愛を伝えると退学になる男子校だけど、いつメンに毎日迫られている(気がする)。

 ついに文化祭で行われる、劇の練習が始まった。
 とは言っても、まだ一番セリフが多い俺が一人、台本を読む練習をするだけ。初歩の初歩、よちよち歩きの段階だ。

 「とりあえず読んでみよっか」と、舞台監督の生徒から言われて台本のセリフを読んでみると、俺が一言発する度に周りが不自然に口元を手で隠し、必死に何かを噛み殺している。
 むむ、とさらに気合を入れて読み進めると、しまいには「ちょ待って……!無理限界」と、みんな笑いながら崩れ落ちる始末だった。

「ダメだ、まめにどんなイケメンセリフ言わせてもかわいいでしかねぇ」
「まめ最高。天才子役すぎ」

 「いやぁ、なんか才能を隠しきれなくてごめんね〜」と、俺もみんなに合わせておどけてみせる。
 うん、とりあえずラブコメの”コメ”の部分はいけることがわかったので、よしとするか。俺は思いがけず手応えを感じて、心の中で小さくガッツポーズをした。男子校においては、”おもしれー男”は高ポイントなのだ。何なら、ルックスより重要と言っても過言ではない。
 それに、久しぶりにクラスメイトと"俺がかわいい件"でキャッキャした気がする。前の雰囲気が戻ったようで懐かしい。
 ひとしきり笑ったクラスメイトの一人が、のむを指さした。

「あとさのむ、それやめてくんない?エグいって。腹筋壊れるって!」

 俺が台本を読んでいる最中、のむは長い足を斜めに組んで、机に片肘を付き、主演女優よろしく顎に指先を添わせて現場に居座っている。

「役作りの最中なんですけど。邪魔しないでくださらない?」
「おまえ今日まだ出番ないから来なくていいのに、意識高すぎるだろ」
「あ、そこのスタッフ。ミネラルウォーターいただける?常温で」
「うざっ!」

 呼ばれてもないのにノリノリで現場入りしているのむを見て、みんながゲラゲラ笑う。
 ないはずの長い髪をかき上げながら、高飛車な態度で「続けて」と指先を前に突き出す。
 指先まで美しい”イケメン”かつ”おもしれー男”の姿に、俺もへへっと笑い、思った以上に楽しい練習のスタートを切ることができた。