学校の呪いを解くために、幼馴染とオカ研部長と三角関係に!?


部長は両手に山ほどのスポーツドリンクやゼリーが入ったコンビニ袋をぶら下げていた。

「はい、優しい彼氏が差し入れを持ってきたよ~」
「あ、ありがとうございます。でもこんなには要らないですよ……微熱ですし」
「そなの? まあまあ、貰えるものは貰っておくものさ」

そう言って、部長は袋をがさっと床に置いた。
ちらりと涼太の方を見て、

「ところで涼太くんは、なにで来たの?」

と、少し驚いた様子で問う。

「部長こそ何しに来たんですか?」
「いやいや、カップルとして、彼氏のお見舞いに来るのは当たり前じゃないかな」
「こんな時間に来るなんて、部長、授業サボってきましたよね」

俺は敵意に満ちた様子で凄む涼太に、お前も人のことを言えないのではないか……と思ったが、余計な火種にならないよう、黙っておいた。

「僕は常に授業をサボっているから、何の問題もないさ」
「逆に問題だらけだが!? う、けほけほ」

思わずツッコミを入れてしまう。頼むから病人にツッコミをさせないでほしい。

「ちょっと、大声出さないで。身体に障るから、尚樹は休んでて」
「うーん、昨日の雨が祟ったねえ」
「……部長まさか雨の中で連れまわしたんじゃないでしょうね」
「情熱的な浜辺デートだったから、寒さも紛れると思ったんだけどねえ」
「情熱的って……」

頼むから、病人の前で喧嘩をするのもやめてほしい。

「まあ、俺は気にしてないから、な? 部長も色々買ってきてくれたみたいだし」
「……尚樹がそう言うなら」

なんとか涼太を落ち着かせ、俺は部長に向き直った。

「部長もあんまり余計なこと言わないでください」
「なんだ、つまらないなあ。怒った涼太君を見るのも僕の楽しみの1つなのに」
「やめてくれ……」

昨日の話を思い出す。俺と涼太が部長のご両親と似ているという話だ。部長がどれだけ涼太から嫌われていてもへらへらと笑っていられるのは、そういう事情も絡んでいるのだろうか。

2人の小競り合いを聞いているうちに、そろそろ母親が帰ってくる時間になった。涼太は、長居するわけにもいかないと言って立ち上がるが、部長はそこを動く気配がない。

「部長、なんで帰らないんですか」
「あ、いやいや。ちょっと尚樹君と話がしたいことがあってね」

涼太はイライラした様子で睨みつけたが、微塵も動くつもりがなさそうな部長を見て、諦めたようにため息をついた。

「3分で帰ってくださいね」
「あ、待って。涼太帰るのか。俺玄関まで行くけど」
「いや、いいよ。尚樹はそのままゆっくり休んで。……でも、3分経ったら部長を追い出してね」

涼太は部長へそう言い残して、名残惜しそうに俺の部屋を去った。

「もしかして僕、涼太君に悪霊だと思われてるのかなあ?」

確かに涼太の部長への態度は酷いものだ。

「さすがにそれはないと思いますけど。……で、話ってなんですか?」
「ああ、昨日僕が貸した服はどうしてるかな? まあ、よかったら君にあげるけど」
「あ、そうだ。あれ、俺の家で洗えないですし、貰えないですよ。大切にしてください。返しますから」

そう言って、俺はクローゼットを開いた。

「あれ」

昨日無造作に放り込んだ衣服がどこにもない。

「待ってくれ、確かにここに入れたんだけど……」

違う引き出しに入れたのかと思って開けたが、どこにも入っていない。

「……うそ」
「んん?」

呆然とする俺の手元に部長の影が落ちた。

「いや、本当に、ここに入れたんだよ。あ、ほら、証拠に、この周りの服湿ってるじゃないですか。ここに入れてたんだよ、間違いなく」
「お母さんが持って行ったとか?」
「いや、昨日は帰ってからずっと部屋にいたし、今日もずっとこんな感じなんで、違うと思うんですけど……」
「……これは神隠しだな」

部長は神隠しなどとのんきに言っているが、俺は、彼の亡き母の大切な形見を失くしてしまったという失態で頭がいっぱいだった。

「……すみません。大切な服なのに」
「ん? ああ、別に。誰も着る人いないし、君が欲しいって言ったらあげるつもりだったから、僕にとっては何の問題もないけれども」
「いや、俺が欲しいって言うわけはないんですけど」
「まあ、しかし、これは僕たちが追い求めていた『呪い』に関係があるかもしれないね」

呪い。ここに来て、ついに俺たちにも不可解な現象が現れた。

「で、でも、俺、結構、雑にしまっちゃったんです。またよく探しておくので、そのことは、また明日部活で話しませんか」
「うんうん。それがいい。君も疲れているだろうから、まあ、あまり気にせずにゆっくりと休みたまえ」

部長はそう言ってポンポンと俺の頭に手を置いた。今日、唯一の偽装カップルっぽさだな、と俺は思った。