おひとり様再発見

鍋をあらかた食べてしまい、ちゃんぽんを追加する。
煮えたちゃんぽんをひと啜りして、手が止まった。

……ちゃんぽん、ヤバいな。

ずるんと最後まで麺を啜り、ごくんと飲み込む。
モツと野菜の旨味がたっぷり出たスープが絡んだちゃんぽんは、控えめに言って最高だった。
無言でちゃんぽんをひたすら啜り続ける。
最後はお玉でもうなにか残っていないかさらったが、キャベツのかけらもなかった。

「食べたー、けど」

ちらりと視線がメニューへといく。
おじやセットもあると書いてあった。
スープはまだおじやに耐えられるほどある。
頼むか、頼まないか。
しかし今日はもう、すでにサワーを二杯も飲んでいる。

「うー」

断腸の思いで席を立つ。
代わりにコンビニでダッツを買って帰ろう。

会計を済ませ、ダッツを買ってホテルに戻る。
ダッツをつつきながら携帯をチェックした。
仕事関係に返信を打ち、残るは彼氏だけとなった。

「一から十までやってもらわないとできない、赤ちゃんですかね?」

既読がつかないからか山のように送られてきているメッセージを見ながら嘲笑が漏れる。

「はいはーい、明後日帰るから、それまでに荷物まとめて出ていってね、……と」

あの部屋はもともと私の部屋だし、彼が出ていくのが妥当というものだろう。
メッセージを送り、速攻でブロックした。
もう、彼とは関わりたくもない。

「お風呂入ろーっと」

ほろ酔い気分なのもあるが上機嫌でお風呂に入り、汚れと一緒に彼氏への未練も全部流れ落としてさっぱりした。

「そうだ、名刺の整理しとかなきゃ」

お風呂からあがり、今日の取引先訪問でいただいた名刺の整理を始める。
その中の一枚で手が止まった。

「福岡に転職かー」

それは私にうちの会社に来ないかと誘ってくれた課長さんの名刺だった。
ごろりとベッドに寝転び、名刺を高く持ち上げて眺める。

「まあ、福岡で暮らすなんて考えられないけど」

知り合いのひとりもいない福岡で暮らすなんて、私にはできそうにない。
誰か、頼れる人がいれば別かもしれないが。

「さーてあと二日、福岡、満喫しちゃうぞ」

観光はなにもリサーチせずに来たので早速、携帯を手に取り調べはじめる。

「ゴマサバ、うどん、水炊きもいいなー。
イカ?
え、イカ、美味しそう!
糸島ってなに!?
お洒落なカフェもいっぱい!
仕事しながらあと二日じゃ全然足りない!
いっそ福岡、永住しちゃう!?」

前言撤回な自分の言葉に、思わずけらけら笑っていた。


【終】