【短】まだ名前のない帰り道




 修理には半日もかからなかった。

 なにもしないまま五時間くらいが経って、ノックとともに研究員が戻ってきた。


「おまたせしました。修理は無事に終わりました」


 母と父はほっとして肩をすとんと落とした。ずっと張り詰めた顔をしていたが、それも和らいでいる。


「これから数年は劣化することはほぼないでしょう。ですが、申し上げていた通り、人格データに関しては――」


 凪は研究員からの説明を聞いた。理解してはいたが、もう一度。


「――残りの手続きは受付にてお願いします。それでは私たちはこれで失礼します」


 説明を終えた研究員は母に球体を渡して、部屋をあとにした。


「ただいま」


 母は瞳をうるませ、ぎゅっと球体を抱きしめた。愛おしそうに表面をなでて、父へ。

 父は同じように抱きしめると、『おかえり』と返した。そして、球体は凪へ。


「ただいま、兄ちゃん」


 球体は繰り返す。


「僕、変わった?」


 凪の手の中で、球体は振動した。


――……同じだ。


 湊とも、前の球体とも。同じと言われればそうだと言えるが、違うと言われたときにはそうとは言えない。それくらい。

 だが。


「……知らない」


 凪はきっぱりと答えた。


「父さん、母さん、帰ろう」

「そうね」

「それじゃあ、先に受付に行っておくよ」


 二人は立ち上がる。ドアを開けたところで凪も球体に声をかけた。