夕ご飯は桃パフェとクリームボックスとカフェオレ


 強めの冷房の、ひやりとした空気を味わいながら、私はスーパーの中を歩いていた。生鮮食品、野菜、お肉、お魚……。国内だから何もかもが全く違う、というわけではもちろんない。でも、地元のスーパーとはどこか違った雰囲気がある。その土地の食卓のもの、という雰囲気があって、そして、自分にとって身近ではない食材もあって、なんだか眺めていて楽しい。

 そんなことを考えながら、私はスーパーの中を歩いていく。そんな中で、私の目を惹いたのは、パンコーナーだった。
 メロンパン、チョココロネ、クリームパン……。美味しそうなパンがいくつもあって。
今日は甘いパンばかりに目を向けてしまうから、やっぱりとことん甘いものを食べたい日なのかもしれない。

「ん……?」

 けれども、私の歩みが止まってしまった。

「なんだろう、このパン……?」

見たことのないパンに、引きつけられてしまった。白いクリームがこんもりと山のように乗った四角いパン。上に乗っているクリームは、ホイップクリームやカスタードクリームとも違う質感のクリーム。見たことがないパンだ。
 品名を見て見ると「クリームボックス」と書かれていた。聞き慣れないパンだ。
 スマートフォンを取り出して、少し調べてみる。福島県の郡山市が発祥のパンだそう。
 甘いパンだとは思うけれど、どんな味がするんだろう。私はそのパンをカゴに入れた。

 パンをカゴに入れて、次に向かったのは飲み物コーナー。せっかくだから福島のご当地ドリンク……、桃ジュースとか飲みたいな。
そんな風に考えて、私は、飲み物コーナーの様々な飲み物を前に、視線を動かす。

「ん……?」

 私の目に留まったのは、知らないカフェオレだった。
 茶色と白が基調の、牛乳パックみたいなパッケージ。
スマートフォンで調べてみると、やっぱりこれも、ご当地もの、みたいだ。
 せっかくだし、これも飲んでみよう。そう思って、私はそのカフェオレをカゴに入れて、レジへと向かった。
甘いもののデザートに甘いもの。なんだか不思議だ。でも、楽しみ。

 クリームボックスとカフェオレの会計をする。
視線を動かすと、飲食コーナーが見えて。せっかくだから、私はそこで買ったものを食べることにした。

「いただきます……!」

 飲食スペースに着席して、クリームボックスとカフェオレを目の前にする。一体どんな味がするんだろう。

 私は、クリームボックスの袋を開ける。四角いパンの上に、つやっとしたクリームが、こんもりと、山のように乗っている。私は大きな口を開けて、一気にそれにかぶりついた。
 瞬間、私は大きく目を見開いた。

「美味しい……!」

 ミルク感たっぷりのしっかりとした存在感のあるクリームの味、そしてパンの味が合わさっている。
 咀嚼する度に幸せな感覚になっていく。美味しい。クリームがしっかりしているのに一気に食べられちゃいそう。夢中で食べ進めていた。

 カフェオレも飲んでみよう。牛乳パックの要領でパックを開けて、ストローを差し込んで、吸い上げる。

「甘い……! 美味しい……!」

 飲んだ瞬間、口の中に広がったのは、ミルキーでコクがある強めの甘さ。コーヒーの苦み、というよりはミルキーさと甘さががっつり来る。こちらも甘くて美味しい。

 甘いクリームボックスと甘いカフェオレを交互に食べ、飲んでいく。
 さっきの桃パフェに重ねるようにして、身体が甘いものでいっぱいになっていく。出張の忙しさも疲れも吹き飛んでいく……。

「いいなあ……。こうやって、美味しいもの、食べるの……」

 地元では食べられない甘いものを堪能しながら、つい、そんな言葉が漏れてしまう。

 この現代、家の中にいたって、スマートフォンのボタン一つで、日本全国の美味しいものが食べられる。日本全国、だけじゃない。  遠く離れた地球の裏側の美味しいものだって食べられる。
 それもすごく楽しいことで、私もよくやっている。
 でも、やっぱり、その土地に出向いて、その土地の名物や美味しいものを食べることって、すごく贅沢で、幸せなことだと思う。
 そんなことを考えながら、私は、クリームボックスとカフェオレを一瞬で食べ切ってしまった。

「ごちそうさまでした……!」

 スーパーを出る頃には、陽が随分と落ちていて、穏やかな空気になっていた。

「お土産、何買おうかな……」

 ホテルの近くのお土産屋さん、そこそこ遅くまで空いていた気がする。そこで、同僚と先輩、そして自分の分のお土産を買っていこう。もちろん、美味しいもの。
そんなことを考えながら、私はホテルまでの道のりを歩いていった。