すらりと伸びた骨太の指はがっしりとたくましく、それに続く腕もまた無駄な肉が一切ない均整のとれた造りだとわかる。なによりダビデ像を彷彿とさせるしっかりとした骨格、きれいに切り揃えられて手入れされて形のいい爪。そして極めつけはくっきりと浮かんだ血管だ。
「ああ……いつ見てもカッコいいなぁ」
いつ見てもカッコ良くて、何度見ても飽きない。それが大翔にとっての最推しであり、特別な宝物でもある。
うっとりとそんな宝物の写真を眺めていると、「ごめん、待ったか?」と大翔に声がかけられる。
振り返ると、今しがたまで見つめていた宝物の写真と全く同じ手を振る青年――手塚が立っていた。
「いいえ。全然。待ってる間も幸せな気分だったんで平気です」
そう言いながら大翔がスマホの画面を見せると、手塚は少し照れたように頬を染め、苦笑する。
「またそれ見てたのかよ。もうすぐ本物が来るっていうのに」
「本物が来るからこそ、会う予行練習です」
なんだそれ、と手塚が笑い、大翔もまた笑う。そうして二人はごく当たり前のように手を繋いで歩き始める。とある場所で行われる展示会に向かうためだ。
「結構人気みたいなんで、チケット前売り買っておいて良かったですね」
「そうだな。写真とは言え等身大のダビデ像のパノラマが見られるんだもんな」
「それに、色々な彫刻家の作品も見られるって話ですからね。図録も買おうかな」
楽しみだなぁと大翔が微笑むと、手塚はそっとつないでいる手を握りしめてくる。その感触は出会った頃と変わらずたくましく、大翔の心までつかんでくるようだ。
待ち合わせた駅から電車に乗り、展示会会場の最寄り駅に降り立つ。そこから会場までは歩いて十分ほどで、いちょう並木が美しい。散り始めのいちょう並木の下を、二人は手を繋いで歩いて行く。もうすぐ、付き合い始めて三カ月になる。
「手塚さん、帰りに靴屋さん寄ってもいいですか」
「ああ、いいよ。見てやろうか?」
「見ても欲しいんですけど、その……」
大翔は足元のかつて手塚に勧められて買ったスニーカーに目を落としながら、少し頬を赤らめつつ答えた。
「今度はお揃いの靴にしませんか? これからの季節も履けるもの、欲しいなって思って」
かつて選んでもらったスニーカーやサンダルも大切だけれど、この先も二人で歩んでいくのなら揃いの靴がいい――そう、大翔は考えたのだ。
大翔の提案に手塚は嬉しそうに微笑み、繋いでいる手を一層強く握りしめてくる。
「いいね。すっごい良いやつ選ぼうな」
「もちろんです」
そう二人は見つめ合いながら微笑み、唄うように笑いながら歩いて行く。お互いにお互いのフェチズムとしての魅力も、恋人としての魅力も感じながら。
そうして二人は互いを特別な宝物として愛でていくのだった。
(終)
「ああ……いつ見てもカッコいいなぁ」
いつ見てもカッコ良くて、何度見ても飽きない。それが大翔にとっての最推しであり、特別な宝物でもある。
うっとりとそんな宝物の写真を眺めていると、「ごめん、待ったか?」と大翔に声がかけられる。
振り返ると、今しがたまで見つめていた宝物の写真と全く同じ手を振る青年――手塚が立っていた。
「いいえ。全然。待ってる間も幸せな気分だったんで平気です」
そう言いながら大翔がスマホの画面を見せると、手塚は少し照れたように頬を染め、苦笑する。
「またそれ見てたのかよ。もうすぐ本物が来るっていうのに」
「本物が来るからこそ、会う予行練習です」
なんだそれ、と手塚が笑い、大翔もまた笑う。そうして二人はごく当たり前のように手を繋いで歩き始める。とある場所で行われる展示会に向かうためだ。
「結構人気みたいなんで、チケット前売り買っておいて良かったですね」
「そうだな。写真とは言え等身大のダビデ像のパノラマが見られるんだもんな」
「それに、色々な彫刻家の作品も見られるって話ですからね。図録も買おうかな」
楽しみだなぁと大翔が微笑むと、手塚はそっとつないでいる手を握りしめてくる。その感触は出会った頃と変わらずたくましく、大翔の心までつかんでくるようだ。
待ち合わせた駅から電車に乗り、展示会会場の最寄り駅に降り立つ。そこから会場までは歩いて十分ほどで、いちょう並木が美しい。散り始めのいちょう並木の下を、二人は手を繋いで歩いて行く。もうすぐ、付き合い始めて三カ月になる。
「手塚さん、帰りに靴屋さん寄ってもいいですか」
「ああ、いいよ。見てやろうか?」
「見ても欲しいんですけど、その……」
大翔は足元のかつて手塚に勧められて買ったスニーカーに目を落としながら、少し頬を赤らめつつ答えた。
「今度はお揃いの靴にしませんか? これからの季節も履けるもの、欲しいなって思って」
かつて選んでもらったスニーカーやサンダルも大切だけれど、この先も二人で歩んでいくのなら揃いの靴がいい――そう、大翔は考えたのだ。
大翔の提案に手塚は嬉しそうに微笑み、繋いでいる手を一層強く握りしめてくる。
「いいね。すっごい良いやつ選ぼうな」
「もちろんです」
そう二人は見つめ合いながら微笑み、唄うように笑いながら歩いて行く。お互いにお互いのフェチズムとしての魅力も、恋人としての魅力も感じながら。
そうして二人は互いを特別な宝物として愛でていくのだった。
(終)



