午前3時17分の留守電

午前3時17分。

スマホの着信音で、悠真は目を覚ました。

薄暗い部屋の中で、画面だけが青白く光っている。

「……誰だよ、こんな時間に」

表示されていたのは、知らない番号だった。

090――。

そこから先は表示されていない。

悠真は少し迷ったあと、通話には出ず、留守番電話を確認した。

一件。

再生ボタンを押す。

『…………』

最初は、何も聞こえなかった。

ただ、微かに「ザー……」という雑音が続いている。

いたずら電話か。

そう思って停止しようとした、そのとき。

『……もしもし』

女の声がした。

小さく、震えている。

『聞こえてる?』

悠真の指が止まった。

『お願い。今から言うこと、ちゃんと聞いて』

声の主は、泣きそうだった。

『今日は……絶対に、玄関を開けないで』

「……は?」

思わず声が出た。

その瞬間。

コン。

玄関から音がした。

悠真は固まった。

コン、コン。

二回。

まるで誰かが、控えめにノックしている。

心臓が嫌な音を立て始めた。

こんな時間に、誰が来る?

悠真はベッドから降りることもできず、玄関を見つめた。

すると、留守番電話の中の女が続けた。

『……今、ノックしたよね?』

「…………」

『絶対に開けないで』

コン。

三回目のノック。

今度は、さっきより強かった。

悠真は息を止めた。

そして、留守番電話の最後に、女が小さく呟いた。

『……まだ、あなたには見えてないと思うけど』

『その人――』

そこで録音は途切れた。

部屋に静寂が戻る。

悠真はスマホを握りしめたまま、玄関を見つめていた。

やがて。

ドアの向こうから、声がした。

「悠真?」

知らない声だった。

なのに。

その声は、悠真の名前を知っていた。