次の日の放課後、B組の教室で額を突き合わせながら俺と在名は次の行き先を話し合っていた。在名は自分のインスタをスクロールするたびに「うっ」とか「ぐっ」とか苦痛の声を漏らしたが、在名と真帆ちゃんが辿った軌跡を確かめるには過去と睨めっこすることはやむを得ない。
ふとした瞬間に指を止めそうになる在名を、横から覗き込みつつ必死で励ます。
「ほら、辛いと思うけど頑張って」
「うん…吐きそう」
「それは勘弁して。でも本当に吐くならトイレ行ってよね」
写真の量は膨大で、俺は在名が真帆ちゃんと写真を撮りまくっていたことに加え、彼らが中学の頃からの付き合いだということを知った。インスタを遡りに遡っていると、まだあどけない2人の写真がたくさん出てきたのだ。
「中学の頃から付き合ってたんだね」
「中学入学の時、クラスが一緒になってそこで出会ったんだ。それで、俺が一目惚れ」
思い出の中を辿りながら在名が言う。まるで今ここが入学式の会場であるかのように頬を緩ませ、目の前にいる世界一可愛い女の子に見惚れていると言った表情だ。
「でも真帆は高嶺の花で、なかなか勇気が出なくて。1年は同じクラスだったけど、可愛すぎて話しかけることもできなかった。2年になってクラスが離れた時は死ぬほど落ち込んだけど、3年で運命の女神が微笑んでくれたんだよな。3年でまた同じクラスになったんだ。校外学習の時同じ班になって、俺は真帆の目も見られないくらい緊張してたから気づかなかったんだけど、真帆も入学式の時俺に一目惚れしてたらしい。校外学習のあと、告白された時は天にも昇る気持ちだった。俺は世界一幸運な男だって思った」
「すごい。絵に描いたような運命のカップルだね」
「絶対一緒の高校行こうなって約束して、俺の方がバカだったから死ぬほど勉強した。2人とも受かった時は泣いて抱き合ったよ」
いちいち大真面目に運命の女神が微笑んだと言い切るところとか、漫画みたいな馴れ初めとかが何もかも大袈裟だ。
なぜこんなにも運命に愛されていた2人が引き裂かれることになったのか、なぜ真帆ちゃんが別れを切り出したのか、気まぐれな運命も繊細な真帆ちゃんの恋心も俺には分からない。
ひとつ心当たりがあるとしたら、高嶺の花とか死ぬほど落ち込んだとか感情表現が大仰な在名が、真帆ちゃんにとっては少し重荷だったのではないだろうかということだ。これほど全力で愛されていた彼女はいつからか、安心や嬉しさよりも息苦しさが増していたのではないだろうか。邪推しながら在名を改めて見ると、確かに目の中に執念深さが垣間見える気がする。
「あ…これ。中学の卒業式の時に撮ったやつ」
在名がスクロールする指を止めた。今より少し幼い在名と真帆ちゃんが屈託なく笑ってこちらにピースサインを向けている。
どこからこの2人の運命はねじれていったんだろう。原因を突き止めるなら、始まりの場所に戻ってみるのも悪くないんじゃないだろうか。
「行ってみる?中学。真帆ちゃんと最初に出会った場所」
俺が言うと在名は真っ直ぐに俺の目を見つめ、何か決意を固めたように深く頷いた。
人生の重大な岐路に立たされているかのような面持ちだ。
やっぱりこいつ、なんでもかんでも大袈裟に受け止めすぎる奴なのかもしれない。
ふとした瞬間に指を止めそうになる在名を、横から覗き込みつつ必死で励ます。
「ほら、辛いと思うけど頑張って」
「うん…吐きそう」
「それは勘弁して。でも本当に吐くならトイレ行ってよね」
写真の量は膨大で、俺は在名が真帆ちゃんと写真を撮りまくっていたことに加え、彼らが中学の頃からの付き合いだということを知った。インスタを遡りに遡っていると、まだあどけない2人の写真がたくさん出てきたのだ。
「中学の頃から付き合ってたんだね」
「中学入学の時、クラスが一緒になってそこで出会ったんだ。それで、俺が一目惚れ」
思い出の中を辿りながら在名が言う。まるで今ここが入学式の会場であるかのように頬を緩ませ、目の前にいる世界一可愛い女の子に見惚れていると言った表情だ。
「でも真帆は高嶺の花で、なかなか勇気が出なくて。1年は同じクラスだったけど、可愛すぎて話しかけることもできなかった。2年になってクラスが離れた時は死ぬほど落ち込んだけど、3年で運命の女神が微笑んでくれたんだよな。3年でまた同じクラスになったんだ。校外学習の時同じ班になって、俺は真帆の目も見られないくらい緊張してたから気づかなかったんだけど、真帆も入学式の時俺に一目惚れしてたらしい。校外学習のあと、告白された時は天にも昇る気持ちだった。俺は世界一幸運な男だって思った」
「すごい。絵に描いたような運命のカップルだね」
「絶対一緒の高校行こうなって約束して、俺の方がバカだったから死ぬほど勉強した。2人とも受かった時は泣いて抱き合ったよ」
いちいち大真面目に運命の女神が微笑んだと言い切るところとか、漫画みたいな馴れ初めとかが何もかも大袈裟だ。
なぜこんなにも運命に愛されていた2人が引き裂かれることになったのか、なぜ真帆ちゃんが別れを切り出したのか、気まぐれな運命も繊細な真帆ちゃんの恋心も俺には分からない。
ひとつ心当たりがあるとしたら、高嶺の花とか死ぬほど落ち込んだとか感情表現が大仰な在名が、真帆ちゃんにとっては少し重荷だったのではないだろうかということだ。これほど全力で愛されていた彼女はいつからか、安心や嬉しさよりも息苦しさが増していたのではないだろうか。邪推しながら在名を改めて見ると、確かに目の中に執念深さが垣間見える気がする。
「あ…これ。中学の卒業式の時に撮ったやつ」
在名がスクロールする指を止めた。今より少し幼い在名と真帆ちゃんが屈託なく笑ってこちらにピースサインを向けている。
どこからこの2人の運命はねじれていったんだろう。原因を突き止めるなら、始まりの場所に戻ってみるのも悪くないんじゃないだろうか。
「行ってみる?中学。真帆ちゃんと最初に出会った場所」
俺が言うと在名は真っ直ぐに俺の目を見つめ、何か決意を固めたように深く頷いた。
人生の重大な岐路に立たされているかのような面持ちだ。
やっぱりこいつ、なんでもかんでも大袈裟に受け止めすぎる奴なのかもしれない。


