで別世界みたいだった。
普段はジャージや制服しか見ていないせいか、余計に。
「……なんか、みんな雰囲気違うな」
俺も紺色の浴衣を着せられているが、正直慣れなくて落ち着かない。
「……おい隼人、お前はサラと回るんだろ?」
隣を歩く紘弥が、耳元でニヤニヤしながら囁いてきた。今日の紘弥は、ガサツな彼によく似合う黒い甚平姿だ。
「合宿最後だし、みんなで見たいだろ」
俺がそう答えると、紘弥は「そうか……」と少しだけ呆れたような顔をしてから、全員に向き直った。
「よし、そろそろ別れるか。隼人、八時に花火が上がるから、時間になったらここに集合な」
「分かった。サラ、行こうぜ」
「……うんっ」

人混みの中、俺たちは歩き出した。
改めて隣を歩くサラを見ると、心臓の鼓動が一段階早くなるのを感じた。
淡い桃色の浴衣に、肩にかからないピンクのショートヘア。白いうなじが夕闇に浮かび上がっていて、妙に目を引く。
「……隼人君? どうしたの、そんなに見て」
「あ、いや……似合ってるよ。すごく」
「えへへ、ありがと! 隼人君にそう言ってもらえるのが、やっぱり一番嬉しいな」
サラが花が咲いたような笑顔を見せる。慣れない下駄で一歩一歩踏みしめる彼女の姿は、いつにも増して女の子らしく見えた。

「サラ、何か食べたいものあるか?」
「……」
「サラ?」
「ひゃっ!?」
急に声をかけると、彼女は肩を跳ねさせて驚いた。
「驚きすぎだろ。それで、何か食べたいものとかあるか?」
「えーと、じゃあ、たこ焼きがいい!」
「たこ焼きか……お、見つけた」
ちょうど近くにあった屋台へ足を向ける。
「すいませーん、たこ焼き二つください」
「おっ! カップルか! いいねぇ若いのは! よし、サービスで半額にしてやるよ!」
威勢のいい店主のおっちゃんが、勝手に太鼓判を押してくる。
「あ、いや、カップルじゃなくて……」
言いかけたが、安くなるならまあいいかと、俺は言葉を飲み込んだ。

「ありがとうございます。サラ、出来上がるまであそこのベンチで待ってていいぞ」
「うん!」
サラを座らせて数分。
「へい、お待ち! うちのモットーは早い・安い・うまいだからな!」
「ありがとうございます」
「おう、彼女を大事にしろよ!」
背中に飛んできたおっちゃんの声を苦笑いで流し、サラの方へ向かおうとして――俺は足を止めた。
サラの周りに、数人の男が群がっている。
「俺たちと行こうよ、楽しいからさ!」
「……あー、すいません」
ナンパかよ。
俺は迷わず、その輪の中へ割り込んだ。
「隼人君!」
サラの前に立ち塞がり、男たちを真っ直ぐに睨みつける。
「はあ? なんだよお前は」
「……えーと。彼氏なんすけど。俺の彼女に何か用ですか?」
言葉こそ丁寧だが、少しだけ威圧感を込めた。男たちは一瞬だけ俺の目に気圧されたように顔を引きつらせた。
「な、なんだよ……彼氏持ちかよ。チッ、行こうぜ」
逃げるように去っていく男たちの背中を見送ってから、俺は振り返った。
「サラ、大丈夫か?」
「うん! 隼人君のおかげだよ!」
パッと花が咲いたような笑顔。
「あ、ごめん。彼氏なんて言って悪かったな。咄嗟に嘘ついちゃって」
「えっ、ううん、いいよ! 助けてもらったし……その、嬉しかったし」
「え? 最後なんて言ったんだ?」
「な、なんでもないよ!」
顔を赤くして俯くサラ。気を取り直して、俺たちは歩き出した。
「次はどこ行きたい?」
「うーん、隼人君はどこか行きたい店ないの?」
「俺か? 食べ物はたこ焼きがあるし、特にはないけど……ぶらぶらするか」
「うん、そうしよ!」
しばらく歩いていると、ひと際大きな人だかりが見えた。
「行ってみるか」
「……ん? あれは、黒崎君?」
人だかりの中心にいたのは、黒崎だった。
屋台の安っぽい魔力銃を構え、無表情で次々と的を撃ち抜いている。
「あいつ、さっきから全部当ててるぞ……すげぇ」
パンッ!
銃口から小さな魔力の弾が放たれ、見事に景品の的を撃ち抜いた。
この屋台のルールは『一発で倒せば、続けて撃っていい』というものらしい。だが、屋台の銃はわざと魔力軌道がブレるように細工されているのが普通だ。それを黒崎は、完璧な演算能力と風の微調整でねじ伏せているのだろう。
さすがはスナイパーだ。
「あ、また当てたよ」

「……もう景品がなくなりそうじゃねぇか」
店主の顔は真っ青だ。俺はさすがに見かねて声をかけた。
「……おい黒崎、もうその辺にしといた方がいいんじゃないか?」
 
「……桐宮か。なるほど、そういうことか」
黒崎は店主の顔を見て、短く頷いて銃を置いた。
「それにしても黒崎君、そんなに景品もらってどうするの?」
「妹たちにあげようと思ってな。……五人の妹と、四人の弟がいるんだ」
「ええっ!? 大家族じゃん!」
「ああ、正確には血は繋がっていないんだがな」
血が繋がってないか、なにか訳ありみたいだな。
しかし、無口な黒崎が十人兄弟の長男だったとは。
「大変そうだな、一番上だと」
「一番上と言っても2歳年下の妹がいるからな。家事はその妹がやってくれている」
「へぇ~そうなのか」
それでも一番年上だと色々と大変なんだろうな。
「……俺にやれることはこういうことしかなくてな」
やりすぎだけどな。この射的屋もう閉めようとしてるし。
「そう言えば紘弥達と一緒じゃなかったのか?」
「あいつらには先に行ってもらっている……あまり邪魔はしたくないから俺ももう行かしてもらう」
黒崎は景品の詰まった袋を抱え、スタスタと去っていった。
「黒崎君、意外だったな。私も兄弟欲しいなぁ。一人っ子だとつまんないし」
「……いてもこき使われるだけだぞ。俺なんか姉ちゃんに……」
「ふふ、でも退屈しないでしょ?」
「まあ、それは言えてるけどな」
「でも、隼人君たちがいるから楽しいしいいけどね!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「ふぅ~!楽しかった~!」
「そうだな」
確かに楽しかった。だけど財布の中がもう空だよ、うん。ちょっと悲しいな。
「……そろそろ時間だから戻るか」
「……隼人君話があるんだけど」
「どうしたんだ?」

「……わ、わたし、隼人君のこと……」
サラがぎゅっと両手を握りしめ、顔を上げた。その頬は赤く染まり、潤んだ瞳が俺を真っ直ぐに捉えている。彼女の唇が、決定的な言葉を紡ごうとした――その瞬間だった。

――ヒュルルルルルゥゥゥ……ッドォォォン!!!

夜空を切り裂くような轟音が響き渡り、視界が鮮やかな極彩色に染め上げられた。第一弾の大輪の花火が、空いっぱいに弾けたのだ。
「え!? な、なんだって!?」
花火の爆音にかき消され、サラの最後の言葉が全く聞こえなかった。
「…………っ」
サラは、空いた口を塞ぐこともできず、呆然と夜空を見上げている。その横顔に、次々と打ち上がる花火の光が、赤、青、金と色鮮やかに反射していた。
「悪い、サラ! 花火の音で聞こえなかった。今、なんて――」
俺がもう一度聞き返そうと身を乗り出すと、サラは慌てたように首を横に振った。
「ううん! な、なんでもない! なんでもないよ!」
彼女は無理に作ったような笑顔を浮かべ、少しだけ俯いた。その耳たぶが、花火の赤色よりも濃く染まっているのに、俺は気づかない。
「そうか?……あ、ほら! 次は緑だぞ。すげぇな、あれ」
「……うん。そうだね。綺麗……」
サラの返事は、どこか遠かった。
なんだか、聞き返してはいけないような気がした。
花火の光に照らされた彼女の顔が、今までに見たことがないくらい真剣で、それでいて脆そうに見えたからだ。
「そうだ!早くみんなのところに戻らなきゃ。紘弥君たちが怒っちゃうよ!」
サラは俺の手をぎゅっと握り、歩き出した。その手の温かさが、夏の夜の熱気よりも熱く感じられて、俺は一瞬だけ言葉を失う。
「……隼人君?」
「あ、ああ、そうだな。行こう」

集合場所の広場では、すでに仲間たちが集まっていた。

「……ったく、おせぇなあの二人。もう一発目が上がっちまったぞ」
集合場所にいた紘弥が、腕を組んで不満げに鼻を鳴らした。その隣には、長身を紫色の浴衣に包んだ五十嵐がいた。茶髪のベリーショートと相まって、その立ち姿はどこかのモデルのような凛とした気品を放っている。
「まあまあ、いいじゃない。きっと今ごろ二人で……ねえ?」
「なるほど。そりゃあスゴイことになってるだろうな」
二人が勝手な想像で盛り上がっていると、傍観していたルイが海沿いの道へ視線を向けた。
「……噂をすれば、来たみたいですよ」
「悪い、遅くなった!」
俺はサラの手を引いたまま、仲間たちの輪に飛び込んだ。
「そうなのか良かった……って、お前らなんでニヤニヤしてんだ?」
紘弥と五十嵐の視線が、俺の右手に釘付けになっている。
五十嵐は一瞬ぽかんとしたあと、すぐに口元を押さえて笑いを堪え始めた。
「多分、それのせいですよ」
ルイが苦笑いしながら指し示した先を見て、俺は硬直した。
「――あ、あ、あんた達! なんで手を、繋いでるのよ!」
玲奈の声はやけに大きくて、少しだけ震えていた。
その顔は、花火の光を待つまでもなく真っ赤に茹だっている。
「――わ、わりぃ!」
慌てて手を離す。急いできたから無意識に繋いだままだった。
「……い、いいよ」
「ふぅ……っていつまでにやついてんだお前等!」
「いや~まさか手をつないでおいでになられるとはやりますなぁ旦那」
「誰が旦那だ」
「そこまで進展してるなんて思っても見なかったわ!」
「急いできたから仕方ないだろ。なあサラ」
「そ、そうだよ!凛ちゃん!」
何勘違いしてんだこの二人は。サラは顔を赤くし一生懸命2人に説明していた。
「楽しめましたか?」
ルイが俺に近付きそう言ってきた。橘も一緒に来た。
「楽しかったよ」
サラみたいな子と周れたんだ男子なら喜ぶもんだ。
「あー、でも……金がな……」
俺は財布を見ながらため息をついた。
「ふふっ、サラちゃんよく食べるもんね。でもあれであんなに細いから羨ましいな~」
「いや、橘も十分痩せてると思うけど」
「え?そう?ありがと」
橘は笑顔で言ってきた。玲奈のやつもこういう笑顔が大事だってのに。
俺はチラッと玲奈の方を見た。
一瞬だけ。
俺と目が合った気がした。
その瞬間、玲奈は露骨に顔を逸らした。
「……なあ、橘なんで玲奈あんなに不機嫌なんだ?」
「え?玲奈ちゃん?いつもと変わらないと思うんだけど機嫌悪いの?」
「ああ、あれは不機嫌だぞ」
「流石は幼なじみですね」
「……うん、私もわからないよ。小さい時から一緒だとそういうのもわかっちゃうんだね」
橘とルイはそう言い感心していた。そういうもんなのか。
さて、話しかけるか?いや、やめといた方が良さそうだな嫌な予感がする。
「君たちは花火は見ないのかい?」
声がした方を見ると帝がこちらを向いていた。
「あ、忘れてた……サンキュー帝」
「礼はいらないさ」
帝はそう言うと花火の方へ顔を戻した。
「しかしあいつ花火好きなのか?意外だな」
「意外と言ったらあれ見てみろよ」
サラ達と会話を終えた紘弥が俺の肩に腕を置き言ってきた。
「あれ……ティオナか?」

 そこには、くまのお面をつけたティオナがいた。
だが、その格好は異様だった。腰には無骨な木刀を差し、脇にはなぜか大きなカエルのぬいぐるみを抱えている。
……完全に意味が分からない。
「……ティオナ、それ何だ?」
俺が近付いて聞くと、ティオナはくまのお面の奥からこちらを見た。
「……護身用」
短くそう答えて、腰の木刀を軽く叩く。
「いや祭りだぞ!?」
「……人は多い」
それだけ言って、ティオナはまた花火の方へ視線を戻した。
「……だそうだ」
紘弥が肩をすくめる。
そもそもティオナの武器は大杖のはずだ。なのに、木刀で護身できるのか?
「……まあ、木刀は置いとくとして、女の子なんだしぬいぐるみは普通なんじゃねぇの」
あの玲奈だって部屋にくまやウサギのぬいぐるみとかあるってのに。最近入ってないけど、きっとまだあるはずだ。
「確かに、それもそうか……西園寺とかでも持ってんのかな。いやでもそれはちょっとな」
とブツブツ言ってる。正解だ。
と、また忘れるとこだった。せっかく集合したんだ、最後くらいみんなで花火を見ないとな。
集合してからも、夜空には絶え間なく光の花が咲き乱れていた。
さっきまでは、まだ序の口だったらしい。
ヒュルルル……という甲高い音が響き、さらに数発の光の筋が夜空の頂点を目指して駆け上がっていく。
一瞬の静寂の後、ドンッ! と腹の底を揺らすような重低音が重なり合い、夜空を埋め尽くすほどの巨大な光が弾けた。
赤、青、緑。鮮やかな極彩色が、一瞬にして夜の闇を塗り替える。
「……すげぇな。何度見ても、どういう原理なんだろうな、あれ」
隣の絋弥が夜空に広がる光の粒子を見つめながら呟いた。
魔法使いの常識からすれば、空に光を出すなら「光属性の魔力」を放出すればいい。しかし、花火には魔法は使われていないらしい。
「確か……火薬が使われているんだっけか?」
「魔法で再現しようと思ったら、あんなに綺麗な円形に保つの、相当な制御力がいるわよね……」
玲奈も、術式構成の難しさを知っているからこそ、物理法則だけで組み上げられたその美しさに息を呑んでいる。
ドォォォン……!
遅れて届く物理的な衝撃波。
それは、俺たちが普段使い慣れている魔法の光よりも、どこか無骨で、生々しい熱を帯びているように感じた。
「……なんか、すっごく綺麗だね、隼人君」
隣で空を見上げるサラの瞳に、赤や金の光が反射してキラキラと輝いている。
「ああ。本当だな」
そして、祭りの終わりを告げる最大の連発が始まった。
夜空の頂点で、いくつもの光の尾が重なり合い、巨大な黄金の柳となって降り注ぐ。
賑やかだった広場が、一瞬で静まり返った。
玲奈も、サラも、不敵に笑っていた紘弥も、今はただの少年少女の顔に戻って、魔法とは違うアプローチで夜空を支配するその光を目に焼き付けている。


 

「いや~、綺麗な花火だったな!」
「見れて良かったね!」
祭りの終わりを告げる静寂が訪れる。
「この合宿でかなり強くなれたからな。魔闘祭は優勝だぜ!」
「……うんうん! 優勝しないとね!」
「そうだな。残りの休みもできる限りのことをして、もっと強くならねぇとな」
紘弥の言葉に、俺は力強く頷いた。
地獄のような二週間だったが、悪くはなかった。
次に俺たちが集まる時は、本当の戦いの舞台『魔闘祭』が待っている。
それまでにやれることを、やるだけだ。

――その時。
祭りの喧騒の隙間を縫うように、ふわり、と冷たい夜風が首筋を撫でた。
夏の熱気も、火薬の匂いも、一瞬だけ遠のいたような気がした。
「……あんた、何ぼーっとしてんのよ。置いていくわよ」
不意に横から声をかけられ、意識が現実に戻る。
隣には、玲奈が立っていた。夜店の灯りを受けてどこか幻想的な雰囲気を纏いながらも、その瞳は相変わらず鋭く俺を射抜いている。
「……いや、なんでもない。ちょっと風が冷たくなったかなって」
「はあ? 何言ってんのよ。……風邪でも引いたんじゃないでしょうね。あんたの介抱なんて真っ平なんだから」
玲奈は呆れたように鼻を鳴らすと、さっさと歩き出した。だが、その歩調は俺が追いつきやすいように、ほんの少しだけ緩められている。
夜空には、最後の花火の残光がまだ薄く残っていた。
誰かが漏らした歓声も、賑やかな囃子の音も、やがては闇に吸い込まれて消えていく。
本番の魔闘祭が、ただの大会では終わらないこと。
そこで俺を待ち受けている運命が、どれほど過酷なものか。
――この時の俺は、まだ何も知らずに、ただ遠ざかる熱気の余韻の中にいた。