「うう……、疲れた……」
夕方。むわっと、じめっとした、熱気の中を私は歩いていた。一日中快晴であり、夕方になってもまだぎらついている太陽。そして盆地の熱が私の身体に当たる。この世界が漫画だとすれば、私はデフォルメされながら、魂が抜けかけながらふらふらへろへろと歩いているような、そんな姿になっていると思う。
それ以上に、今の私には、とてつもない疲労感と空腹感が襲い掛かっていた。今日一日のことを頭の中で巡らせただけでも、その時の体感がリアルタイムで感じられて、さらに疲労感を味わってしまうような忙しさで。人生の中で一、二を争うくらいの忙しさだったかもしれない。
お昼ご飯もあまりの忙しさで、本当に軽く食べた記憶しかなくて、仕事終わりのことを考える余裕は一切なかった。
「でも、今日はこれで……」
けれども、今日はこれで終わり。これからがメインディッシュ。福島の美味しいご飯を食べに……。
「甘いもの、食べたい……」
自分でも、出て来てしまった言葉にびっくりしてしまった。
夕ご飯、のことを考えていたのに、私の口から出てきたのはそんな言葉だった。口に出してしまえば、その欲望――甘いもの食べたい、という欲が、むくむくと膨らんでしまう。
今は時間にして、夕ご飯の時間だ。おやつの時間はとっくに過ぎてしまっている。
けれども、私の頭の中を満たしていたのは、甘いもの、だった。
無性に甘いものが食べたい。気を抜けば、すぐ近くのコンビニに行って、冷たいアイスやスイーツ、フラッペに手を伸ばしてしまうくらいには、甘いものを摂取したい欲が溢れている。
ご飯の後のデザートに、とも考えたけれど、それともまた違う。今は、とにかく、頭から爪先まで満たされるように甘いものが食べたくなっていた。そんな感覚。
どうしようか。一瞬悩んだ私の頭の中に過ったのは、夕ご飯を甘いものにしてしまおう、という考えだった。
夕ご飯を甘いものにする。学生時代とかであれば、怒られていたかもしれない。でも、今日だけ特別、今日、すっごく頑張ったし……。
「自分へのご褒美、として、夕ご飯を甘いものにしちゃおう……!」
私は小さな声で宣誓する。そう、今日、すっごく頑張ったから、夕ご飯は甘いもの。そうしよう。
そう、決めた瞬間、私の中に、とてつもない、高揚感のような、ワクワクした感覚が過っていた。
決めたものの、私の中に一つ問題が浮かんでいた。
「……。福島の、甘いもの……」
ここに来る前や、新幹線に乗っていた時に私がリサーチしていたものは主にしょぱいものやおかず系がメインだった。その時は、こってりしょっぱい、でお腹をいっぱいにしたい気持ちの方が大きくて。
だから、甘いもの、に関しては完全にリサーチ不足だった。今からスマートフォンで検索したら、誘惑でいっぱい、になってしまう。
でも、せっかくだったら、福島の有名な甘いものが食べたい……。何か、ないかな……。
少し歩いて、視線を動かして、何かヒントはないか、を探していた時だった。
「あ……」
私の目に留まったのは、一枚のポスター。桃のイラストの下に、桃にまつわるキャンペーンを行っている、という文章が記されていた。
「そうだ、桃……!」
福島の桃、すごく有名だし、今が旬……!
噛むと口の中いっぱいに、濃い果汁と、ふわあっ!とした桃の香りが広がる生の桃……。
そんなことを考えた瞬間、私の頭が桃一色で埋め尽くされた。
「食べたい……!」
その勢いに任せて私はスマートフォンを取り出し、検索した。そこには何の迷いもなかった。もう、私の頭には、桃を食べることしかなかった。
「美味しそう~!」
調べれば調べるほど、桃のことで頭がいっぱいになる。
ちょうど今の季節だから桃を使ったパフェや、桃を使ったケーキ、スイーツを提供しているお店が、今いる場所から行ける範囲にもあった。
「やっぱり、桃パフェが食べたいな……!」
いろいろと見ていった中で、私が一番魅力的に思ったのは桃パフェだった。
ふわふわとろけるクリームと、みずみずしい桃のマリアージュ……。想像するだけで涎が出ちゃいそう……。
「よし、ここにしよう……!」
今の体力と、食べたい気持ちに合わせて、ここから一番近くにある、福島産の桃を使った桃パフェを提供する店へと向かうことにした。
「待っててね……! 桃パフェ……!」
私は背を伸ばして歩き始めた。
先ほど感じていた熱気が気にならないくらいに、私の頭の中は、ジューシーな福島の桃のことで満たされていた。
夕方。むわっと、じめっとした、熱気の中を私は歩いていた。一日中快晴であり、夕方になってもまだぎらついている太陽。そして盆地の熱が私の身体に当たる。この世界が漫画だとすれば、私はデフォルメされながら、魂が抜けかけながらふらふらへろへろと歩いているような、そんな姿になっていると思う。
それ以上に、今の私には、とてつもない疲労感と空腹感が襲い掛かっていた。今日一日のことを頭の中で巡らせただけでも、その時の体感がリアルタイムで感じられて、さらに疲労感を味わってしまうような忙しさで。人生の中で一、二を争うくらいの忙しさだったかもしれない。
お昼ご飯もあまりの忙しさで、本当に軽く食べた記憶しかなくて、仕事終わりのことを考える余裕は一切なかった。
「でも、今日はこれで……」
けれども、今日はこれで終わり。これからがメインディッシュ。福島の美味しいご飯を食べに……。
「甘いもの、食べたい……」
自分でも、出て来てしまった言葉にびっくりしてしまった。
夕ご飯、のことを考えていたのに、私の口から出てきたのはそんな言葉だった。口に出してしまえば、その欲望――甘いもの食べたい、という欲が、むくむくと膨らんでしまう。
今は時間にして、夕ご飯の時間だ。おやつの時間はとっくに過ぎてしまっている。
けれども、私の頭の中を満たしていたのは、甘いもの、だった。
無性に甘いものが食べたい。気を抜けば、すぐ近くのコンビニに行って、冷たいアイスやスイーツ、フラッペに手を伸ばしてしまうくらいには、甘いものを摂取したい欲が溢れている。
ご飯の後のデザートに、とも考えたけれど、それともまた違う。今は、とにかく、頭から爪先まで満たされるように甘いものが食べたくなっていた。そんな感覚。
どうしようか。一瞬悩んだ私の頭の中に過ったのは、夕ご飯を甘いものにしてしまおう、という考えだった。
夕ご飯を甘いものにする。学生時代とかであれば、怒られていたかもしれない。でも、今日だけ特別、今日、すっごく頑張ったし……。
「自分へのご褒美、として、夕ご飯を甘いものにしちゃおう……!」
私は小さな声で宣誓する。そう、今日、すっごく頑張ったから、夕ご飯は甘いもの。そうしよう。
そう、決めた瞬間、私の中に、とてつもない、高揚感のような、ワクワクした感覚が過っていた。
決めたものの、私の中に一つ問題が浮かんでいた。
「……。福島の、甘いもの……」
ここに来る前や、新幹線に乗っていた時に私がリサーチしていたものは主にしょぱいものやおかず系がメインだった。その時は、こってりしょっぱい、でお腹をいっぱいにしたい気持ちの方が大きくて。
だから、甘いもの、に関しては完全にリサーチ不足だった。今からスマートフォンで検索したら、誘惑でいっぱい、になってしまう。
でも、せっかくだったら、福島の有名な甘いものが食べたい……。何か、ないかな……。
少し歩いて、視線を動かして、何かヒントはないか、を探していた時だった。
「あ……」
私の目に留まったのは、一枚のポスター。桃のイラストの下に、桃にまつわるキャンペーンを行っている、という文章が記されていた。
「そうだ、桃……!」
福島の桃、すごく有名だし、今が旬……!
噛むと口の中いっぱいに、濃い果汁と、ふわあっ!とした桃の香りが広がる生の桃……。
そんなことを考えた瞬間、私の頭が桃一色で埋め尽くされた。
「食べたい……!」
その勢いに任せて私はスマートフォンを取り出し、検索した。そこには何の迷いもなかった。もう、私の頭には、桃を食べることしかなかった。
「美味しそう~!」
調べれば調べるほど、桃のことで頭がいっぱいになる。
ちょうど今の季節だから桃を使ったパフェや、桃を使ったケーキ、スイーツを提供しているお店が、今いる場所から行ける範囲にもあった。
「やっぱり、桃パフェが食べたいな……!」
いろいろと見ていった中で、私が一番魅力的に思ったのは桃パフェだった。
ふわふわとろけるクリームと、みずみずしい桃のマリアージュ……。想像するだけで涎が出ちゃいそう……。
「よし、ここにしよう……!」
今の体力と、食べたい気持ちに合わせて、ここから一番近くにある、福島産の桃を使った桃パフェを提供する店へと向かうことにした。
「待っててね……! 桃パフェ……!」
私は背を伸ばして歩き始めた。
先ほど感じていた熱気が気にならないくらいに、私の頭の中は、ジューシーな福島の桃のことで満たされていた。
