愛を伝えると退学になる男子校だけど、いつメンに毎日迫られている(気がする)。

 寒い冬が少しだけ緩み、通学路を歩いていると少し暑くなって、コートの前を開けた。

「まめ。おはよ」
「はよ」

 先を歩く俺に、のぐとのむが追いつく。2人が俺の両側に立ち、腕がぶつかりそうなほどぴったりとくっついてくる。

「おはよ。あらまぁ。本日も、パーソナルスペースの概念をどこかに落としてこられたようで……」
「ぱーそなるすぺーす……?」
「心配だよ、春から専門学校生なのに」

 のぐものむも、受験組より一足早く専門学校に進むことが決まった。
 俺と糸杉は、卒業式のあとに合格発表がある。やることはやったので、あとは、待つのみだ。

 2月に入ると3年生は自由登校になったのに、クラスメイトはみんな、毎日学校に来た。学校に来て、自習して、たまにバカ騒ぎして、「また明日」と帰っていく。ある日、生徒の一人が「よっちから連絡が来た」と言っているのが聞こえた。
 「なぁ!のぐお前、よっちと連絡取ってたんだって?言えよー」と言われているのを見て、あの日、カフェでよっちが「……そこは”内緒”ってことで」と言っていたのを思い出した。けど、何も言わなかった。

 あの日からも、のむとの距離は変わらない。

 受験の前期日程が終わった翌日、俺達は4人で1日遊び尽くした。やりたいことを1人1つずつ言って、それを全部やって、食べたいものを食べて、呼吸困難になるほど笑った。糸杉が「こんなに楽しいの、初めてかも」と誰にともなく呟いたのを聞いて、ちょっとだけ泣きそうになった。その日は、すっかり夜も更けてから「また明日」と別れた。

 たくさんの「また明日」を繰り返して、今日がある。

「おいー。まめ、今日も髪跳ねてんじゃん」

 のぐが呆れたように言うと、のむが、俺の後頭部に触れながら「最後まで、ブレねぇなぁ」と笑う。

「着いたら直すぞ」
「うぅ、お願いします」
「のむ、今日も持ってきてるか?まめ専用ワックス」
「当たり前」

 のむが俺を見て微笑む。俺は、のむのこの表情が、堪らなく好きだ。

「はよ」

 後ろで声がする。いつメンの声は振り返らなくても、わかる。

「おはよ」

 糸杉が、苦笑いをして後ろに立っている。

「お前らデカくて邪魔」

 そう言いながら、2人を押し退けて俺の横に並ぶ。

「まめ。行こうぜ」
「デカい奴にも人権ありますー」
「そうだそうだー!」

 のぐのむが、抗議の声を上げながら俺と糸杉の後ろをついてくる。
 学校が見えてきた。
 俺達は、「卒業式」の看板が掲げられた校門に向かって、歩いていった。