放課後、今日も台本を読む練習があった。
昨日の練習で俺の手応えが良かったので、今度はメインキャスト3人と監督、助監督で台本読み合わせをする。というわけで、今日はのむの出番もあるし、のぐもいる。
学園ものなので、俺とのぐの衣装は制服のままでいくそうだ。というわけで、今、衣装係がのむのサイズの制服を探しているらしい。
「のむの女装ミリも興味ねー」と、のぐがのむをからかう。
「俺も役とはいえお前に言い寄られるかと思うと、鳥肌立つんだけど。……あと、俺は勝算あるから」
「何のだよ」
「女優・野村としての勝算」
「だっる」
のぐが顔をしかめると、のむがわははと笑った。そんな2人の喧嘩漫才のようなやりとりを、ニコニコしながら見守る。
昨日は緊張したけど楽しかったし、今日は2人も一緒だからますます楽しい。
「今日はのぐのむと練習できるから、うれしいなぁ」
自分のセリフに線を引いた台本を両手で握りしめ、満面の笑みで2人を見上げると、『俺も』と声がハモる。
「は?」
「真似すんな」
のぐのむが小競り合いをしていると、今日も平和だなぁとうれしくなる。
そうこうしているうちに、「お前ら始めんぞ」と監督から声がかかり、練習がスタートした。
今回の脚本も担当した監督から、3人の掛け合いに関して「問題なし」の太鼓判をもらった。
「基本的にそんな感じでオッケー」と言われ、ほっと胸をなで下ろす。
「のむの裏声が、思ったよりいい」
「あざす」
「のぐは本番も、その調子でイケ散らかしてもらって」
「へーい」
「まめは……笑いも取りつつ、決めるとこは決めてこうな」
「へへ。お任せください。役作りの特訓中なんで」
得意げに胸を張ると、監督も助監督も「特訓?」と首を傾げる。
「”キュン”の特訓を、少しばかり」
「”キュン”の特訓て!何すんの?」
「まぁ俺の周りには、幸いイケメンがおりますのでね」
得意げにのぐとのむの肩を、ポンポンと叩いた。
「……彼らから、どんどん盗んでやろうと思ってるわけですよ」
「そういうことか」
のむに、個人的に”キュン”を教えてもらっている、とは言えずに、濁した。
今日の昼休みだって、膝で押さえこまれたままサンドイッチを食べる俺をデッサンされていたなんて、言えない。言えるわけがない。
特訓中とはいえ、のむにはやられっぱなしで、まだ何一つ”キュン”を会得していないのだ。
「でもさ、お前ら気を付けろよ」
助監督が言う。
「生徒会からオッケーもらったとはいえ、俺らラブストーリーやんだからさ。あんま目立ってイチャイチャしたら、目付けられるぜ」
「イ、イチャイチャ?!」と思わず声が裏返る。
「してんだろいつも。今さら何言ってんだ」
「えーそれは無理~~」と、のぐが大げさに言って、俺にすがりつく。
「俺達、まめよしよし界隈だもん。まめをよしよししないと死んじゃう~」
「わかる。わかるよ?まめはかわいい。愛でたいに決まってる!でも、よっちのことで俺らかなり食らったじゃん。俺、やっぱ距離感について考えちまうよ。もうクラスの奴の停学も退学も、嫌だからさ……」
確かに、クラスメイトが俺を愛でるのを控えるようになってから、いつメンの俺への態度が目立っているのは確かだ。
俺でさえ「こんなによしよしされてたっけ」のレベルなのだから、無理もない。
「あのー……よしよしされる側が言うのもなんだけど、心配してくれてありがとね」
「まめ~~」
助監督が、少し潤んだ目で俺を見る。
「俺、役作り頑張るよ。劇を観にきたみんなをキュンキュンさせる。そんで、文化祭を成功させてみんなでわいわいしたい」
俺はぎゅっと口を引き結んで、力強く頷いた。と、途端に自信がなくなり、へにょっとしてしまう。
「ーーって、まだ役作りは全然で、これからだけど。頑張るから……よろしくお願いします」
「おう」
「ほどほどに頑張ろー」
監督、助監督が頷き、のぐも、腕組みをして笑っている。
のむの方を見ると、目が合った。
俺がこくんと頷いてみせると、のむはにっと笑い、高速でウィンクをひとつして、何食わぬ顔でみんなの方に向き直った。すっかり油断していたところに、突然ハートの矢がプスッと刺さったみたいだった。
くっそーーーー!俺、絶対この役やり切ってやる。
どんな”キュン”だって受け止めてみせるからな!
昨日の練習で俺の手応えが良かったので、今度はメインキャスト3人と監督、助監督で台本読み合わせをする。というわけで、今日はのむの出番もあるし、のぐもいる。
学園ものなので、俺とのぐの衣装は制服のままでいくそうだ。というわけで、今、衣装係がのむのサイズの制服を探しているらしい。
「のむの女装ミリも興味ねー」と、のぐがのむをからかう。
「俺も役とはいえお前に言い寄られるかと思うと、鳥肌立つんだけど。……あと、俺は勝算あるから」
「何のだよ」
「女優・野村としての勝算」
「だっる」
のぐが顔をしかめると、のむがわははと笑った。そんな2人の喧嘩漫才のようなやりとりを、ニコニコしながら見守る。
昨日は緊張したけど楽しかったし、今日は2人も一緒だからますます楽しい。
「今日はのぐのむと練習できるから、うれしいなぁ」
自分のセリフに線を引いた台本を両手で握りしめ、満面の笑みで2人を見上げると、『俺も』と声がハモる。
「は?」
「真似すんな」
のぐのむが小競り合いをしていると、今日も平和だなぁとうれしくなる。
そうこうしているうちに、「お前ら始めんぞ」と監督から声がかかり、練習がスタートした。
今回の脚本も担当した監督から、3人の掛け合いに関して「問題なし」の太鼓判をもらった。
「基本的にそんな感じでオッケー」と言われ、ほっと胸をなで下ろす。
「のむの裏声が、思ったよりいい」
「あざす」
「のぐは本番も、その調子でイケ散らかしてもらって」
「へーい」
「まめは……笑いも取りつつ、決めるとこは決めてこうな」
「へへ。お任せください。役作りの特訓中なんで」
得意げに胸を張ると、監督も助監督も「特訓?」と首を傾げる。
「”キュン”の特訓を、少しばかり」
「”キュン”の特訓て!何すんの?」
「まぁ俺の周りには、幸いイケメンがおりますのでね」
得意げにのぐとのむの肩を、ポンポンと叩いた。
「……彼らから、どんどん盗んでやろうと思ってるわけですよ」
「そういうことか」
のむに、個人的に”キュン”を教えてもらっている、とは言えずに、濁した。
今日の昼休みだって、膝で押さえこまれたままサンドイッチを食べる俺をデッサンされていたなんて、言えない。言えるわけがない。
特訓中とはいえ、のむにはやられっぱなしで、まだ何一つ”キュン”を会得していないのだ。
「でもさ、お前ら気を付けろよ」
助監督が言う。
「生徒会からオッケーもらったとはいえ、俺らラブストーリーやんだからさ。あんま目立ってイチャイチャしたら、目付けられるぜ」
「イ、イチャイチャ?!」と思わず声が裏返る。
「してんだろいつも。今さら何言ってんだ」
「えーそれは無理~~」と、のぐが大げさに言って、俺にすがりつく。
「俺達、まめよしよし界隈だもん。まめをよしよししないと死んじゃう~」
「わかる。わかるよ?まめはかわいい。愛でたいに決まってる!でも、よっちのことで俺らかなり食らったじゃん。俺、やっぱ距離感について考えちまうよ。もうクラスの奴の停学も退学も、嫌だからさ……」
確かに、クラスメイトが俺を愛でるのを控えるようになってから、いつメンの俺への態度が目立っているのは確かだ。
俺でさえ「こんなによしよしされてたっけ」のレベルなのだから、無理もない。
「あのー……よしよしされる側が言うのもなんだけど、心配してくれてありがとね」
「まめ~~」
助監督が、少し潤んだ目で俺を見る。
「俺、役作り頑張るよ。劇を観にきたみんなをキュンキュンさせる。そんで、文化祭を成功させてみんなでわいわいしたい」
俺はぎゅっと口を引き結んで、力強く頷いた。と、途端に自信がなくなり、へにょっとしてしまう。
「ーーって、まだ役作りは全然で、これからだけど。頑張るから……よろしくお願いします」
「おう」
「ほどほどに頑張ろー」
監督、助監督が頷き、のぐも、腕組みをして笑っている。
のむの方を見ると、目が合った。
俺がこくんと頷いてみせると、のむはにっと笑い、高速でウィンクをひとつして、何食わぬ顔でみんなの方に向き直った。すっかり油断していたところに、突然ハートの矢がプスッと刺さったみたいだった。
くっそーーーー!俺、絶対この役やり切ってやる。
どんな”キュン”だって受け止めてみせるからな!
