愛を伝えると退学になる男子校だけど、いつメンに毎日迫られている(気がする)。

 夏みたいな秋が過ぎて、本当の秋がちょっとだけ来たかと思ったら、あっという間に冬みたいな空気に変わった。
 マフラーがないと登下校は結構冷え込むけれど、通学の電車内は、暑い。ちょうどいい、がなかなか難しい冬の始まりだ。

 進路もいよいよ決断する時期になり、放課後の講習や模試の回数も増えた。
 糸杉は本格的に忙しくなって、学校の講習と塾をはしごしたり、とんでもない数の模試を受けたりしている。放課後一緒に過ごす日は、ほとんどなくなった。
 あまりにも多忙を極め限界が来ると、たまに無言で俺に抱きついて、頭を撫でてくる。
 糸杉と俺は相思相愛なので、「お疲れぇ」とハグで返す。

 のぐとのむは、専門学校に願書を出し、今月に面接が控えているらしい。仲良くオープンキャンパスを何ヶ所か回り、なんと同じ調理の学校を志望している。「俺が先にここに決めた、真似したのはお前だ」と小競り合いしているのを、俺はニコニコ眺めていた。
 「なぁまめ、面接前に見たいから、かわいいまめの写真を待ち受けにしたい」とのぐが言うので、満面の笑顔と共にダブルピースで応じると、のむが横入りしてきた。俺の頭の上に顎を乗せてピースの上にピースを作ったので、トーテムポールがピースしているみたいな変な写真になった。「面接落ちたらのむのせいだ」とのぐは言っていたけど、面接はきっと、うまくいく。

 のむは、俺に触れないよう意識するのは、やめたみたいだ。
 頭に顎が乗ったまま口をパカパカ開けたり閉じたりされ「いだだだだ」と痛がる俺を見て、「ごめんごめん」と笑いながら、今度は頬を両手で挟んで、タコみたいな口にされた。糸杉が呆れた顔で「"キューアグ"が過ぎるだろ」と言うので、後でこっそりAIに意味を聞いて、ものすごく照れた。
 もう、のむに触られるのがうれしいって、認めることにした。のむがどうして俺にだけするのかは、聞きたいけど、聞かない。

 そして、俺。学校で講習と月1の模試を受けながら、大学進学のため、受験勉強に励んでいる。
 最近になって、目指したいものが見えてきた気がする。

「やっと昼だ〜。腹減って死ぬ」
「絶対足りねぇ。ちょっと購買行ってくるわ」
「のむ、俺クリームパン2個あるよ。食べる?」
「え、神。てかなんで2個?」
「今日講習あるから。放課後用だけど、あげる」
「さんきゅ。あとで一緒に購買行こうぜ。まめの分何か買って返す」
「やったー!行こ〜」
「まめはパン以外も食べなよ。ほら、口開けろ」

 俺達は、相変わらず一緒にいる。
 みんな、ずっと一緒にはいられないって、わかってる。だから、同じ時間を大切にする。
 口を開けると、糸杉が唐揚げを口に入れてくれて、幸せを噛み締めた。

 SNSの件が解決して、俺達は、あれから呼び出されることはなかった。顔色は悪いけど頼りになる俺達の担任。ヤミケンには、頭が上がらない。
 のぐと糸杉に事の顛末を話したら、のぐは驚きながらも解決を喜んでくれた。「でもあいつ苦手」とは言っていたけど。
 糸杉は「よかったな」と噛み締めるように、一言だけ言った。2人とも、SNSに親友として登場していたことは特に気にしていないらしい。
 何より嬉しかったのは、俺とのむが犯人の顔を見ない選択をしたのを、2人とも支持してくれたことだった。

 これで全て元通り。にはならなかった。
 俺が変わったから。

 俺が、のむに恋をしているから。