学校の呪いを解くために、幼馴染とオカ研部長と三角関係に!?



「……尚樹、本当にオカ研作っちゃった」

帰り道。校門前の横断歩道を渡った直後、涼太がぽろっと零した。

「わ、悪いかよ……」
「悪くはないけどさ、うーん、あの人……」
「ああ、霧崎先輩か。なあ、涼太、あの人のことどう思った……?」
「え、言っていいの?」
「それ、どういう意味だよ」
「少なくとも、いい印象はないかな…………」

たしかにあの霧崎白という先輩は、自分の目的さえ達成できれば後はどうでもいいといった風だった。涼太がいい印象を抱けなかったというのも理解できる。

しかし俺としては、もうここしかないというのが正直な感想だった。たしかに霧崎白は変な部長だが、俺からしたら、暑い中校庭でボールを蹴っているサッカー部員や、土日も返上してコンテストで金を取るために一生懸命な吹奏楽部員だって、彼と並ぶくらいよっぽど変に見える。結局、何を価値あるものとするかは、その人の価値観次第なのではないかと思う。

「涼太は入部しないのか? そうすると、今度はお前が入る部活探さなきゃいけなくなるけど」
「いや、尚樹が入るなら入るよ」

部長への印象は最悪なはずなのに、入部については即答した。つくづく、俺にくっついてくるのが好きな奴だ。彼がここまで俺にべったりだと、俺の存在が彼のやりたいことを何か阻害してしまっていないか、少し不安になってくる。

「なあ無理してないか? 嫌なら無理に入らなくてもいいと思うけど」
「無理してないよ。俺はもともと、尚樹と同じ部活に入れればよかったんだから」

「……お前やりたいこととか無いの?」

涼太は少し目を伏せた。その表情はなんだか寂し気に見えたが、彼が儚げな雰囲気を持っているのはいつものことだ。

「俺のやりたいことは、尚樹のそばにいることだから」
「お、おう……」

また出た。いつもの口説き文句だ。俺はあまり真に受けすぎないよう、軽く流しておく。

「で、オカ研に入るのはいいんだけど、尚樹はあんな人が部長で、本当にいいの?」
「まあ、確かに変わってたけどな……でもほら、なんか仲良くなれそうな感じしなかったか?」

正直、そんなことは全く思っていなかったが、涼太を安心させるために俺はあえて希望的観測を述べる。

「尚樹、すごい、しどろもどろになってたけど」
「だ、だって……、俺、同級生ともまともに喋ったことがないっていうか……、急に先輩はハードルが高いというか……」
「ふうん」

涼太は俺の顔を見て、にやっと笑った。揶揄われているのは分かったが、もう仕方がない。

「まあ、仲良くなれるは言い過ぎたけど、楽しみにはしてるんだ。ほら、部長が帰り際に言ってた……」

実際、俺の頭の中は、部長が帰り際に言っていた呪いのことでいっぱいになっていた。

「……呪いってやつ?」

涼太の耳にも一応届いてはいたらしい。俺は「そう!」と元気よく返事をした。

「明日、部室行ったらさ、さっそく聞いてみようと思うんだ! 涼太も来るよな」
「もちろん」

俺の提案に即答した涼太の口元には、微笑が浮かんでいる。

「……なに笑ってんだ?」
「いやいや、やっと昔の尚樹っぽくて、うれしくて。オカルト話にワクワクしてるときの、いつもの尚樹」

まるで大切なものを見るかのような表情に、なんだか胸の奥がむず痒くなった。

「あの人のことはあんまり好きじゃないけど、そういう意味では、部長に感謝かも」
「いや、俺ははいつも通りだから! こっちからしたら2ヶ月寝てただけだからな!?」
「あはは、まあ、そうだよね」

そう言って笑う涼太を、久しぶりに見た気がした。