空の色は変わらない

 「1周地区から来ました」

 初めての教室で,声を轟かせたのを覚えている。
 窓の外では桜がキラキラと散っていた。全てが輝いて見えるとはこの事だと私は思った。
 私の言葉に近くの何人かがチラリとこちらを見ていたのを覚えている。
 小中学校ではされなかった反応だった。
 それはそうだろう。だって,私がいたのは全員が人生1周目の1周地区だったのだから。
 けれども,1年前私が来たのは地元の学校ではない。全地区からの人間が集まる『交流高校』
 私は見定めするかのような視線に負けじともう一度声を出していた。

 「一ノ瀬杏朱(いちのせあんず)です。よろしくお願いします」

 チラホラと拍手の音が聞こえていた。
 ――確かあれは,私が席に座ったのと同時に起きた気がする。

 「黄金澤(こがねざわ)

 座ったばかりの椅子から転げ落ちるのではないかと思ったのを覚えている。
 よく通る声は私の後ろから聞こえてきた。
 私が……いや,クラスメイト全員の目線の先にいたのは明るい髪を持った一人の男子生徒。
 とにかく存在感があった。名字だけの冷たい自己紹介も彼の異質さを表しているようだった。

 「7周地区から来ました。特別よろしくするつもりはありません」

 ニコリとも笑うことなく彼は言った。風が吹き,カーテンがなびく。
 教室の時が止まったようだった。
 その後,先生が何とか教室の時間を戻したが,私だけは時間が止まったまま彼を見ていた。

 「………何だよ」

 「………」

 不機嫌なのを隠そうともしない彼の言葉を無視して私は話しかけた。

 「これからよろしくね,黄金澤君。……ぜひ仲良くしてくれるとうれしいな」

 「……はぁ?」

 周囲の驚いたような顔と,眉をひそめた彼の顔が私の記憶には鮮明にのこっている。
 外では桜が笑っていた。