三度目の砲撃は、ニッドが「鳥」を狙撃したことでどうにか防ぐことに成功。風に煽られるように落下していったことから、撃墜できたと考えていいだろう。
接敵まで、ほんの20分。その間に、アンピシア海賊団は迎撃準備を整えていた。
半分も燃えてしまった最も大きな帆は畳まれた。マーンが舵輪を握り、可能な限り全速で自分たちの国を目指す。
そのそばで、デイブが待機。彼に囁くようにレーンが歌い、先ほどの爆発による大怪我を必死で癒している。
砲撃ではなく、こちらに兵士が乗り込んで来る。いつもこちらが商船に対して行っているものを、今度は仕掛けられる側になる。そう、エドワードは推測していた。
そのため、甲板にて船長以下、ヨルム、リヴァイの3人が主に応戦。ニッドは操舵手に敵を近づけないため、船橋から狙撃だ。
では、邦雄はというと。マストの上、この船で最も高い位置にある見張り台。
そこから敵船の観測と報告が、彼に与えられた任務だった。
(俺、高いところ無理なんじゃが!?)
震える足を、必死に叱咤する。大和の測距儀よりマシと、何度も何度も口にした。
海に浮かぶ山のようだった戦艦大和。その最上部に位置する測距儀より高い位置になる船など、滅多にあるもんじゃないのだから。
だがどんなに震えていても、通信兵として情報は見落とさない。
敵船の甲板にて、棒高跳びの要領で駆け出す兵士たちを、邦雄の目がとらえた。
「敵艦より兵員、来ます!!」
メガホンを持ち、デイブへ向けて叫ぶ。何と原始的な伝令か。
その頃、迫り来る敵艦隊の旗艦から、兵士たちが飛んできた。棒高跳びで、次々と兵が降ってくる。
「だらぁぁあああああ!!」
そこへ響くのはデイブの咆哮。振り回された巨大な触手が、兵たちを横薙ぎに海へ叩き落としていく。
「す、すんげぇ……」
邦雄は呆然と呟いてしまった。
しかし船橋を確認すると、変化を解いた彼は肩を抑えてうずくまっているではないか。
無理もない。爆撃を一発もろにくらい、彼の両腕は肉が見えるほどの重傷だったのだ。いくらレーンがつきっきりとはいえ、この短時間で全快したとは思えない。
その証拠に、打ち漏らした兵や第二波、第三波の奴らが乗り込んできている。敵との交戦は、とっくに始まっていた。
(海上での戦闘であんな白兵戦だなんて、ありえない……!!)
戦艦と戦闘機の戦いを経験した邦雄にとって、この世界の「海戦」の常識はいまだに信じられなかった。
甲板の至る所での乱闘。人が倒れ、血が噴き出し、船が真っ赤に染まっていく。惨状だけ見れば大和と変わらないのだが、倒れていくのは攻めてきた相手の方だ。
人対人の肉弾戦。それを容赦なく遂行できる彼らにゾッとしてしまう。
(いかんいかん。俺は、敵の艦隊を……!)
邦雄は自身に言い聞かせ、頭を振る。そして改めて、ソルラーマの船たちへ視線を移した。
旗艦との距離は10メートルもない。甲板では、こちらへ橋を渡そうと兵士たちが今か今かと待機している。まだ30人は居るだろう。
主砲も副砲も相手の船に無いことは、不幸中の幸いだ。
さらにその背後に4隻。左右、縦に2隻ずつだ。
後方の船は戦闘に積極的に参加しないのだろう。速度が他の3隻に比べて遅い上に、船も小さい。
一方、手前の2隻は左右揃ってこちらに接近してくる。旗艦すら追い越しそうな勢いだ。
(まさか、左右から挟み撃ちにするつもりか!?)
そう気づいた瞬間、邦雄は背筋が凍りつく。もしも両側から艦砲射撃なんてくらったら、この木造船はひとたまりもない。
慌てて望遠鏡を覗き込む。旗艦のすぐ後ろにいる2隻の側面を素早く確認。
(……あれ?変じゃ。どこにも大砲を積んどらん……)
ホッとしたような、意味が分からないような。邦雄は思わず首を傾げてしまった。
旗艦に対しても思ったが、全く砲台を積んでいない軍艦とは、不思議なものだ。40年前の日露戦争で活躍した三笠でさえ、30.5cm砲を積んでいるのに。
じゃあ何のために左右からこの船を狙うのか。それは、甲板の兵を見れば明らかだ。
(左右から、さらに20人近く送り込んで来る気じゃ……!!)
そう気づいた瞬間、下の戦況を確認する。
船長、ヨルム、リヴァイ、ニッド、全員まだ動けているが、消耗しているに違いない。
特に船長とリヴァイは、集中的に狙われていた。
「おいマーン!! 船の速度どうなってんだ!!」
船長が叫ぶ。右手で戦斧、左手で銃を操り、遠近両方の敵を倒しながらだ。
「旦那様ごめんなさいぃーー!! 向かい風なんだもん!! 操縦してるけど、これ以上の速さはたぶん無理ぃぃ!!」
「チッ……!」
叫び返すマーン。彼女に襲いかかろうとする剣士を、デイブの頭突きが防ぐ。
角からの頭突きは剣士の喉を正確に突き破り、彼の真っ白な髪が返り血で真っ赤にドロドロだ。
「敵旗艦接近!! 間もなく橋を渡してきます!! 敵兵、数30!」
邦雄は叫ぶ。せめて少しでも妨害しようと、返された小銃を発砲。だがそれも、この距離では足止めにもなりゃしない。
歯ぎしりし、再びメガホンを握りしめ声を上げる。
「船長!! 敵艦隊2隻! 左右に接近中! 距離、約12メートル!!」
斧と銃が軽やかに「ヨシ」を伝えてくる。エドワードとヨルムが一瞬背中合わせに敵を蹴散らしたかと思えば、ヨルムは船内へ。恐らく、この船の大砲で対処するのだろう。
後を追おうとした敵兵は、エドワードの豪快な回し蹴りでなぎ倒された。
その、数メートル先の通路にて。
「リヴァイさん!!」
邦雄の目には、リヴァイの死角から大剣を振り下ろす敵が見えていた。
彼の声が届いたのか分からない。正面の敵と鍔迫り合いをしていたリヴァイが身体を翻す。だがその先にいた別の兵の槍が、海賊剣士の肩を縫い止めるように突き刺した。
「があァ……!!」
ここまで聞こえてきた苦痛の声。リヴァイの周りにさらに集まる敵兵。それらをニッドの狙撃とデイブの触手が蹴散らしていく。
真っ赤に染まったリヴァイの左腕が、ただの重りのようにダランと垂れ下がっていた。
(このままじゃ、負けは時間の問題じゃ……!!)
どうにかして、この船の速度を上げなければ。だがどうやって。
向かい風は容赦なく邦雄の頬も叩いてくる。操舵手をしているマーンだって、あの乱戦の真っ只中で全力を尽くしているというのに。
その時、爆発音と共に左側海面に水飛沫が上がる。それは左にいた敵艦の進行を妨害する、こちらの大砲だ。
その爆発からまるで逃げるように、キラキラとした小さな魚のような人のようなもの。半透明に見えるそれを目にした瞬間、ハッとした邦雄はメガホンで叫んだ。
「ニッドーー!!」
「え!?」
見上げてきた狙撃手に向けて、無我夢中で訴える。
「海の中! たぶん君の同類!! 話せるのなら、こちらの味方するよう説得しちょくれぇーー!!」
「……!?」
霊だろうが精霊だろうが、使えるものは何でも使う。伝わるまで伝える。
その心意気はどうやら、船全体に伝わったらしい。
「行け!!」
船長のひと声。それを受け、ニッドは海の中へ。
手薄になった操舵手の防衛は、鬼神のような状態のデイブが引き継いでいる。
マストを伝う伝声管の蓋を開ける邦雄。
船内にある砲撃室に繋がっていると、船の案内をしてくれた時に聞いていた。
「ヨルムさん! ニッドが海の精霊と交渉中! 砲撃止め、甲板の援護求む!」
伝令を繰り返そうと、息を吸う。そのちょっとの間で、すぐさま聞こえてきた副官の声。
「イエッサー」
たったひと言。だがそれは、一抹の安心をもたらしてくれた。
ヨルムはすぐ戻ってきてくれるはず。そうすれば、仮に渡し板が敷かれたとしても、船長と副船長のコンビならば。
(……いや無理じゃろ!? 確かにリヴァイさんとデイブさんに比べたらお二人の怪我は少なそうに見えるけど……!)
自分の甘い考えを自分が否定する。これから襲いかかりそうなのは、旗艦の兵30人と、左右の船からの20人。
対してこちらは、重傷者を含む4人の海賊だ。
レーンの回復魔法は、間に合っていない。
(もう、生き残れるかはニッドにかかってるんじゃ……!!)
邦雄にできるのは、とにかく正確に攻撃の状況を伝えることだけだ。
旗艦に乗る兵たちが、渡し板を構え始める。
こちらの甲板には、戻って来たヨルム。船長と並び、迎え撃とうと構えている。
船橋では、重傷の2人がどうにか女性陣を守って腕を振るう。
「敵兵、来ます!!」
邦雄が叫んだのと、渡し板が掛けられたのは同時だ。
そしてもうひとつ、時を同じくして起こった現象。
あり得ないほどの、大きな横波だ。
「みんなぁーー!! 船の何かしらにつかまってやぁーーー!!」
「ニッド!?」
波と共にこちらへ戻って来たニッドが叫ぶ。波に煽られぐらんぐらんと揺れる船体は、彼らの国の方へどんどん流されていく。
一方、突然の横波にあおられたソルラーマの船は、旗艦に追突事故を起こしてしまっているではないか。
まるで海に運ばれるかのようにアンピシア海賊団の船は進む、進む。
「……今のうちだ。レーンの周囲に負傷者を集めろ」
「イエッサー」
斧をしまい、エドワードがそう指示をだす。返事をしながら、ヨルムはリヴァイとデイブの元へ駆け出した。
邦雄は望遠鏡を覗く。ソルラーマの船が追ってくる様子は、なかった。
接敵まで、ほんの20分。その間に、アンピシア海賊団は迎撃準備を整えていた。
半分も燃えてしまった最も大きな帆は畳まれた。マーンが舵輪を握り、可能な限り全速で自分たちの国を目指す。
そのそばで、デイブが待機。彼に囁くようにレーンが歌い、先ほどの爆発による大怪我を必死で癒している。
砲撃ではなく、こちらに兵士が乗り込んで来る。いつもこちらが商船に対して行っているものを、今度は仕掛けられる側になる。そう、エドワードは推測していた。
そのため、甲板にて船長以下、ヨルム、リヴァイの3人が主に応戦。ニッドは操舵手に敵を近づけないため、船橋から狙撃だ。
では、邦雄はというと。マストの上、この船で最も高い位置にある見張り台。
そこから敵船の観測と報告が、彼に与えられた任務だった。
(俺、高いところ無理なんじゃが!?)
震える足を、必死に叱咤する。大和の測距儀よりマシと、何度も何度も口にした。
海に浮かぶ山のようだった戦艦大和。その最上部に位置する測距儀より高い位置になる船など、滅多にあるもんじゃないのだから。
だがどんなに震えていても、通信兵として情報は見落とさない。
敵船の甲板にて、棒高跳びの要領で駆け出す兵士たちを、邦雄の目がとらえた。
「敵艦より兵員、来ます!!」
メガホンを持ち、デイブへ向けて叫ぶ。何と原始的な伝令か。
その頃、迫り来る敵艦隊の旗艦から、兵士たちが飛んできた。棒高跳びで、次々と兵が降ってくる。
「だらぁぁあああああ!!」
そこへ響くのはデイブの咆哮。振り回された巨大な触手が、兵たちを横薙ぎに海へ叩き落としていく。
「す、すんげぇ……」
邦雄は呆然と呟いてしまった。
しかし船橋を確認すると、変化を解いた彼は肩を抑えてうずくまっているではないか。
無理もない。爆撃を一発もろにくらい、彼の両腕は肉が見えるほどの重傷だったのだ。いくらレーンがつきっきりとはいえ、この短時間で全快したとは思えない。
その証拠に、打ち漏らした兵や第二波、第三波の奴らが乗り込んできている。敵との交戦は、とっくに始まっていた。
(海上での戦闘であんな白兵戦だなんて、ありえない……!!)
戦艦と戦闘機の戦いを経験した邦雄にとって、この世界の「海戦」の常識はいまだに信じられなかった。
甲板の至る所での乱闘。人が倒れ、血が噴き出し、船が真っ赤に染まっていく。惨状だけ見れば大和と変わらないのだが、倒れていくのは攻めてきた相手の方だ。
人対人の肉弾戦。それを容赦なく遂行できる彼らにゾッとしてしまう。
(いかんいかん。俺は、敵の艦隊を……!)
邦雄は自身に言い聞かせ、頭を振る。そして改めて、ソルラーマの船たちへ視線を移した。
旗艦との距離は10メートルもない。甲板では、こちらへ橋を渡そうと兵士たちが今か今かと待機している。まだ30人は居るだろう。
主砲も副砲も相手の船に無いことは、不幸中の幸いだ。
さらにその背後に4隻。左右、縦に2隻ずつだ。
後方の船は戦闘に積極的に参加しないのだろう。速度が他の3隻に比べて遅い上に、船も小さい。
一方、手前の2隻は左右揃ってこちらに接近してくる。旗艦すら追い越しそうな勢いだ。
(まさか、左右から挟み撃ちにするつもりか!?)
そう気づいた瞬間、邦雄は背筋が凍りつく。もしも両側から艦砲射撃なんてくらったら、この木造船はひとたまりもない。
慌てて望遠鏡を覗き込む。旗艦のすぐ後ろにいる2隻の側面を素早く確認。
(……あれ?変じゃ。どこにも大砲を積んどらん……)
ホッとしたような、意味が分からないような。邦雄は思わず首を傾げてしまった。
旗艦に対しても思ったが、全く砲台を積んでいない軍艦とは、不思議なものだ。40年前の日露戦争で活躍した三笠でさえ、30.5cm砲を積んでいるのに。
じゃあ何のために左右からこの船を狙うのか。それは、甲板の兵を見れば明らかだ。
(左右から、さらに20人近く送り込んで来る気じゃ……!!)
そう気づいた瞬間、下の戦況を確認する。
船長、ヨルム、リヴァイ、ニッド、全員まだ動けているが、消耗しているに違いない。
特に船長とリヴァイは、集中的に狙われていた。
「おいマーン!! 船の速度どうなってんだ!!」
船長が叫ぶ。右手で戦斧、左手で銃を操り、遠近両方の敵を倒しながらだ。
「旦那様ごめんなさいぃーー!! 向かい風なんだもん!! 操縦してるけど、これ以上の速さはたぶん無理ぃぃ!!」
「チッ……!」
叫び返すマーン。彼女に襲いかかろうとする剣士を、デイブの頭突きが防ぐ。
角からの頭突きは剣士の喉を正確に突き破り、彼の真っ白な髪が返り血で真っ赤にドロドロだ。
「敵旗艦接近!! 間もなく橋を渡してきます!! 敵兵、数30!」
邦雄は叫ぶ。せめて少しでも妨害しようと、返された小銃を発砲。だがそれも、この距離では足止めにもなりゃしない。
歯ぎしりし、再びメガホンを握りしめ声を上げる。
「船長!! 敵艦隊2隻! 左右に接近中! 距離、約12メートル!!」
斧と銃が軽やかに「ヨシ」を伝えてくる。エドワードとヨルムが一瞬背中合わせに敵を蹴散らしたかと思えば、ヨルムは船内へ。恐らく、この船の大砲で対処するのだろう。
後を追おうとした敵兵は、エドワードの豪快な回し蹴りでなぎ倒された。
その、数メートル先の通路にて。
「リヴァイさん!!」
邦雄の目には、リヴァイの死角から大剣を振り下ろす敵が見えていた。
彼の声が届いたのか分からない。正面の敵と鍔迫り合いをしていたリヴァイが身体を翻す。だがその先にいた別の兵の槍が、海賊剣士の肩を縫い止めるように突き刺した。
「があァ……!!」
ここまで聞こえてきた苦痛の声。リヴァイの周りにさらに集まる敵兵。それらをニッドの狙撃とデイブの触手が蹴散らしていく。
真っ赤に染まったリヴァイの左腕が、ただの重りのようにダランと垂れ下がっていた。
(このままじゃ、負けは時間の問題じゃ……!!)
どうにかして、この船の速度を上げなければ。だがどうやって。
向かい風は容赦なく邦雄の頬も叩いてくる。操舵手をしているマーンだって、あの乱戦の真っ只中で全力を尽くしているというのに。
その時、爆発音と共に左側海面に水飛沫が上がる。それは左にいた敵艦の進行を妨害する、こちらの大砲だ。
その爆発からまるで逃げるように、キラキラとした小さな魚のような人のようなもの。半透明に見えるそれを目にした瞬間、ハッとした邦雄はメガホンで叫んだ。
「ニッドーー!!」
「え!?」
見上げてきた狙撃手に向けて、無我夢中で訴える。
「海の中! たぶん君の同類!! 話せるのなら、こちらの味方するよう説得しちょくれぇーー!!」
「……!?」
霊だろうが精霊だろうが、使えるものは何でも使う。伝わるまで伝える。
その心意気はどうやら、船全体に伝わったらしい。
「行け!!」
船長のひと声。それを受け、ニッドは海の中へ。
手薄になった操舵手の防衛は、鬼神のような状態のデイブが引き継いでいる。
マストを伝う伝声管の蓋を開ける邦雄。
船内にある砲撃室に繋がっていると、船の案内をしてくれた時に聞いていた。
「ヨルムさん! ニッドが海の精霊と交渉中! 砲撃止め、甲板の援護求む!」
伝令を繰り返そうと、息を吸う。そのちょっとの間で、すぐさま聞こえてきた副官の声。
「イエッサー」
たったひと言。だがそれは、一抹の安心をもたらしてくれた。
ヨルムはすぐ戻ってきてくれるはず。そうすれば、仮に渡し板が敷かれたとしても、船長と副船長のコンビならば。
(……いや無理じゃろ!? 確かにリヴァイさんとデイブさんに比べたらお二人の怪我は少なそうに見えるけど……!)
自分の甘い考えを自分が否定する。これから襲いかかりそうなのは、旗艦の兵30人と、左右の船からの20人。
対してこちらは、重傷者を含む4人の海賊だ。
レーンの回復魔法は、間に合っていない。
(もう、生き残れるかはニッドにかかってるんじゃ……!!)
邦雄にできるのは、とにかく正確に攻撃の状況を伝えることだけだ。
旗艦に乗る兵たちが、渡し板を構え始める。
こちらの甲板には、戻って来たヨルム。船長と並び、迎え撃とうと構えている。
船橋では、重傷の2人がどうにか女性陣を守って腕を振るう。
「敵兵、来ます!!」
邦雄が叫んだのと、渡し板が掛けられたのは同時だ。
そしてもうひとつ、時を同じくして起こった現象。
あり得ないほどの、大きな横波だ。
「みんなぁーー!! 船の何かしらにつかまってやぁーーー!!」
「ニッド!?」
波と共にこちらへ戻って来たニッドが叫ぶ。波に煽られぐらんぐらんと揺れる船体は、彼らの国の方へどんどん流されていく。
一方、突然の横波にあおられたソルラーマの船は、旗艦に追突事故を起こしてしまっているではないか。
まるで海に運ばれるかのようにアンピシア海賊団の船は進む、進む。
「……今のうちだ。レーンの周囲に負傷者を集めろ」
「イエッサー」
斧をしまい、エドワードがそう指示をだす。返事をしながら、ヨルムはリヴァイとデイブの元へ駆け出した。
邦雄は望遠鏡を覗く。ソルラーマの船が追ってくる様子は、なかった。



