地下鉄で移動し、取ってあった博多駅近くのホテルに荷物を預ける。
空港から都市部まで地下鉄で簡単に移動できるのが福岡のいいところだ。
得意先へ向かうためにバスターミナルへ行くと、ひっきりなしにバスがやってきていた。
「ふぉえー、凄いな」
まるでイベント会場へと向かうシャトルバスのようだが、これが通常運行とは。
さすが、バス王国といわれるだけある。
バスに揺られて得意先へと移動する。
さす九――さすが九州なる、九州の男尊女卑を揶揄する言葉があるので若干、舐められたらどうしようと警戒していたが、そんなことはまったくなかった。
――それどころか。
「いやー、なるほどですね!」
先方の課長さんが膝を打つ。
ここではおじさんの課長さんと若い眼鏡男子が商談に応じてくれていた。
……「なるほどですね」?
一瞬、頭の中にクエスチョンマークが浮かんできたが、スルーしておいた。
「お話、よくわかりました。
前向きに検討させていただきます!
早速といってはなんですが来月、大きなイベントがあるんです。
それにあわせて納品、……とか無理ですよね?」
「課長、それはさすがに無茶振りがすぎます」
すぐに同席していた眼鏡男子が止めてきたが、私はそのあいだに猛烈な勢いで納品の算段をしていた。
「あれがこうで……こっちが……。
できないか真剣に検討させていただきます」
「本当か!」
期待に満ちた顔で課長さんが前のめりになってきて、背中が仰け反り気味になった。
「ただ、できるとは断言はできません。
社に持ち帰って検討させてください」
「いやー、期待しているよ!」
課長さんが私の手を取り、ぶんぶん振る。
わざわざここまで来た甲斐があったというものだろう。
「最近は考えもしないですぐ、できないって言う人間が多いだろ?
うちの若いのもさ」
「ええ、まあ」
同意を求められ、眼鏡男子が曖昧に頷く。
「だから検討すると言ってくれただけでも嬉しいよ」
課長さんが目尻を下げて本当に嬉しそうに笑い、頬が熱くなる思いがした。
「私は前から君のことが気に入っていてね。
こうやって会えて、ますます気に入った。
どうだ、我が社に転職してこないか」
「えっと……はあ」
はっきりとは言わず返事を濁す。
転職などまったく考えていないし、ましてや福岡まで来いと言われても困ってしまう。
「課長、お困りじゃないですか。
今の生活を捨てて福岡まで来いなんて無理に決まっています」
「確かにそうか」
がははと豪快に笑う課長さんにあわせて、私も笑っておいた。
帰りは眼鏡の彼が玄関まで見送ってくれた。
「今日は課長がいろいろすみません」
「いえ、私を買って誘ってくれたのは嬉しかったですし」
きっと、社交辞令か冗談だというのはわかっている。
それでもああ言うくらいには評価してくれているのだと胸が熱くなった。
「本音を言えば私もあなたと一緒に働いて……いえ、なんでもありません」
気まずそうに顔を逸らし、彼が大きな手で覆うようにして眼鏡を上げる。
「今日はわざわざ福岡までお越しくださり、ありがとうございました」
小さく咳払いをし、彼が空気を切り替えてきた。
「こちらこそ、ありがとうございました。
ご依頼の件。
ご希望に添えるように頑張りますので期待していてください」
「はい、よろしくお願いします」
頭を下げ、取引先をあとにする。
結局、彼がなにを言いかけたのか聞けずじまいだった。
空港から都市部まで地下鉄で簡単に移動できるのが福岡のいいところだ。
得意先へ向かうためにバスターミナルへ行くと、ひっきりなしにバスがやってきていた。
「ふぉえー、凄いな」
まるでイベント会場へと向かうシャトルバスのようだが、これが通常運行とは。
さすが、バス王国といわれるだけある。
バスに揺られて得意先へと移動する。
さす九――さすが九州なる、九州の男尊女卑を揶揄する言葉があるので若干、舐められたらどうしようと警戒していたが、そんなことはまったくなかった。
――それどころか。
「いやー、なるほどですね!」
先方の課長さんが膝を打つ。
ここではおじさんの課長さんと若い眼鏡男子が商談に応じてくれていた。
……「なるほどですね」?
一瞬、頭の中にクエスチョンマークが浮かんできたが、スルーしておいた。
「お話、よくわかりました。
前向きに検討させていただきます!
早速といってはなんですが来月、大きなイベントがあるんです。
それにあわせて納品、……とか無理ですよね?」
「課長、それはさすがに無茶振りがすぎます」
すぐに同席していた眼鏡男子が止めてきたが、私はそのあいだに猛烈な勢いで納品の算段をしていた。
「あれがこうで……こっちが……。
できないか真剣に検討させていただきます」
「本当か!」
期待に満ちた顔で課長さんが前のめりになってきて、背中が仰け反り気味になった。
「ただ、できるとは断言はできません。
社に持ち帰って検討させてください」
「いやー、期待しているよ!」
課長さんが私の手を取り、ぶんぶん振る。
わざわざここまで来た甲斐があったというものだろう。
「最近は考えもしないですぐ、できないって言う人間が多いだろ?
うちの若いのもさ」
「ええ、まあ」
同意を求められ、眼鏡男子が曖昧に頷く。
「だから検討すると言ってくれただけでも嬉しいよ」
課長さんが目尻を下げて本当に嬉しそうに笑い、頬が熱くなる思いがした。
「私は前から君のことが気に入っていてね。
こうやって会えて、ますます気に入った。
どうだ、我が社に転職してこないか」
「えっと……はあ」
はっきりとは言わず返事を濁す。
転職などまったく考えていないし、ましてや福岡まで来いと言われても困ってしまう。
「課長、お困りじゃないですか。
今の生活を捨てて福岡まで来いなんて無理に決まっています」
「確かにそうか」
がははと豪快に笑う課長さんにあわせて、私も笑っておいた。
帰りは眼鏡の彼が玄関まで見送ってくれた。
「今日は課長がいろいろすみません」
「いえ、私を買って誘ってくれたのは嬉しかったですし」
きっと、社交辞令か冗談だというのはわかっている。
それでもああ言うくらいには評価してくれているのだと胸が熱くなった。
「本音を言えば私もあなたと一緒に働いて……いえ、なんでもありません」
気まずそうに顔を逸らし、彼が大きな手で覆うようにして眼鏡を上げる。
「今日はわざわざ福岡までお越しくださり、ありがとうございました」
小さく咳払いをし、彼が空気を切り替えてきた。
「こちらこそ、ありがとうございました。
ご依頼の件。
ご希望に添えるように頑張りますので期待していてください」
「はい、よろしくお願いします」
頭を下げ、取引先をあとにする。
結局、彼がなにを言いかけたのか聞けずじまいだった。



