愛を伝えると退学になる男子校だけど、いつメンに毎日迫られている(気がする)。

 その日から、前みたいにのむの目を見られなくなった。

 変に思われないよう、焦点(しょうてん)を合わせずに、目を見ているフリを続けた。本番までの練習は、色々考えないように努めて、何とか乗り切っている。
 ……のむとも、表面上はいつも通りやれていると思う。

 でも、美術室で2人きりになるのは怖かった。廊下で言われたことや噂のことではなく、自分がまた練習の時のように"変"になるのが、怖かった。

 「練習でみんなに迷惑かけちゃったから、"キュン"の特訓は辞めようと思う」

 そう伝えたら、のむは「わかった」とだけ言った。それ以上何も言わなかった。

 そんなわけで、糸杉とのぐと、昼休みを前のようにだらだらと過ごしている。

「……俺今、母親と妹が文化祭に来そうなのを全力で阻止してる」
「え、いいじゃん」

俺が机にだらーんと身体を預けながら呑気(のんき)に返すと、のぐが顔をしかめながら叫んだ。

「嫌に決まってんだろ!……女装した同級生に言い寄って振られるとこを家族に見られるって、何の地獄だよ」
「俺んとこも弟が友達連れて来るらしいから、劇は必ず観るように言っとくわ」
「糸杉、お前マジやめろよ?」

 のぐが糸杉に向かって指を差しながら抗議していると、教室のドアの方から「杉田」と声がした。

「ーーいいか?」
「あ、今行く」

 呼び出しがかかって、糸杉も行ってしまった。文化祭が間近に迫り、委員はやることが盛りだくさんだ。
 一方俺とのぐは、あとはやるのみ!という感じなので、お昼までバタバタすることはなく、のんびり過ごしている。

「文化祭もうすぐだなぁ〜」
「ねー」

 俺とのぐ2人きりになり、そう呟くとしばらく沈黙が流れる。

「まめー……」
「んー?」

 少し間があって、のぐが口を開いた。

「……気楽にな。考えすぎんなよ」
「んー」

 だらーんとしたまま生返事をすると、唐突に「よーしよしよしよし」と頭も背中も、もみくちゃにされ、「ちょい!やめんか〜い」と抵抗してみせる。

「はぁ〜〜まめ触ってっと癒される〜」
「主演俳優になにすんだっ」

 わはは、と笑いながら気付いてしまった。
 ーー俺、のぐにはこういうことされても平気だ。たぶん、糸杉にも。