昼休みが終わると、拓己はまたどこかへ行ってしまった。
なんとかお弁当を全部食べて、いつもよりパンパンのお腹で教室まで一緒に戻って、チャイムが鳴るギリギリまでずっと、俺の前の席に居たのに。
拓己は椅子に触れられなくて、引くことができないから机の上に座ろうとして、けれど机すらも透けるから、その場に座り始めて。
椅子と机の間に挟まった状態でこちらを見てくるから、吹き出しそうになって慌てて堪えた。
それなのに、その後もじっと、わざとこちらをずっと見てきて、震える腹筋に気絶するかと思った。
明日は絶対筋肉痛だと思う。
確信犯なイタズラに許せないと思って、けれど居なくなるとそれはそれでなんか、心がスカスカになる。
目の前の席と一緒で、空っぽの、ちょっと寒い感じ。
担任の先生も、各教科の先生も、周りのクラスメイトも、誰も拓己のことを話題にしない。
もう忘れてしまったかのように、ただの欠席であるかのように。
それが無性にモヤモヤとした。
俺たちはまだ高一で、入学したばかりで、それほどお互いを知らなくて、そこまで仲良くもないけれど。
もう少し皆話題にしたっていいのに。
もう少し皆、心配してくれたっていいのに。
自分のことじゃないけれど、拓己は家族みたいなもので、兄弟みたいなもので、俺の半身みたいなものてもあるから、ちょっとモヤモヤとする。
皆俺ほど拓己のことを知らないからだと分かっている。
分かっているけれど、薄情に感じた。
尚のこと俺が気にかけてやらないと、とも思う。
口が悪くて、イジワルで、冷たい感じのする奴だけれど、ちゃんと俺の話を聞いてくれて、なんだかんだ傍に居て、世話を焼いてくれるまあまあ良い奴なのだ。
どこかへ行ってしまったオバケ状態の拓己と、今病室で、きっと眠っているであろう拓己のことを考える。
そしたら、集中しろーって先生に名指しで当てられて、何も聞いていなくて、問題にも全く答えられなくて、皆に笑われた。
いつもなら拓己が教科書を立てて、指を差して教えてくれるのに。
いつもならその後、拓己が「バーカ」って、口パクで煽ってきて、俺の焦りや緊張を拭ってくれるのに。
今日の俺はただ顔を熱くして、身を縮めて座るだけだった。
拓己が居ないと、いろんなものが空っぽのスカスカになる。
「たっ、げほ、ごほっ」
「滝藤(たきとう)君、大丈夫?」
「う、うん。ごめん大丈夫、ありがとう」
放課後、拓己がなぜか窓から教室内へ帰ってきて、驚きのあまり名前を呼びかけて、慌てて咳で誤魔化した。
そうしたらクラスメイトが心配をしてくれて、若干心苦しさに襲われる。
騙してごめん、本当にごめん。
拓己が全部悪いから、後で拓己を叱っておくから。
そう思うけれど、オバケの拓己には触れられないし、病院に居る拓己には、傍に立つことすら叶うのか分からなかった。
また胃の辺りがぞっとして、目の前に立つ拓己を見る。
拓己は、行くぞ、みたいに顎で教室の扉を示していて、ここじゃ何も言えないから、仕方なく従う。
「また明日、滝藤君」
「……うん、また明日」
別れの挨拶。
いつもはそこに、長谷川君って言葉も付いてくるのに。
目の前に居るのに呼ばれなかった拓己を思って、また胃の辺りがモヤモヤとした。
誰も悪くないけれど、誰かのせいにして、誰かを責めたくなるような気分だった。
でもそれってとても最悪で、胃の辺りのモヤモヤが濃くなった。
なんとかお弁当を全部食べて、いつもよりパンパンのお腹で教室まで一緒に戻って、チャイムが鳴るギリギリまでずっと、俺の前の席に居たのに。
拓己は椅子に触れられなくて、引くことができないから机の上に座ろうとして、けれど机すらも透けるから、その場に座り始めて。
椅子と机の間に挟まった状態でこちらを見てくるから、吹き出しそうになって慌てて堪えた。
それなのに、その後もじっと、わざとこちらをずっと見てきて、震える腹筋に気絶するかと思った。
明日は絶対筋肉痛だと思う。
確信犯なイタズラに許せないと思って、けれど居なくなるとそれはそれでなんか、心がスカスカになる。
目の前の席と一緒で、空っぽの、ちょっと寒い感じ。
担任の先生も、各教科の先生も、周りのクラスメイトも、誰も拓己のことを話題にしない。
もう忘れてしまったかのように、ただの欠席であるかのように。
それが無性にモヤモヤとした。
俺たちはまだ高一で、入学したばかりで、それほどお互いを知らなくて、そこまで仲良くもないけれど。
もう少し皆話題にしたっていいのに。
もう少し皆、心配してくれたっていいのに。
自分のことじゃないけれど、拓己は家族みたいなもので、兄弟みたいなもので、俺の半身みたいなものてもあるから、ちょっとモヤモヤとする。
皆俺ほど拓己のことを知らないからだと分かっている。
分かっているけれど、薄情に感じた。
尚のこと俺が気にかけてやらないと、とも思う。
口が悪くて、イジワルで、冷たい感じのする奴だけれど、ちゃんと俺の話を聞いてくれて、なんだかんだ傍に居て、世話を焼いてくれるまあまあ良い奴なのだ。
どこかへ行ってしまったオバケ状態の拓己と、今病室で、きっと眠っているであろう拓己のことを考える。
そしたら、集中しろーって先生に名指しで当てられて、何も聞いていなくて、問題にも全く答えられなくて、皆に笑われた。
いつもなら拓己が教科書を立てて、指を差して教えてくれるのに。
いつもならその後、拓己が「バーカ」って、口パクで煽ってきて、俺の焦りや緊張を拭ってくれるのに。
今日の俺はただ顔を熱くして、身を縮めて座るだけだった。
拓己が居ないと、いろんなものが空っぽのスカスカになる。
「たっ、げほ、ごほっ」
「滝藤(たきとう)君、大丈夫?」
「う、うん。ごめん大丈夫、ありがとう」
放課後、拓己がなぜか窓から教室内へ帰ってきて、驚きのあまり名前を呼びかけて、慌てて咳で誤魔化した。
そうしたらクラスメイトが心配をしてくれて、若干心苦しさに襲われる。
騙してごめん、本当にごめん。
拓己が全部悪いから、後で拓己を叱っておくから。
そう思うけれど、オバケの拓己には触れられないし、病院に居る拓己には、傍に立つことすら叶うのか分からなかった。
また胃の辺りがぞっとして、目の前に立つ拓己を見る。
拓己は、行くぞ、みたいに顎で教室の扉を示していて、ここじゃ何も言えないから、仕方なく従う。
「また明日、滝藤君」
「……うん、また明日」
別れの挨拶。
いつもはそこに、長谷川君って言葉も付いてくるのに。
目の前に居るのに呼ばれなかった拓己を思って、また胃の辺りがモヤモヤとした。
誰も悪くないけれど、誰かのせいにして、誰かを責めたくなるような気分だった。
でもそれってとても最悪で、胃の辺りのモヤモヤが濃くなった。



