グラウンドではインヴィが地面に倒れていた。身体中に傷を負い、血を流している。
対する烏廻は傷一つ負っていない。
インヴィは立ち上がりながら荒くなった呼吸を整える。一方、烏廻は剣を下ろした状態で立っており、二人の実力差は歴然であった。
「そろそろ終わりにするか」
烏廻がそう告げ、接近しようとする。
インヴィはすぐに体勢を立て直すと、烏廻の接近を阻止するように腕を振るう。
烏廻はそれをかわすとそのまま肉薄し、剣を振り抜く。
インヴィは慌てて後ろに飛ぶことで直撃を免れるが、肩をかすめ、傷口から鮮血が流れる。それを見た烏廻は、無造作に剣を一振りして血を払った。
そして、再びインヴィに近づく。インヴィは距離を取ろうとするが、烏廻の方が速くすぐに追いつかれる。
烏廻の剣が襲いかかる。インヴィはそれをギリギリで避けるが、バランスを崩してしまう。
そこへ烏廻の蹴りが襲う。間一髪で防ぐものの威力を殺し切れず、吹き飛ばされた。
烏廻は追撃しようとするが、インヴィが立ち上がる方が早かった。
「ハァハァ……クソが! 調子に乗りやがって……」
インヴィはボロボロになりながらも、まだ戦意を失っていない。
「お前じゃ俺には勝てないって分かったろ?」
「うるさい!」
インヴィはそう叫ぶと姿を消した。
「……まだ諦めないか」
烏廻は呟き、周囲に神経を張り巡らせる。インヴィは視界から消えると同時に死角から現れ、首を狙って鋭い鉤爪を繰り出した。
しかし烏廻にあっさりと交わされ、カウンターを食らう。インヴィは慌ててその場から離れた。
「――ッ、だったらこれならどうだ! 我、万雷を欲す。神の怒りにより降り注ぐ稲妻よ、雷轟となりて我が敵を穿つ矛と化して顕現せよ【雷神の怒号】!」
詠唱を終えると、インヴィの頭上に巨大な魔法陣が現れ、そこから無数の落雷が烏廻を襲う。
しかし、烏廻は避けようともせず、ただその場に立ち尽くしていた。インヴィはニヤリと笑う。いくら烏廻でも、この一撃を喰らえば無事では済まないはずだ。
落雷が烏廻を直撃する。インヴィは勝利を確信して笑みを浮かべるが、次の瞬間、その顔は驚愕に染まることになる。
そこにいたのは、無傷の烏廻だった。インヴィは自分の目を疑う。
「なんで……」
「簡単だ。斬ればいい」
烏廻はインヴィの頭上にある魔法陣に剣先を向ける。
「ふざけるなッ!」
インヴィは烏廻に向けて更に雷撃を落とす。
「四神流・玄武ノ型――【羅生門】」
烏廻が右手の剣を左から右へ、左手の剣を上から下へと振るうと、インヴィの放った全ての雷が霧散した。
あまりの出来事に言葉を失うインヴィ。烏廻はゆっくりと距離を詰める。
「……ハハハッ! アンタの強さはよく分かった! 仕方ない、後のことなんて知ったこっちゃない」
インヴィは不敵な笑みを浮かべた。
「【大罪魔法:嫉妬ノ魔王】!」
インヴィがそう唱えると、身体から大量の魔力が溢れ出す。そして姿を消した。
烏廻は周囲を警戒する。背後から殺気を感じ取り振り返ると、いつの間にか背後にいたインヴィが攻撃を仕掛けてきた。
だが、烏廻は冷静だった。攻撃を紙一重で避けるとそのまま反撃に転じる。しかし、インヴィもまたその反撃を避けた。
再び距離を取る二人。インヴィは口元に笑みを浮かべ、烏廻は無表情のまま双剣を構えていた。
先に動いたのはインヴィだった。一瞬にして肉薄し、鉤爪で斬りかかる。
烏廻が受け流してカウンターを放つも、インヴィは余裕を持って避け、烏廻の背後に回って勢いよく蹴りを入れる。
烏廻は剣で防ごうとしたが間に合わず、直撃を受けた。
インヴィはそのまま怒涛の連続蹴りを放ち続ける。烏廻も防戦に努めるが徐々に押され、ついに剣を弾かれた。
チャンスとばかりにインヴィは攻撃速度を上げる。ガードを崩された烏廻は、みぞおちに蹴りを受け苦しげな声を漏らした。
インヴィが満足げな表情を浮かべる中、烏廻は蹴りの衝撃を利用して後ろに跳び、距離を取る。
(どうなってやがる、動きが比べ物にならないくらい上がりやがった)
烏廻はこの戦闘が始まって初めて驚愕した。
(身体能力向上系の魔法か? いや、それにしては上がり幅がデカすぎる)
急激な成長に困惑しながらも、烏廻はすぐに思考を切り替えて踏み込む。
だが、それよりも速くインヴィが仕掛けてきた。烏廻の二振りの剣による攻撃を、インヴィは鉤爪で受け止めて反撃する。烏廻は後ろに飛んで回避した。
「……お前、一体何をした?」
「知りたい? まあそうだね、特別に教えてあげるよ……僕は今、アンタと同等の力を得た」
「なに?」
「簡単に言えば、さっきの魔法は対象者と同等の力を得ることができるって訳さ。魔力から何からね」
インヴィが得意気に説明する。
(俺と同等だと?)
「そう。だからこんなこともできる……四神流・白虎ノ型――【蓮牙】」
インヴィは一瞬で烏廻の懐に侵入すると、右手を左から、左手を右から水平に振り抜く。
烏廻が放った技と同じものを、剣の代わりに鋭利な爪で再現したのだ。
「……ッ!?」
烏廻はギリギリで反応し直撃は避けたものの、腹をかすめた。服が裂け、鮮血が流れ出る。
「アハハ! さっきまでの余裕そうな顔はどこにいったの?」
愉快そうに笑うインヴィに対し、烏廻は無言のまま見つめ返す。
「言っておくけど、アンタと同等の力に“なった”んじゃなくて“得た”だからね」
「なるほどな……つまりはお前の元々の力+αってことか」
「理解できたみたいだね。……まあ、理解したところでアンタに勝ち目はないけどね!」
インヴィは一気に加速して迫り、右足を振り下ろす。
烏廻は両手の剣を重ねて下から切り上げた。足と剣が激突し、インヴィの身体が宙に浮く。
その隙を逃さず烏廻が追撃するが、インヴィは空中で身を捻って着地し、そのまま走り出して猛攻を仕掛ける。
今度はインヴィの動きが速すぎて捉えきれず、烏廻は防御に専念せざるを得なくなった。インヴィは嘲笑いながら鉤爪を振るい続ける。
(……これは仕方ないな。“枷”を外す)
「【人封印・解】」
烏廻がそう呟くと、インヴィは思わず後ずさった。だがすぐに冷静を取り戻し、笑みを浮かべる。
(……特に変わった様子は無い。大丈夫だ、何をしようと僕の敵じゃない!)
インヴィは肉薄し、鉤爪を振り上げて烏廻の脳天を狙う。
だが、烏廻は攻撃を見切っており、余裕を持って避けた。インヴィがさらに攻撃を加えようとするが、烏廻はその場から動こうともしない。
「どうした? かかってこないのか?」
「くそぉおお!!」
怒りに任せて繰り出されるインヴィの攻撃は、全て紙一重でかわされていく。
インヴィは一度距離を取った。
「ハァ、ハァ……クソ、なんで当たらないんだ……」
「どうやらさっきの魔法は、その時点での強さに依存するようだな」
烏廻は冷静に魔法を分析していた。
「今では互角と言ったところか?」
「ふ、ふざけるな!! 一体何をしたんだ!」
「……別に難しいことはしてない。俺は常に自分に枷をかけている。その一つ目の枷を解いただけだ。今のは身体のリミッター解除」
烏廻が説明を終えると、インヴィは鉤爪を連続で振るうが、全てかわされ、顎へ強烈な蹴り上げを喰らった。
「グアッ……」
「どうした? もう終わりか?」
「黙れぇえ!!」
狂乱して爪を振り回すインヴィに、烏廻は冷静に対処する。
「四神流・白虎ノ型――【蓮牙】」
双剣が水平に繰り出され、インヴィを吹き飛ばす。
「グッ……ハァ……ハァ……な、なんで僕の攻撃は当たらないのに、アンタの攻撃は当たるんだよ!」
「分からないか?」
答える余裕もなく睨みつけるインヴィに、烏廻は言い放つ。
「一つ、お前の攻撃は単調すぎる。直線的で読みやすい。二つ、殺気を出しすぎだ。どこから攻撃が来るか丸分かりだ。そして三つ目――お前、もう限界だろ?」
「な、何を……」
インヴィはそこで初めて自身の激しい息切れと、身体を苛む激痛に気づく。
(な、なんで? 確かにあいつの言う通りだ。だけどこんなこと今までなかった! なのにどうして!?)
焦るインヴィに、烏廻はため息をつき、静かに告げた。
「過ぎた力は身を滅ぼす。俺と同等の力を得たのは良かったが、肝心のお前の方が耐えきれてねぇんだよ。それに、あの魔法は元々長く持つものでもないんだろ」
インヴィは圧倒的な威圧感と恐怖に圧され、何も言い返せない。
「これで終わりだ。お前の敗因はただ一つ、俺が相手だったってことだ。――四神流・朱雀ノ型【郝翼之刃】」
交差された双剣から飛んだ斬撃をまともに喰らい、インヴィは為す術もなく地面に倒れ伏した。
烏廻が近づき、しゃがみ込む。
「……意識はあるな」
「……クソッ、僕はまだ負けていない……まだ戦える!」
「……いや、お前の負けだ」
「ふざけるな!! ……っ!?」
起き上がろうとしても身体が動かない。烏廻は魔法陣を展開し、鎖でインヴィを拘束した。
「……アンタに一つ良いことを教えてあげるよ」
拘束されたインヴィが不敵に笑う。
「アンタ達は僕達のことをヴァニタスから聞いたと思うけど……僕は会ったことないんだよね、そいつと」
「……」
「まあ何て聞いてるか分からないけど、僕達の人数は当然聞いてるよね?」
「――まさか!?」
烏廻は驚愕の声を上げた。
「ハハッ! 気づいた? 僕達は全員で“7人”! ヴァニタスからは“6人”って聞いてるんだよね?」
満足気に笑うインヴィ。
ルイ(ヴァニタス)とインヴィに面識はなく、烏廻たちはルイから組織のメンバーは自身が抜けて6人になったと聞いていたのだった。
(くそ! 魔力反応が6人だったから気付かなかった! もう1人どこかに侵入してやがる!)
烏廻はインヴィを連れて、急いで転移を行った。
対する烏廻は傷一つ負っていない。
インヴィは立ち上がりながら荒くなった呼吸を整える。一方、烏廻は剣を下ろした状態で立っており、二人の実力差は歴然であった。
「そろそろ終わりにするか」
烏廻がそう告げ、接近しようとする。
インヴィはすぐに体勢を立て直すと、烏廻の接近を阻止するように腕を振るう。
烏廻はそれをかわすとそのまま肉薄し、剣を振り抜く。
インヴィは慌てて後ろに飛ぶことで直撃を免れるが、肩をかすめ、傷口から鮮血が流れる。それを見た烏廻は、無造作に剣を一振りして血を払った。
そして、再びインヴィに近づく。インヴィは距離を取ろうとするが、烏廻の方が速くすぐに追いつかれる。
烏廻の剣が襲いかかる。インヴィはそれをギリギリで避けるが、バランスを崩してしまう。
そこへ烏廻の蹴りが襲う。間一髪で防ぐものの威力を殺し切れず、吹き飛ばされた。
烏廻は追撃しようとするが、インヴィが立ち上がる方が早かった。
「ハァハァ……クソが! 調子に乗りやがって……」
インヴィはボロボロになりながらも、まだ戦意を失っていない。
「お前じゃ俺には勝てないって分かったろ?」
「うるさい!」
インヴィはそう叫ぶと姿を消した。
「……まだ諦めないか」
烏廻は呟き、周囲に神経を張り巡らせる。インヴィは視界から消えると同時に死角から現れ、首を狙って鋭い鉤爪を繰り出した。
しかし烏廻にあっさりと交わされ、カウンターを食らう。インヴィは慌ててその場から離れた。
「――ッ、だったらこれならどうだ! 我、万雷を欲す。神の怒りにより降り注ぐ稲妻よ、雷轟となりて我が敵を穿つ矛と化して顕現せよ【雷神の怒号】!」
詠唱を終えると、インヴィの頭上に巨大な魔法陣が現れ、そこから無数の落雷が烏廻を襲う。
しかし、烏廻は避けようともせず、ただその場に立ち尽くしていた。インヴィはニヤリと笑う。いくら烏廻でも、この一撃を喰らえば無事では済まないはずだ。
落雷が烏廻を直撃する。インヴィは勝利を確信して笑みを浮かべるが、次の瞬間、その顔は驚愕に染まることになる。
そこにいたのは、無傷の烏廻だった。インヴィは自分の目を疑う。
「なんで……」
「簡単だ。斬ればいい」
烏廻はインヴィの頭上にある魔法陣に剣先を向ける。
「ふざけるなッ!」
インヴィは烏廻に向けて更に雷撃を落とす。
「四神流・玄武ノ型――【羅生門】」
烏廻が右手の剣を左から右へ、左手の剣を上から下へと振るうと、インヴィの放った全ての雷が霧散した。
あまりの出来事に言葉を失うインヴィ。烏廻はゆっくりと距離を詰める。
「……ハハハッ! アンタの強さはよく分かった! 仕方ない、後のことなんて知ったこっちゃない」
インヴィは不敵な笑みを浮かべた。
「【大罪魔法:嫉妬ノ魔王】!」
インヴィがそう唱えると、身体から大量の魔力が溢れ出す。そして姿を消した。
烏廻は周囲を警戒する。背後から殺気を感じ取り振り返ると、いつの間にか背後にいたインヴィが攻撃を仕掛けてきた。
だが、烏廻は冷静だった。攻撃を紙一重で避けるとそのまま反撃に転じる。しかし、インヴィもまたその反撃を避けた。
再び距離を取る二人。インヴィは口元に笑みを浮かべ、烏廻は無表情のまま双剣を構えていた。
先に動いたのはインヴィだった。一瞬にして肉薄し、鉤爪で斬りかかる。
烏廻が受け流してカウンターを放つも、インヴィは余裕を持って避け、烏廻の背後に回って勢いよく蹴りを入れる。
烏廻は剣で防ごうとしたが間に合わず、直撃を受けた。
インヴィはそのまま怒涛の連続蹴りを放ち続ける。烏廻も防戦に努めるが徐々に押され、ついに剣を弾かれた。
チャンスとばかりにインヴィは攻撃速度を上げる。ガードを崩された烏廻は、みぞおちに蹴りを受け苦しげな声を漏らした。
インヴィが満足げな表情を浮かべる中、烏廻は蹴りの衝撃を利用して後ろに跳び、距離を取る。
(どうなってやがる、動きが比べ物にならないくらい上がりやがった)
烏廻はこの戦闘が始まって初めて驚愕した。
(身体能力向上系の魔法か? いや、それにしては上がり幅がデカすぎる)
急激な成長に困惑しながらも、烏廻はすぐに思考を切り替えて踏み込む。
だが、それよりも速くインヴィが仕掛けてきた。烏廻の二振りの剣による攻撃を、インヴィは鉤爪で受け止めて反撃する。烏廻は後ろに飛んで回避した。
「……お前、一体何をした?」
「知りたい? まあそうだね、特別に教えてあげるよ……僕は今、アンタと同等の力を得た」
「なに?」
「簡単に言えば、さっきの魔法は対象者と同等の力を得ることができるって訳さ。魔力から何からね」
インヴィが得意気に説明する。
(俺と同等だと?)
「そう。だからこんなこともできる……四神流・白虎ノ型――【蓮牙】」
インヴィは一瞬で烏廻の懐に侵入すると、右手を左から、左手を右から水平に振り抜く。
烏廻が放った技と同じものを、剣の代わりに鋭利な爪で再現したのだ。
「……ッ!?」
烏廻はギリギリで反応し直撃は避けたものの、腹をかすめた。服が裂け、鮮血が流れ出る。
「アハハ! さっきまでの余裕そうな顔はどこにいったの?」
愉快そうに笑うインヴィに対し、烏廻は無言のまま見つめ返す。
「言っておくけど、アンタと同等の力に“なった”んじゃなくて“得た”だからね」
「なるほどな……つまりはお前の元々の力+αってことか」
「理解できたみたいだね。……まあ、理解したところでアンタに勝ち目はないけどね!」
インヴィは一気に加速して迫り、右足を振り下ろす。
烏廻は両手の剣を重ねて下から切り上げた。足と剣が激突し、インヴィの身体が宙に浮く。
その隙を逃さず烏廻が追撃するが、インヴィは空中で身を捻って着地し、そのまま走り出して猛攻を仕掛ける。
今度はインヴィの動きが速すぎて捉えきれず、烏廻は防御に専念せざるを得なくなった。インヴィは嘲笑いながら鉤爪を振るい続ける。
(……これは仕方ないな。“枷”を外す)
「【人封印・解】」
烏廻がそう呟くと、インヴィは思わず後ずさった。だがすぐに冷静を取り戻し、笑みを浮かべる。
(……特に変わった様子は無い。大丈夫だ、何をしようと僕の敵じゃない!)
インヴィは肉薄し、鉤爪を振り上げて烏廻の脳天を狙う。
だが、烏廻は攻撃を見切っており、余裕を持って避けた。インヴィがさらに攻撃を加えようとするが、烏廻はその場から動こうともしない。
「どうした? かかってこないのか?」
「くそぉおお!!」
怒りに任せて繰り出されるインヴィの攻撃は、全て紙一重でかわされていく。
インヴィは一度距離を取った。
「ハァ、ハァ……クソ、なんで当たらないんだ……」
「どうやらさっきの魔法は、その時点での強さに依存するようだな」
烏廻は冷静に魔法を分析していた。
「今では互角と言ったところか?」
「ふ、ふざけるな!! 一体何をしたんだ!」
「……別に難しいことはしてない。俺は常に自分に枷をかけている。その一つ目の枷を解いただけだ。今のは身体のリミッター解除」
烏廻が説明を終えると、インヴィは鉤爪を連続で振るうが、全てかわされ、顎へ強烈な蹴り上げを喰らった。
「グアッ……」
「どうした? もう終わりか?」
「黙れぇえ!!」
狂乱して爪を振り回すインヴィに、烏廻は冷静に対処する。
「四神流・白虎ノ型――【蓮牙】」
双剣が水平に繰り出され、インヴィを吹き飛ばす。
「グッ……ハァ……ハァ……な、なんで僕の攻撃は当たらないのに、アンタの攻撃は当たるんだよ!」
「分からないか?」
答える余裕もなく睨みつけるインヴィに、烏廻は言い放つ。
「一つ、お前の攻撃は単調すぎる。直線的で読みやすい。二つ、殺気を出しすぎだ。どこから攻撃が来るか丸分かりだ。そして三つ目――お前、もう限界だろ?」
「な、何を……」
インヴィはそこで初めて自身の激しい息切れと、身体を苛む激痛に気づく。
(な、なんで? 確かにあいつの言う通りだ。だけどこんなこと今までなかった! なのにどうして!?)
焦るインヴィに、烏廻はため息をつき、静かに告げた。
「過ぎた力は身を滅ぼす。俺と同等の力を得たのは良かったが、肝心のお前の方が耐えきれてねぇんだよ。それに、あの魔法は元々長く持つものでもないんだろ」
インヴィは圧倒的な威圧感と恐怖に圧され、何も言い返せない。
「これで終わりだ。お前の敗因はただ一つ、俺が相手だったってことだ。――四神流・朱雀ノ型【郝翼之刃】」
交差された双剣から飛んだ斬撃をまともに喰らい、インヴィは為す術もなく地面に倒れ伏した。
烏廻が近づき、しゃがみ込む。
「……意識はあるな」
「……クソッ、僕はまだ負けていない……まだ戦える!」
「……いや、お前の負けだ」
「ふざけるな!! ……っ!?」
起き上がろうとしても身体が動かない。烏廻は魔法陣を展開し、鎖でインヴィを拘束した。
「……アンタに一つ良いことを教えてあげるよ」
拘束されたインヴィが不敵に笑う。
「アンタ達は僕達のことをヴァニタスから聞いたと思うけど……僕は会ったことないんだよね、そいつと」
「……」
「まあ何て聞いてるか分からないけど、僕達の人数は当然聞いてるよね?」
「――まさか!?」
烏廻は驚愕の声を上げた。
「ハハッ! 気づいた? 僕達は全員で“7人”! ヴァニタスからは“6人”って聞いてるんだよね?」
満足気に笑うインヴィ。
ルイ(ヴァニタス)とインヴィに面識はなく、烏廻たちはルイから組織のメンバーは自身が抜けて6人になったと聞いていたのだった。
(くそ! 魔力反応が6人だったから気付かなかった! もう1人どこかに侵入してやがる!)
烏廻はインヴィを連れて、急いで転移を行った。
