成瀬が台所で夕飯を作っているあいだ、俺はダイニングテーブルに頬杖をつき意味もなくスマホの画面を上下に動かしていた。
タイムラインにはさっきから同じ投稿しか表示されていない。
更新したところで新しい情報なんか増えねえのに、顔を上げると成瀬の姿が目に入っちまうから、指だけ動かして時間を潰していた。
成瀬の首にはいつもの黒い首輪がついているが、チェーンは料理の邪魔になるから外させてある。
赤い長髪を背中に流し、白いレースの袖口をリボンでまとめた成瀬は、冷蔵庫と調理台のあいだを行き来しながら夕食を作っていた。
動くたびに、前だけ短い黒のスカートがひらひらと揺れる。その下から白い太腿が見え隠れするもんだから、気になってしようがねえ。
「御主人様、さっきから同じ画面ばかり見ていて面白いのか?」
「うるせえな。人のスマホ覗いてんじゃねえよ」
「覗いてはいない。冷蔵庫に行くたびに同じ画面が目に入るだけだ」
「こっち見んじゃねえよ。料理に集中しろ」
「だったら落ち着きなく足をぶらぶらさせるな、気が散る」
テーブルの下で揺らしていた足を止めると、成瀬は何もかも分かっているような顔で鍋に向き直った。
よく考えれば、おかしいのは俺じゃなくて成瀬の格好だ。
男がそんな服で夕食を作ってれば気になるのは当然だし、女の服のスカートから脚が見えればつい目がいっちまうのも仕方ねえ。
だけど、そもそも成瀬に女の格好をしろと命じたのは俺だった。
学校で偉そうに俺の服装を注意していたこいつを困らせてやりたかった。
だが、今となってはちっとも嫌そうじゃねえ。俺の前で女装することに慣れちまったんだろう。
何かもっと、こいつが嫌がることを命令しなきゃ、奴隷にした意味がねえ。
そこで俺は、いい案を思いついた。
エロい格好をさせて、写真を撮ってやればいいんだ。
それならさすがに、あの澄ました顔も崩してやれるはずだ。
初日にパンイチと首輪姿で写真撮った時みたいに。
「なあ、成瀬」
「今度は何だ?」
「飯食い終わったらちょっと付き合え」
「俺はすでに毎日付き合わされている。食後に肩揉みをさせるつもりなら先に食器を片づけてからだ」
「そんなんじゃねえよ。もっと面白えこと考えた」
成瀬が嫌そうに眉を寄せる。それを見てようやく、いつもの立場に戻れた気がした。
夕食は照り焼きチキンと野菜のスープだった。
皮には甘辛いタレが絡み、中の肉は柔らかい。
結局俺はいつもどおり飯をおかわりし、成瀬から二杯目を受け取った。
食べ終わると、成瀬は皿を重ねて立ち上がろうとした。
「待て。片づけは後だ。そこに立て」
そう言って、成瀬にスマホのレンズを向ける。
「なぜ撮影する必要がある?」
「御主人様が撮りてえからに決まってんだろ。ほら、壁の前に立ってスカートの裾を両手で持て」
「は? 何のために?」
「いいから、裾をつまんで、ちょっとだけ上に持ち上げてみろ」
「断る。おまえが考えていることは、極めて下品なことだろう」
成瀬は思いっきり眉を顰めた。
「おまえに拒否権はねえよ。奴隷なんだから」
成瀬は壁際に立ったものの、すぐには従わなかった。
赤い長髪のあいだから俺をにらみ、俺が諦める気がないと分かると、渋々スカートの裾を指でつまんだ。
そして、前側の裾を持ち上げるのではなく左右に広げるようにして、片足をわずかに後ろに引く。
「そうじゃねえよ。上に持ち上げてみろ。ギリギリまででいいから」
俺がそう言うと、成瀬は嫌そうに鼻を鳴らした。
「極めて悪趣味な奴だな」
ゆっくりと、スカートの裾が持ち上がっていく。
だが、そこに現れたのは、幾重にも重なった白いフリルの層だった。
俺は思わず舌打ちをする。
「その下のヒラヒラも一緒に持ち上げろよ」
「これはパニエというんだ」
「いいから言われた通りにしろ」
成瀬は両手でスカートの裾を中のパニエごと掴み直した。
その両手がゆっくりと上に上がると、もともと膝上十センチほど見えていた白い太ももが、さらに上の方まであらわになる。
「顔が怖えよ。ローズのときみてえに笑え」
「こんな命令をされて笑えると思うのか?」
「笑えっつってんだろ。それから、御主人様って呼べ」
「……これで満足ですか、御主人様?」
成瀬は口元だけを持ち上げ、店で使っている営業用の笑顔を作った。
俺は何枚か続けて写真を撮った。
さらに困らせてやろうと思い、動画撮影に切り替える。
「今度は動画だ。そのまま動くなよ」
「写真だけでは足りないのか?」
「命令に文句つけんな。せっかくだから、もうちょい際どいことさせてやる」
左手でスマホを構えたまま右手を成瀬の脚に伸ばす。
太腿まで指先が残り数センチに迫ったところで、成瀬の顔から作り物の笑みが消えた。
「おい、待て」
低い声。
だが、俺は止まらなかった。
そのまま右手を成瀬の太腿に滑らせる。
指先が白い肌に触れた瞬間、成瀬の身体がびくりと震える。
しっとりとしていてそれでいて筋肉の引き締まった感触が、掌に伝わってきた。
男だと分かっていても、その肌は見た目以上に滑らかで、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「やめろと言っている!」
成瀬の声が鋭くなり、スカートの裾が上から両手で押さえつけられる。
それでも俺はやめなかった。
左手でスマホを落とさないように構えながら、太腿の内側へと右手を滑らせていく。
パニエのフリルをかき分けるようにして、手を潜り込ませる。成瀬は後ずさりして逃げようとするが、後ろは壁だ。
「逃げんな。命令だって言ってんだろ。奴隷は大人しくしてろ」
「くっ……」
成瀬の頬は紅潮し、営業用の笑顔は完全に消え去っていた。
眉をきつく寄せ唇を噛みしめるその表情に、俺はなぜか胸の奥が熱くなるのを感じた。
「……っ、……」
俺の指が下着の裾から内側に入り込み、太腿の付け根に近づいたとき、成瀬が息を詰まらせた。
声には明らかな動揺が混じっていて、それまでの強い拒絶とは違う響きがあった。
俺は手を止めずに、ゆっくりと肌の上をなぞる。成瀬の脚が小刻みに震える。
「もしかして感じてんのかよ、成瀬。嫌ならもっと抵抗すればいいのに、この変態」
「……おまえに……言われたくないっ」
成瀬は顔を背ける。耳の先まで赤くなっているのが見えて、俺は思わず喉を鳴らした。
最初はただ困らせてやるつもりだったのに、手のひらに吸いつくような肌の感触が、思った以上に俺を夢中にさせていた。
もっと触りたい、もっと反応を見たい──そんな衝動が湧き上がってくる。
左手に持っていたスマホが床に落ち、大きな音を立てる。
録画はまだ続いていたが、そんなことはもうどうでもよかった。
空いた手を成瀬の腰に回し、ぐっと引き寄せる。
互いの身体が密着し、成瀬の吐く息が耳にかかる。
「御主人様の命令に逆らうと、どうなるか分かってんだろうな」
耳元で囁くと成瀬はぎゅっと目を閉じ、小さく呟いた。
「……最低だな、おまえ」
その声には怒りよりも、なぜか諦めにも似た響きが混ざっていた。
タイムラインにはさっきから同じ投稿しか表示されていない。
更新したところで新しい情報なんか増えねえのに、顔を上げると成瀬の姿が目に入っちまうから、指だけ動かして時間を潰していた。
成瀬の首にはいつもの黒い首輪がついているが、チェーンは料理の邪魔になるから外させてある。
赤い長髪を背中に流し、白いレースの袖口をリボンでまとめた成瀬は、冷蔵庫と調理台のあいだを行き来しながら夕食を作っていた。
動くたびに、前だけ短い黒のスカートがひらひらと揺れる。その下から白い太腿が見え隠れするもんだから、気になってしようがねえ。
「御主人様、さっきから同じ画面ばかり見ていて面白いのか?」
「うるせえな。人のスマホ覗いてんじゃねえよ」
「覗いてはいない。冷蔵庫に行くたびに同じ画面が目に入るだけだ」
「こっち見んじゃねえよ。料理に集中しろ」
「だったら落ち着きなく足をぶらぶらさせるな、気が散る」
テーブルの下で揺らしていた足を止めると、成瀬は何もかも分かっているような顔で鍋に向き直った。
よく考えれば、おかしいのは俺じゃなくて成瀬の格好だ。
男がそんな服で夕食を作ってれば気になるのは当然だし、女の服のスカートから脚が見えればつい目がいっちまうのも仕方ねえ。
だけど、そもそも成瀬に女の格好をしろと命じたのは俺だった。
学校で偉そうに俺の服装を注意していたこいつを困らせてやりたかった。
だが、今となってはちっとも嫌そうじゃねえ。俺の前で女装することに慣れちまったんだろう。
何かもっと、こいつが嫌がることを命令しなきゃ、奴隷にした意味がねえ。
そこで俺は、いい案を思いついた。
エロい格好をさせて、写真を撮ってやればいいんだ。
それならさすがに、あの澄ました顔も崩してやれるはずだ。
初日にパンイチと首輪姿で写真撮った時みたいに。
「なあ、成瀬」
「今度は何だ?」
「飯食い終わったらちょっと付き合え」
「俺はすでに毎日付き合わされている。食後に肩揉みをさせるつもりなら先に食器を片づけてからだ」
「そんなんじゃねえよ。もっと面白えこと考えた」
成瀬が嫌そうに眉を寄せる。それを見てようやく、いつもの立場に戻れた気がした。
夕食は照り焼きチキンと野菜のスープだった。
皮には甘辛いタレが絡み、中の肉は柔らかい。
結局俺はいつもどおり飯をおかわりし、成瀬から二杯目を受け取った。
食べ終わると、成瀬は皿を重ねて立ち上がろうとした。
「待て。片づけは後だ。そこに立て」
そう言って、成瀬にスマホのレンズを向ける。
「なぜ撮影する必要がある?」
「御主人様が撮りてえからに決まってんだろ。ほら、壁の前に立ってスカートの裾を両手で持て」
「は? 何のために?」
「いいから、裾をつまんで、ちょっとだけ上に持ち上げてみろ」
「断る。おまえが考えていることは、極めて下品なことだろう」
成瀬は思いっきり眉を顰めた。
「おまえに拒否権はねえよ。奴隷なんだから」
成瀬は壁際に立ったものの、すぐには従わなかった。
赤い長髪のあいだから俺をにらみ、俺が諦める気がないと分かると、渋々スカートの裾を指でつまんだ。
そして、前側の裾を持ち上げるのではなく左右に広げるようにして、片足をわずかに後ろに引く。
「そうじゃねえよ。上に持ち上げてみろ。ギリギリまででいいから」
俺がそう言うと、成瀬は嫌そうに鼻を鳴らした。
「極めて悪趣味な奴だな」
ゆっくりと、スカートの裾が持ち上がっていく。
だが、そこに現れたのは、幾重にも重なった白いフリルの層だった。
俺は思わず舌打ちをする。
「その下のヒラヒラも一緒に持ち上げろよ」
「これはパニエというんだ」
「いいから言われた通りにしろ」
成瀬は両手でスカートの裾を中のパニエごと掴み直した。
その両手がゆっくりと上に上がると、もともと膝上十センチほど見えていた白い太ももが、さらに上の方まであらわになる。
「顔が怖えよ。ローズのときみてえに笑え」
「こんな命令をされて笑えると思うのか?」
「笑えっつってんだろ。それから、御主人様って呼べ」
「……これで満足ですか、御主人様?」
成瀬は口元だけを持ち上げ、店で使っている営業用の笑顔を作った。
俺は何枚か続けて写真を撮った。
さらに困らせてやろうと思い、動画撮影に切り替える。
「今度は動画だ。そのまま動くなよ」
「写真だけでは足りないのか?」
「命令に文句つけんな。せっかくだから、もうちょい際どいことさせてやる」
左手でスマホを構えたまま右手を成瀬の脚に伸ばす。
太腿まで指先が残り数センチに迫ったところで、成瀬の顔から作り物の笑みが消えた。
「おい、待て」
低い声。
だが、俺は止まらなかった。
そのまま右手を成瀬の太腿に滑らせる。
指先が白い肌に触れた瞬間、成瀬の身体がびくりと震える。
しっとりとしていてそれでいて筋肉の引き締まった感触が、掌に伝わってきた。
男だと分かっていても、その肌は見た目以上に滑らかで、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「やめろと言っている!」
成瀬の声が鋭くなり、スカートの裾が上から両手で押さえつけられる。
それでも俺はやめなかった。
左手でスマホを落とさないように構えながら、太腿の内側へと右手を滑らせていく。
パニエのフリルをかき分けるようにして、手を潜り込ませる。成瀬は後ずさりして逃げようとするが、後ろは壁だ。
「逃げんな。命令だって言ってんだろ。奴隷は大人しくしてろ」
「くっ……」
成瀬の頬は紅潮し、営業用の笑顔は完全に消え去っていた。
眉をきつく寄せ唇を噛みしめるその表情に、俺はなぜか胸の奥が熱くなるのを感じた。
「……っ、……」
俺の指が下着の裾から内側に入り込み、太腿の付け根に近づいたとき、成瀬が息を詰まらせた。
声には明らかな動揺が混じっていて、それまでの強い拒絶とは違う響きがあった。
俺は手を止めずに、ゆっくりと肌の上をなぞる。成瀬の脚が小刻みに震える。
「もしかして感じてんのかよ、成瀬。嫌ならもっと抵抗すればいいのに、この変態」
「……おまえに……言われたくないっ」
成瀬は顔を背ける。耳の先まで赤くなっているのが見えて、俺は思わず喉を鳴らした。
最初はただ困らせてやるつもりだったのに、手のひらに吸いつくような肌の感触が、思った以上に俺を夢中にさせていた。
もっと触りたい、もっと反応を見たい──そんな衝動が湧き上がってくる。
左手に持っていたスマホが床に落ち、大きな音を立てる。
録画はまだ続いていたが、そんなことはもうどうでもよかった。
空いた手を成瀬の腰に回し、ぐっと引き寄せる。
互いの身体が密着し、成瀬の吐く息が耳にかかる。
「御主人様の命令に逆らうと、どうなるか分かってんだろうな」
耳元で囁くと成瀬はぎゅっと目を閉じ、小さく呟いた。
「……最低だな、おまえ」
その声には怒りよりも、なぜか諦めにも似た響きが混ざっていた。

