BORDER 最後の境界守

最初に見つかったのは、猫の首だけだった。

雨に濡れた路地裏のまんなかで、それは妙に静かだった。
胴はない。血も、ほとんど残っていない。
ただ切断面だけが黒く乾き、長くそこに置かれていたように見えた。

通報を受けた警官が規制線を張り、野次馬が遠巻きにざわめく。
ありふれた虐待事件に見えたのは、そこまでだった。

猫の首が置かれていた場所を中心に、半径数メートルだけ空気が淀んでいた。
息苦しいほど重いのに、風だけは妙に冷たい。
路地の奥から、誰もいないはずなのに、濡れた足音がひとつ、またひとつと近づいてくる。

切り捨てられたはずの命は、そこで終わらない。
強すぎる苦痛も、濃すぎる恨みも、ときに死を越えて残る。
人知れぬ日常の裏で、そうして怨念は境界を踏み越える。

ゆえに、狩らねばならない。

それを見つけ出し、裁き、存在ごと封じる者がいる。
これは、死に損なった怨念と、それでもなお人の世を守ろうとした者たちの、暗く血塗られた記録である。