いろいろな種類のラーメン屋があったが、福岡といえば豚骨だろと、迷わず豚骨ラーメンのお店に入る。
「ノーマル豚骨ラーメン、と」
食券機のボタンを押しながら、餃子と半チャーハンのセットが目についた。
朝食は結局、空港で買ったプロテインバー一本で済ませたのでお腹が空いている。
しかし、彼氏がそっと耳の傍で囁く。
『オマエ、女のくせにどんだけ食う気?』
ボタンを押しかけた指が止まる。
これはただの幻だ。
いつもそうやって呆れられていたのが染みついて、蘇っただけ。
「アイツはここに、いないんだし」
頭を振って彼を追い出し、勢いよくボタンを押した。
空いている席と言われたので、適当な席に座ってラーメンが出てくるのを待つ。
福岡は屋台文化があるからか内装は簡素で、どこか屋台を思わせた。
「おまたせしましたー」
少しして、私の前にラーメンのどんぶりが置かれ、ぷーんと豚骨特有の獣臭いにおいがした。
彼氏なら「くさい」と鼻を摘まみそうだ。
「いただきます」
けれど、私はかまうことなく箸を取る。
彼氏にしてみればくさいでも、私にとっては食欲をそそるにおいだった。
乳白色のスープに極細麺、それに薄いチャーシューとキクラゲ、ネギがトッピングされていた。
早速、一口啜りかけて箸が止まる。
斜め前のおじさんが届いたどんぶりにゴマを振り入れているのが見えた。
「ゴマを入れるんだ」
テーブルの上を見ると確かにゴマの容器が置いてある。
一旦、箸をどんぶりに突っ込んでおき、なんかいい感じにゴマを振る。
「今度こそいただきます」
箸で麺を持ち上げ、一気にずるずると啜った。
きっと彼氏が見たら顔を顰めるだろうが、いない人は気にしない。
極細麺にスープがよく絡み、口の中に濃厚な豚骨の味が広がる。
そこにゴマが駆け抜けていってなかなかいい。
「おう」
かなりガツンとくる味で、思わず声が漏れていた。
しかし、嫌いなわけではなく、むしろ好きだ。
「餃子とチャーハンでーす」
夢中になって麺を啜っていたら、残りの料理を店員がもってくる。
チャーハンはよく見知ったチャーハンだったが、餃子は一口大だった。
「美味しそう」
タレに浸けた餃子を口に入れる。
よく焼き目のついた皮はパリッとしていた。
噛むと中からじゅわっと肉汁が溢れてくる。
「……昼にこれは、ヤバい」
ニンニクが、という意味ではない。
確かにこれから取引先に向かうのにニンニク臭はマズいが、口臭ケアをすればいいだけだ。
本当にヤバいのは。
「ビールが欲しい」
ラーメン、餃子、ビールとかアイツが「おっさんか!」と腹を抱えて笑うのはわかっているが、でもこの餃子には絶対、ビールでしょ!?
あー、夜ならビールを追加するのに。
……ん?
夜に再びこの組み合わせでビールを頼めばいいのか?
今日は泊まりなんだし、あり寄りの大ありだ。
「あー、でも」
ご機嫌に食べていたら、携帯が通知を告げた。
画面を見ると彼からメッセージが届いている。
私が謝るより前にあっちから送ってくるなんて珍しい。
けれど。
【今日、何時に帰るの?
チキンのトマト煮作ってくれたら昨日のこと、許してやる】
猛烈に食欲が落ちてきて、箸を置いていた。
何時に帰るのって昨日、今日から二泊三日で福岡出張だと確かに伝えたはずだ。
なのになぜ、帰ってくる前提になっているのだろう。
【今、出張で福岡に来てて。
明後日まで帰らない】
メッセージは返したが、既読にはならない。
残りをもそもそと食べてしまい、店を出た。
「ノーマル豚骨ラーメン、と」
食券機のボタンを押しながら、餃子と半チャーハンのセットが目についた。
朝食は結局、空港で買ったプロテインバー一本で済ませたのでお腹が空いている。
しかし、彼氏がそっと耳の傍で囁く。
『オマエ、女のくせにどんだけ食う気?』
ボタンを押しかけた指が止まる。
これはただの幻だ。
いつもそうやって呆れられていたのが染みついて、蘇っただけ。
「アイツはここに、いないんだし」
頭を振って彼を追い出し、勢いよくボタンを押した。
空いている席と言われたので、適当な席に座ってラーメンが出てくるのを待つ。
福岡は屋台文化があるからか内装は簡素で、どこか屋台を思わせた。
「おまたせしましたー」
少しして、私の前にラーメンのどんぶりが置かれ、ぷーんと豚骨特有の獣臭いにおいがした。
彼氏なら「くさい」と鼻を摘まみそうだ。
「いただきます」
けれど、私はかまうことなく箸を取る。
彼氏にしてみればくさいでも、私にとっては食欲をそそるにおいだった。
乳白色のスープに極細麺、それに薄いチャーシューとキクラゲ、ネギがトッピングされていた。
早速、一口啜りかけて箸が止まる。
斜め前のおじさんが届いたどんぶりにゴマを振り入れているのが見えた。
「ゴマを入れるんだ」
テーブルの上を見ると確かにゴマの容器が置いてある。
一旦、箸をどんぶりに突っ込んでおき、なんかいい感じにゴマを振る。
「今度こそいただきます」
箸で麺を持ち上げ、一気にずるずると啜った。
きっと彼氏が見たら顔を顰めるだろうが、いない人は気にしない。
極細麺にスープがよく絡み、口の中に濃厚な豚骨の味が広がる。
そこにゴマが駆け抜けていってなかなかいい。
「おう」
かなりガツンとくる味で、思わず声が漏れていた。
しかし、嫌いなわけではなく、むしろ好きだ。
「餃子とチャーハンでーす」
夢中になって麺を啜っていたら、残りの料理を店員がもってくる。
チャーハンはよく見知ったチャーハンだったが、餃子は一口大だった。
「美味しそう」
タレに浸けた餃子を口に入れる。
よく焼き目のついた皮はパリッとしていた。
噛むと中からじゅわっと肉汁が溢れてくる。
「……昼にこれは、ヤバい」
ニンニクが、という意味ではない。
確かにこれから取引先に向かうのにニンニク臭はマズいが、口臭ケアをすればいいだけだ。
本当にヤバいのは。
「ビールが欲しい」
ラーメン、餃子、ビールとかアイツが「おっさんか!」と腹を抱えて笑うのはわかっているが、でもこの餃子には絶対、ビールでしょ!?
あー、夜ならビールを追加するのに。
……ん?
夜に再びこの組み合わせでビールを頼めばいいのか?
今日は泊まりなんだし、あり寄りの大ありだ。
「あー、でも」
ご機嫌に食べていたら、携帯が通知を告げた。
画面を見ると彼からメッセージが届いている。
私が謝るより前にあっちから送ってくるなんて珍しい。
けれど。
【今日、何時に帰るの?
チキンのトマト煮作ってくれたら昨日のこと、許してやる】
猛烈に食欲が落ちてきて、箸を置いていた。
何時に帰るのって昨日、今日から二泊三日で福岡出張だと確かに伝えたはずだ。
なのになぜ、帰ってくる前提になっているのだろう。
【今、出張で福岡に来てて。
明後日まで帰らない】
メッセージは返したが、既読にはならない。
残りをもそもそと食べてしまい、店を出た。



