凄まじい爆発の衝撃に俺は後方へと弾き飛んだ。
視界を埋め尽くす猛烈な砂煙の向こう側。空中で死に物狂いで身を翻した俺は、地面スレスレのところで両足着地の姿勢をとって勢いを殺す。
足裏がグラウンドの土を深く削り取り、数メートル後ろに滑りながらも、何とか踏みとどまった。
「くっ……!」
舌打ちと共に荒い呼吸を整える間もなく、視界を覆う土煙を真っ二つに切り裂くようにして一筋の黒い影が迫る。
イーラだ。手負いの様子など微塵も見せず、漆黒の翼を力強く羽ばたかせた彼が、真上から容赦なく切り下ろしてきた。
「甘いッ!」
思考するより早く、俺は両手の双剣を十字に交差させて頭上からの絶望的な威力の軌道を迎え撃った。
ガギィィンッ!!
頭上で激突した刃と刃が、宵闇を切り裂くような火花の雨を盛大に散らす。
ズシン、と足元からグラウンドの土が沈み込み、全身の骨が悲鳴を上げて軋んだ。だが、アースから流れ込む膨大な魔力が瞬時に肉体を補強し、押し返そうとする熱い力を身体の底から生み出していく。
一歩も引くまいと足に力を込めて踏ん張る俺の眼前で、イーラの冷徹な瞳が暗い光をたたえていた。
「まだ死なないか。だが、その底知れぬ力もいつまでもつかな!」
「あいにく、こっちはまだギアを上げ足りねえんだよ!」
歯を鳴らしながら、俺は全身の筋肉を爆発させて強引に押し返す。
体内を駆け巡る熱量を限界まで引き上げ、双剣の刀身から噴き出した灼熱の炎で相手の黒剣を力任せに弾き飛ばした。
「なに……!?」
わずかに体勢を崩したイーラの懐へ、俺は一気に踏み込む。
右からの薙ぎ払い、左からの刺突、そして身体を捻らせた旋風のような叩き込み。炎の尾を引いて迫る渾身の連撃を、イーラは漆黒の翼を盾にし、あるいは黒剣を縦横に滑らせてギリギリで防ぎ切る。
激しい金属音がグラウンド全体に反響し、飛び散る激しい火花が二人の影を夕闇の中に赤々と浮かび上がらせた。
「小賢しい……!」
イーラが苛立ちと共に黒剣から強烈な紫電を解き放つ。至近距離からの雷撃による衝撃波が俺の体を襲った。双剣を交差させて直撃こそ防いだものの、その凄まじい圧力によって俺の身体は大きく後方へと押し戻された。
互いの息が荒く乱れ、燃える焦げ臭い匂いが鼻を突く。
だが、その緊張感に満ちた膠着状態は長く続かなかった。
突如として、俺たちの背後の闇を切り裂くように鋭い風切り音が響く。
「――そこまでだ」
低く、有無を言わせぬ冷徹な声。
パッ、と軽い足音がして、俺のすぐ背後へと一人の男が舞い降りた。
少し跳ねた藍色の髪は整えられた様子もなく、緩んだネクタイと着崩されたスーツ姿。だが、普段の眠たげだった目は鋭く見開かれ、ただならぬ真剣な光を宿している。いつもの気だるげな空気は微塵もない。
教師――烏廻辰巳。
「烏廻さん……!」
俺が息を呑むと、烏廻さんは愛用の白と黒の双剣を静かに構え、俺の横をすり抜けるようにしてイーラの正面へと歩み出た。
白と黒の刀身が夕闇の中で不気味なほどの冴えを見せる。その瞬間、イーラの表情から先程までの冷酷な余裕が完全に剥がれ落ちた。
「チッ……!」
明らかな焦燥を含んだ舌打ち。イーラは迎撃すら諦め、咄嗟に翼を激しく羽ばたかせて大きく後方へと跳躍し、俺たちから十数メートル以上離れた位置まで距離を取った。その油断なき瞳は、烏廻辰巳という存在を『確実な死の脅威』として明確に警戒している。
「……厄介なのが加わってしまったな」
「随分と生徒相手に手こずっているようだな」
烏廻さんはイーラの警戒に応じるように冷ややかに吐き捨てると、面倒くさそうに首をコキリと鳴らした。そして前方に向けた鋭い視線を外さないまま、背後に立つ俺へと横目を向けた。
「おい、桐宮。もう十分だ。あとは俺に代われ」
「……っ!」
烏廻さんのその言葉に、俺は反射的に双剣を握る手に一層強く力を込めた。
確かに、ここまでの激闘で体力の消耗は限界に近い。アースの魔力に頼っているとはいえ、全身の筋肉と関節は叫び声を上げている。加勢に入った先生に任せれば、勝利が確実なのは明白だった。
だが――。
「……すみません、烏廻さん。手出しは……しないでください」
「……なに?」
烏廻さんが意外そうに眉をひそめる。俺はイーラから目を逸らさずに、自分の胸の底から湧き上がる言葉を続けた。
「あいつは……玲奈や紘弥、サラと戦った時、殺しようと思えばいつでも殺せたはずなんです。実力差は歴然だった。だけど、誰も命までは奪われていない。あいつは無駄な殺戮を望んじゃいないんだ……アースの力を持つ俺『ひとり』の犠牲だけで終わらせようとしている。根は、悪人になりきれてない」
俺は力強く双剣を握り直し、一歩、重く踏み出す。
「だからこそ……俺とあいつの一騎打ちで決着をつけなきゃいけないんです。あいつがあいつなりの覚悟を持って俺一人を狙ってくるなら、俺も一人で受け止めなきゃ筋が通らない!」
静寂の中、重苦しい緊張感が漂う。
烏廻さんはしばらく俺の背中を無言で見つめていたが、やがて短く溜め息をつくと、構えていた白と黒の双剣をすっと収めた。
「……甘い考えだな」
突き放すような冷ややかな響きに、一瞬だけ否定されたかと肩が強張る。だが、一拍置いてから続いた声には、どこか微かな笑みが滲んでいた。
「だが……嫌いじゃない。お前のその覚悟を邪魔するほど、俺も無粋な大人じゃないんでな。……とはいえ、俺がやばいと思ったら問答無用で割って入るからな」
「はいっ……!」
烏廻さんが数歩引き下がったのを見て、イーラの瞳に一層重く、どろどろとした感情が渦巻いた。
「……下らんな。覚悟だの、筋だの……小賢しい真似を」
イーラが低く唸るように吐き捨て、軽く黒剣を払う。それだけで生み出された恐ろしい風圧が空気を鋭く引き裂き、俺の頬を撫でて後方の地面を爆破した。
手にした漆黒の剣から、チリチリと不吉な紫電が漏れ出す。だがそれは先程までの破壊的な魔力とは異なり、もっと根源的な……深い絶望と怒りが混ざり合った異質なものだった。
「法だの、正義だの……そんな言葉でどれほど飾ろうと、圧倒的な理不尽の前では、人間が作り上げたルールなど何の役にも立たない」
「イーラ……?」
「救えやしないのだ。綺麗事ばかりの社会など……理不尽な悪意の前では、あまりにも脆弱で無力だ」
イーラが強く剣の柄を握りしめた瞬間、周囲の温度が急激に氷点下まで下がったかのような錯覚に陥る。彼の背後にある漆黒の翼から、どす黒い羽がパラパラと抜け落ちては虚空に溶けて消えていった。
「二十年前……」
ポツリと、イーラが口を開いた。
その声には、もはや戦士としての威圧感はなかった。ただ、果てしなく暗い底から響いてくるような、血を吐くような悲痛な響きがあった。
「私にも、護るべき家族がいた。愛する妻と、まだ幼かった娘がな。……だがある日、二人とも命を奪われた。権力者の身勝手な道楽……そのバカ息子が引き起こした事故によってな」
イーラの瞳に、今も消えぬ不条理な殺意と惨劇の光景が暗く揺らめく。
「……権力の圧力を前に、警察も法も機能しなかった。真実は揉み消され、二人の命を奪った加害者は『無罪』として片付けられたんだ。罪すら問われず、ヘラヘラと笑いながら日常へと戻っていったあいつらの姿を、私は絶対に忘れない。……法も正義も、弱者を守るためのものではなかった。ただ権力者が自分たちを護るための都合のいい盾に過ぎなかったのだ!」
イーラは絶叫するように絞り出し、凄まじい力で剣を握りしめた。
「だから私はこの狂った世界の仕組みを、根底から力で塗り替えるために圧倒的な力が必要なんだ! だが、無意味な殺戮を重ねるつもりはない。世界の理を変えるのに必要なのは、君の体内にある膨大な魔力……桐宮隼人、お前一人で十分なのだ!」
漆黒の魔力がイーラを中心に巨大な渦を巻き、夕闇のグラウンド全体を飲み込んでいく。
二十年前の理不尽な絶望と怒りを背負い、人間を捨てた男の覚悟が、大気そのものを押し潰すほどの重圧となって俺にのしかかる。
だが、俺は一歩も引かなかった。両手の双剣に全身の魔力を注ぎ込み、夕闇を赤々と照らし出すほどの紅蓮の炎を爆発的に燃え上がらせた。
「俺は逃げない……あんたの絶望も、その覚悟も、正面から全部叩き潰す!」
互いの極限の魔力がグラウンドの中央で激しく衝突し、大気が軋み、空間そのものが悲鳴を上げる。
その渦巻く狂乱の中心で、イーラは二十年間蓄積された膨大な怒りと絶望を全身に纏い、漆黒の剣を天へと高く掲げた。
世界そのものを呪い、拒絶するような声が、漆黒に染まった宵闇の空に轟き渡る。
「――【大罪魔法:憤怒ノ魔王】!」
視界を埋め尽くす猛烈な砂煙の向こう側。空中で死に物狂いで身を翻した俺は、地面スレスレのところで両足着地の姿勢をとって勢いを殺す。
足裏がグラウンドの土を深く削り取り、数メートル後ろに滑りながらも、何とか踏みとどまった。
「くっ……!」
舌打ちと共に荒い呼吸を整える間もなく、視界を覆う土煙を真っ二つに切り裂くようにして一筋の黒い影が迫る。
イーラだ。手負いの様子など微塵も見せず、漆黒の翼を力強く羽ばたかせた彼が、真上から容赦なく切り下ろしてきた。
「甘いッ!」
思考するより早く、俺は両手の双剣を十字に交差させて頭上からの絶望的な威力の軌道を迎え撃った。
ガギィィンッ!!
頭上で激突した刃と刃が、宵闇を切り裂くような火花の雨を盛大に散らす。
ズシン、と足元からグラウンドの土が沈み込み、全身の骨が悲鳴を上げて軋んだ。だが、アースから流れ込む膨大な魔力が瞬時に肉体を補強し、押し返そうとする熱い力を身体の底から生み出していく。
一歩も引くまいと足に力を込めて踏ん張る俺の眼前で、イーラの冷徹な瞳が暗い光をたたえていた。
「まだ死なないか。だが、その底知れぬ力もいつまでもつかな!」
「あいにく、こっちはまだギアを上げ足りねえんだよ!」
歯を鳴らしながら、俺は全身の筋肉を爆発させて強引に押し返す。
体内を駆け巡る熱量を限界まで引き上げ、双剣の刀身から噴き出した灼熱の炎で相手の黒剣を力任せに弾き飛ばした。
「なに……!?」
わずかに体勢を崩したイーラの懐へ、俺は一気に踏み込む。
右からの薙ぎ払い、左からの刺突、そして身体を捻らせた旋風のような叩き込み。炎の尾を引いて迫る渾身の連撃を、イーラは漆黒の翼を盾にし、あるいは黒剣を縦横に滑らせてギリギリで防ぎ切る。
激しい金属音がグラウンド全体に反響し、飛び散る激しい火花が二人の影を夕闇の中に赤々と浮かび上がらせた。
「小賢しい……!」
イーラが苛立ちと共に黒剣から強烈な紫電を解き放つ。至近距離からの雷撃による衝撃波が俺の体を襲った。双剣を交差させて直撃こそ防いだものの、その凄まじい圧力によって俺の身体は大きく後方へと押し戻された。
互いの息が荒く乱れ、燃える焦げ臭い匂いが鼻を突く。
だが、その緊張感に満ちた膠着状態は長く続かなかった。
突如として、俺たちの背後の闇を切り裂くように鋭い風切り音が響く。
「――そこまでだ」
低く、有無を言わせぬ冷徹な声。
パッ、と軽い足音がして、俺のすぐ背後へと一人の男が舞い降りた。
少し跳ねた藍色の髪は整えられた様子もなく、緩んだネクタイと着崩されたスーツ姿。だが、普段の眠たげだった目は鋭く見開かれ、ただならぬ真剣な光を宿している。いつもの気だるげな空気は微塵もない。
教師――烏廻辰巳。
「烏廻さん……!」
俺が息を呑むと、烏廻さんは愛用の白と黒の双剣を静かに構え、俺の横をすり抜けるようにしてイーラの正面へと歩み出た。
白と黒の刀身が夕闇の中で不気味なほどの冴えを見せる。その瞬間、イーラの表情から先程までの冷酷な余裕が完全に剥がれ落ちた。
「チッ……!」
明らかな焦燥を含んだ舌打ち。イーラは迎撃すら諦め、咄嗟に翼を激しく羽ばたかせて大きく後方へと跳躍し、俺たちから十数メートル以上離れた位置まで距離を取った。その油断なき瞳は、烏廻辰巳という存在を『確実な死の脅威』として明確に警戒している。
「……厄介なのが加わってしまったな」
「随分と生徒相手に手こずっているようだな」
烏廻さんはイーラの警戒に応じるように冷ややかに吐き捨てると、面倒くさそうに首をコキリと鳴らした。そして前方に向けた鋭い視線を外さないまま、背後に立つ俺へと横目を向けた。
「おい、桐宮。もう十分だ。あとは俺に代われ」
「……っ!」
烏廻さんのその言葉に、俺は反射的に双剣を握る手に一層強く力を込めた。
確かに、ここまでの激闘で体力の消耗は限界に近い。アースの魔力に頼っているとはいえ、全身の筋肉と関節は叫び声を上げている。加勢に入った先生に任せれば、勝利が確実なのは明白だった。
だが――。
「……すみません、烏廻さん。手出しは……しないでください」
「……なに?」
烏廻さんが意外そうに眉をひそめる。俺はイーラから目を逸らさずに、自分の胸の底から湧き上がる言葉を続けた。
「あいつは……玲奈や紘弥、サラと戦った時、殺しようと思えばいつでも殺せたはずなんです。実力差は歴然だった。だけど、誰も命までは奪われていない。あいつは無駄な殺戮を望んじゃいないんだ……アースの力を持つ俺『ひとり』の犠牲だけで終わらせようとしている。根は、悪人になりきれてない」
俺は力強く双剣を握り直し、一歩、重く踏み出す。
「だからこそ……俺とあいつの一騎打ちで決着をつけなきゃいけないんです。あいつがあいつなりの覚悟を持って俺一人を狙ってくるなら、俺も一人で受け止めなきゃ筋が通らない!」
静寂の中、重苦しい緊張感が漂う。
烏廻さんはしばらく俺の背中を無言で見つめていたが、やがて短く溜め息をつくと、構えていた白と黒の双剣をすっと収めた。
「……甘い考えだな」
突き放すような冷ややかな響きに、一瞬だけ否定されたかと肩が強張る。だが、一拍置いてから続いた声には、どこか微かな笑みが滲んでいた。
「だが……嫌いじゃない。お前のその覚悟を邪魔するほど、俺も無粋な大人じゃないんでな。……とはいえ、俺がやばいと思ったら問答無用で割って入るからな」
「はいっ……!」
烏廻さんが数歩引き下がったのを見て、イーラの瞳に一層重く、どろどろとした感情が渦巻いた。
「……下らんな。覚悟だの、筋だの……小賢しい真似を」
イーラが低く唸るように吐き捨て、軽く黒剣を払う。それだけで生み出された恐ろしい風圧が空気を鋭く引き裂き、俺の頬を撫でて後方の地面を爆破した。
手にした漆黒の剣から、チリチリと不吉な紫電が漏れ出す。だがそれは先程までの破壊的な魔力とは異なり、もっと根源的な……深い絶望と怒りが混ざり合った異質なものだった。
「法だの、正義だの……そんな言葉でどれほど飾ろうと、圧倒的な理不尽の前では、人間が作り上げたルールなど何の役にも立たない」
「イーラ……?」
「救えやしないのだ。綺麗事ばかりの社会など……理不尽な悪意の前では、あまりにも脆弱で無力だ」
イーラが強く剣の柄を握りしめた瞬間、周囲の温度が急激に氷点下まで下がったかのような錯覚に陥る。彼の背後にある漆黒の翼から、どす黒い羽がパラパラと抜け落ちては虚空に溶けて消えていった。
「二十年前……」
ポツリと、イーラが口を開いた。
その声には、もはや戦士としての威圧感はなかった。ただ、果てしなく暗い底から響いてくるような、血を吐くような悲痛な響きがあった。
「私にも、護るべき家族がいた。愛する妻と、まだ幼かった娘がな。……だがある日、二人とも命を奪われた。権力者の身勝手な道楽……そのバカ息子が引き起こした事故によってな」
イーラの瞳に、今も消えぬ不条理な殺意と惨劇の光景が暗く揺らめく。
「……権力の圧力を前に、警察も法も機能しなかった。真実は揉み消され、二人の命を奪った加害者は『無罪』として片付けられたんだ。罪すら問われず、ヘラヘラと笑いながら日常へと戻っていったあいつらの姿を、私は絶対に忘れない。……法も正義も、弱者を守るためのものではなかった。ただ権力者が自分たちを護るための都合のいい盾に過ぎなかったのだ!」
イーラは絶叫するように絞り出し、凄まじい力で剣を握りしめた。
「だから私はこの狂った世界の仕組みを、根底から力で塗り替えるために圧倒的な力が必要なんだ! だが、無意味な殺戮を重ねるつもりはない。世界の理を変えるのに必要なのは、君の体内にある膨大な魔力……桐宮隼人、お前一人で十分なのだ!」
漆黒の魔力がイーラを中心に巨大な渦を巻き、夕闇のグラウンド全体を飲み込んでいく。
二十年前の理不尽な絶望と怒りを背負い、人間を捨てた男の覚悟が、大気そのものを押し潰すほどの重圧となって俺にのしかかる。
だが、俺は一歩も引かなかった。両手の双剣に全身の魔力を注ぎ込み、夕闇を赤々と照らし出すほどの紅蓮の炎を爆発的に燃え上がらせた。
「俺は逃げない……あんたの絶望も、その覚悟も、正面から全部叩き潰す!」
互いの極限の魔力がグラウンドの中央で激しく衝突し、大気が軋み、空間そのものが悲鳴を上げる。
その渦巻く狂乱の中心で、イーラは二十年間蓄積された膨大な怒りと絶望を全身に纏い、漆黒の剣を天へと高く掲げた。
世界そのものを呪い、拒絶するような声が、漆黒に染まった宵闇の空に轟き渡る。
「――【大罪魔法:憤怒ノ魔王】!」
