御馳走を食べていたら自分が食べられそうになった

私が、フランスパンを食べおえたタイミングで、

「つぎのメニューになります」

といい店員が白いお皿の目のまえに置いた。


直径30㎝の赤いお皿に、狐色のフライが小山のようにつみかさねられている。

山の高さは、350mlの缶ほどの高さがある。

「揚げたてです。熱いので火傷しないように気をつけください」

といいながら、店員はフライをのせた皿の横に、霜のはった大ジョッキをどんッと置いた。

フライの横には、親の仇だ、と叫びながらマヨネーズをしぼりだしたほどの量の白い山もある。


割りばしをわり、フライをつまみあげた。

フライは、長方形で、ちょうどコンピューターのマウスぐらいの大きさ。

よく実った小麦畑のように黄金色に衣は揚げられており、つんつんと尖っている。

ぱりッとした衣に歯をつきたてる。

破られた衣のあいだから、白い湯気が、いっきに噴出され口蓋にとどく。

温かさを口のなかに圧縮しながら、フライをかじりきる。

フライのなかみは、柔らかく赤い。

サーモンのフライだ。


それもノルウェーなどサーモンピンクの身に白い脂をたくわえたサーモンが揚げられている。

揚げた油にまけないほどに湿潤にとんだサーモンの旨味が胃のなかに遡上していく。

唇をつやつやにするほどのサーモンの脂。

サーモンの中心部は、ほんのすこしレアで、温かいなかにフレッシュな旨味を堪能することができる。

サーモンの脂だけでも十二分に美味いのに、そこにマヨネーズをたっぷりとつけ、大きな口をあけ、がぶり、ごくりと飲みこみ、大ジョッキの取っ手をにぎりこみ、背骨をそらせ、胸をはり、ビールを胃に流しこむ。

ビールの冷気と一緒に体のすみずみにまで幸せが届けられていく。

体の先端から力がぬけ、ふにゃりと溶けてしまいそうになる。

サーモンフライの小山を食べきるあいだに、ビールのおかわりをいただき、お腹はふくれきったのかと思いきや、まだ腹六分目ぐらいで余裕がある。