トントンとキッチンから聞こえる包丁の音とみそ汁の匂いで目が覚めた。
空調の効いた部屋と隣に感じる心地いいよい温もりで昨日あった出来事を思い出しながらゆっくりと身体を起こす。
「敦紀……もう起きるの…?もう少し寝ようよ…」
透君が甘えたようにクンと裾を引っ張ってくる。
ぼんやりとした目元も、少し乱れ癖づいた髪も不思議と様になっていた。
ここ最近毎日一緒に過ごしていたため忘れがちになっていたが、その整った顔立ちに思わず見惚れてしまった。
「だ、駄目だよ透君、もう八時過ぎてるよ!」
「せっかくの夏休みなのに…駄目…?」
眠たげに瞬きを繰り返す大きな瞳に、寝起き特有の無防備な表情がやけに愛おしく感じた。
「だ、駄目だよ…きっと透君のお母さんが朝ごはん作ってくれてるから起きよう?」
心を鬼にしてそう告げる。
「わかったよ…早く行こ」
眠そうな目を擦りながら階段を降り、ダイニングへと向かう。
「おはよう!朝ごはん出来てるからみんなで食べましょ!」
弾けるような笑顔で透君のお母さんが迎えてくれた。
透君のお家にお世話になることになってから初めてのことだらけで困惑が止まらないと同時にこの優しい空気に慣れてしまうことの不安がある。
自分の家ではみんな揃って朝食をとることも、おはようの挨拶を交わすこともなかった。
食卓には炊きたてのご飯と湯気の立つ味噌汁、焼き魚にだし巻き卵、小鉢が並んでいた。
朝食を目にした瞬間、胃がきゅるりと音を立てた。
「敦紀、お腹空いてたんだね。かわいい音だね」
隣から透君がくすりと笑い、揶揄うように声を掛けてきた。
「さ、食べましょう!」
透君のお母さんの一声で席に着く。
俺は夢中になって箸を進めた。
「敦紀君、今日もし予定がなければ晩御飯一緒に作らない?」
「…いいんですか?」
自分に魅力が少ないことは十分すぎる程理解していた。
透君により長い時間好きでいてもらうために、隣に立っていて恥ずかしくないように
「是非一緒に作りたいです!」
「ふふ、やる気十分ね。」
そう微笑まれた。
自分が朝から大きな声を出してしまったことに気づき、思わず赤面する。
「じゃあ時間まで俺と一緒にレポート進めようね」
赤面して縮こまったことに気づいた透君がすかさず声をかけてくれる。
「…ね?」と俺の顔を覗き込む。
「うん…。」と小さく返事をする。
「朝から仲がいいのは結構だが、そういうのは二人きりのときにしなさい。」
透君のお父さんにそう言われ俺はますます顔を赤くした。
一方の透君は、まるで気にしていないような涼しい顔で味噌汁を啜っている。
「じゃあ、時間になったら声掛けに行くわね!」
「…はい!」
透君のお家にお世話になるようになってから数日。
こんなに美味しいご飯をはじめて食べて感動したと同時に自分も作ってみたいと思っていた。
透君に美味しいと思ってもらえるといいな…
拳を握り、気合を入れた。
朝食を食べ終わり、無理言ってさせてもらってるお皿洗いをさせてもらい透君の部屋へと移動した。
「さ、課題進めよっか」
勉強に関しては透君は甘くない。
「そんな嫌そうな顔しても駄目だよ。」
嫌々パソコンを立ち上げる。
30分程経った頃、早々に行き詰まり透君の方をチラリと見る。
黙々と課題を進めていて英語の文献を手にしていた。
「どうしたの?難しい?」
俺の視線に気づき、自然な動作で俺の手元を覗き込む。
透君のこういうところがずっと好きだった。
出会ったばかりのときも、透君はこうして俺が行き詰まっていることにすぐに気づいてくれて何も言わずとも手を差し伸べてくれる。
ふと、高校生のときのことを思い出す。
あの頃も、透君のこういうところに惹かれていた。
こうしてなんやかんやで課題を進め、お昼の時間になり部屋まで呼びに来てくれた。
透君のお父さんは仕事へ出掛けたため3人で昼食を取った。
また部屋に戻り、パソコンと数時間向き合った頃コンコンと部屋の扉がノックされた。
透君が立ち上がり扉を開けると透君のお母さんがいた。
「敦紀君、そろそろ晩御飯の準備したいんだけど課題はどう?」
集中していたらしく日が傾き始めていたことに気づかなかった。気を使わせてしまったことを申し訳なく思いながら
「大丈夫です!大分進みました!」
そう答える。
「よかった。じゃあキッチン行きましょ!」
机に広げていた文献や参考書を片付ける。
そして部屋を出ようとしたとき、当然のように透君も着いてきた。
「ちょっと!たまには敦紀君と二人きりで話させてよ!」
透君のお母さんはいたずらっぽく笑って言った。
「え!なんで!」透君はそうぷんぷんしながらもわかってくれたらしく、リビングで最近読めていなかった小説を読み進めることにしたらしい。
料理といえば、小、中学生のときの家庭科の授業で調理実習をしたいらいほぼしたことがなかった。
危なかっしい手つきの俺をみて優しく微笑みながら
「じゃあまずは野菜から切ってみましょ」
そう言われ、まな板に野菜を並べる。
包丁を握り、頭の中でこんな感じだったはずと記憶を頼りに野菜を切る。
「指はこうやって丸めるのよ」
横から透君のお母さんの手が伸び、俺の指先をそっと直してくれた。
「こう…ですか?」
「そうそう上手よ」
アドバイスをもらいながら一通り野菜を切り終えた。
次は鍋に油を引き肉を炒め野菜を炒め、水を加え煮込む。
煮込んでいる間に副菜を用意する。
包丁の扱いにも慣れてきた俺に透君のお母さんは
「敦紀君、昨日の夜お父さんと話したんだけどね私たちのことお母さん、お父さんって呼んでくれないかしら」
「……え?」
思いもよらない言葉に、目を見開いた。
「私たちはもうあなたのことを息子同然だと思ってるんだから、透君のお父さん、お母さんじゃなくてお父さん、お母さんって呼んで欲しいの。」
俺もいずれはそうさせてもらえればなと思っていたがこんなに早くていいものだろうか。と思い言葉が出てこなかった。
「嫌だったら無理にとは言わないけどね。もしよければ…ね?…」
そう強制ではなく、俺の気持ちを尊重してくれる言い方をしてくれた。
「……呼ばせてください。お、お母さん」
お母さんは、ぱっと表情を明るくした。
「うん、嬉しい。ありがとう敦紀君。」
なんだかグッと心がもっと近づいた気がした。
その後も小さい頃の透君の話を聞かせてもらったりしていたらあっという間に時間は経過し、料理も出来上がっていた。
玄関がガチャっと開く音が聞こえ、お父さんが帰宅したようだ。お母さんと一緒にで迎えに行く。
「おかえりなさいあなた」
緊張を押し殺して口を開く。
「おかえりなさい。お、お父さん…」
お父さんは一瞬呆気にとられたような表情をする。けれどすぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「ただいま。敦紀。」
その場がふわりと優しい空気に包まれた。
集中して文庫本を読み進めていた透君が俺たちに気づいたようで慌てて玄関にやってきた。
「何盛り上がってるの?」
三人で顔を見合わせる。
「内緒!」
三人の声が綺麗に重なった。
ムスッとした顔をした透君がぶつぶつと文句を言いながらリビングへと戻って行った。
ぷんぷんしながらもお父さんとお母さんと打ち解けた俺を愛おしく思うようなそんな顔をしていた。
空調の効いた部屋と隣に感じる心地いいよい温もりで昨日あった出来事を思い出しながらゆっくりと身体を起こす。
「敦紀……もう起きるの…?もう少し寝ようよ…」
透君が甘えたようにクンと裾を引っ張ってくる。
ぼんやりとした目元も、少し乱れ癖づいた髪も不思議と様になっていた。
ここ最近毎日一緒に過ごしていたため忘れがちになっていたが、その整った顔立ちに思わず見惚れてしまった。
「だ、駄目だよ透君、もう八時過ぎてるよ!」
「せっかくの夏休みなのに…駄目…?」
眠たげに瞬きを繰り返す大きな瞳に、寝起き特有の無防備な表情がやけに愛おしく感じた。
「だ、駄目だよ…きっと透君のお母さんが朝ごはん作ってくれてるから起きよう?」
心を鬼にしてそう告げる。
「わかったよ…早く行こ」
眠そうな目を擦りながら階段を降り、ダイニングへと向かう。
「おはよう!朝ごはん出来てるからみんなで食べましょ!」
弾けるような笑顔で透君のお母さんが迎えてくれた。
透君のお家にお世話になることになってから初めてのことだらけで困惑が止まらないと同時にこの優しい空気に慣れてしまうことの不安がある。
自分の家ではみんな揃って朝食をとることも、おはようの挨拶を交わすこともなかった。
食卓には炊きたてのご飯と湯気の立つ味噌汁、焼き魚にだし巻き卵、小鉢が並んでいた。
朝食を目にした瞬間、胃がきゅるりと音を立てた。
「敦紀、お腹空いてたんだね。かわいい音だね」
隣から透君がくすりと笑い、揶揄うように声を掛けてきた。
「さ、食べましょう!」
透君のお母さんの一声で席に着く。
俺は夢中になって箸を進めた。
「敦紀君、今日もし予定がなければ晩御飯一緒に作らない?」
「…いいんですか?」
自分に魅力が少ないことは十分すぎる程理解していた。
透君により長い時間好きでいてもらうために、隣に立っていて恥ずかしくないように
「是非一緒に作りたいです!」
「ふふ、やる気十分ね。」
そう微笑まれた。
自分が朝から大きな声を出してしまったことに気づき、思わず赤面する。
「じゃあ時間まで俺と一緒にレポート進めようね」
赤面して縮こまったことに気づいた透君がすかさず声をかけてくれる。
「…ね?」と俺の顔を覗き込む。
「うん…。」と小さく返事をする。
「朝から仲がいいのは結構だが、そういうのは二人きりのときにしなさい。」
透君のお父さんにそう言われ俺はますます顔を赤くした。
一方の透君は、まるで気にしていないような涼しい顔で味噌汁を啜っている。
「じゃあ、時間になったら声掛けに行くわね!」
「…はい!」
透君のお家にお世話になるようになってから数日。
こんなに美味しいご飯をはじめて食べて感動したと同時に自分も作ってみたいと思っていた。
透君に美味しいと思ってもらえるといいな…
拳を握り、気合を入れた。
朝食を食べ終わり、無理言ってさせてもらってるお皿洗いをさせてもらい透君の部屋へと移動した。
「さ、課題進めよっか」
勉強に関しては透君は甘くない。
「そんな嫌そうな顔しても駄目だよ。」
嫌々パソコンを立ち上げる。
30分程経った頃、早々に行き詰まり透君の方をチラリと見る。
黙々と課題を進めていて英語の文献を手にしていた。
「どうしたの?難しい?」
俺の視線に気づき、自然な動作で俺の手元を覗き込む。
透君のこういうところがずっと好きだった。
出会ったばかりのときも、透君はこうして俺が行き詰まっていることにすぐに気づいてくれて何も言わずとも手を差し伸べてくれる。
ふと、高校生のときのことを思い出す。
あの頃も、透君のこういうところに惹かれていた。
こうしてなんやかんやで課題を進め、お昼の時間になり部屋まで呼びに来てくれた。
透君のお父さんは仕事へ出掛けたため3人で昼食を取った。
また部屋に戻り、パソコンと数時間向き合った頃コンコンと部屋の扉がノックされた。
透君が立ち上がり扉を開けると透君のお母さんがいた。
「敦紀君、そろそろ晩御飯の準備したいんだけど課題はどう?」
集中していたらしく日が傾き始めていたことに気づかなかった。気を使わせてしまったことを申し訳なく思いながら
「大丈夫です!大分進みました!」
そう答える。
「よかった。じゃあキッチン行きましょ!」
机に広げていた文献や参考書を片付ける。
そして部屋を出ようとしたとき、当然のように透君も着いてきた。
「ちょっと!たまには敦紀君と二人きりで話させてよ!」
透君のお母さんはいたずらっぽく笑って言った。
「え!なんで!」透君はそうぷんぷんしながらもわかってくれたらしく、リビングで最近読めていなかった小説を読み進めることにしたらしい。
料理といえば、小、中学生のときの家庭科の授業で調理実習をしたいらいほぼしたことがなかった。
危なかっしい手つきの俺をみて優しく微笑みながら
「じゃあまずは野菜から切ってみましょ」
そう言われ、まな板に野菜を並べる。
包丁を握り、頭の中でこんな感じだったはずと記憶を頼りに野菜を切る。
「指はこうやって丸めるのよ」
横から透君のお母さんの手が伸び、俺の指先をそっと直してくれた。
「こう…ですか?」
「そうそう上手よ」
アドバイスをもらいながら一通り野菜を切り終えた。
次は鍋に油を引き肉を炒め野菜を炒め、水を加え煮込む。
煮込んでいる間に副菜を用意する。
包丁の扱いにも慣れてきた俺に透君のお母さんは
「敦紀君、昨日の夜お父さんと話したんだけどね私たちのことお母さん、お父さんって呼んでくれないかしら」
「……え?」
思いもよらない言葉に、目を見開いた。
「私たちはもうあなたのことを息子同然だと思ってるんだから、透君のお父さん、お母さんじゃなくてお父さん、お母さんって呼んで欲しいの。」
俺もいずれはそうさせてもらえればなと思っていたがこんなに早くていいものだろうか。と思い言葉が出てこなかった。
「嫌だったら無理にとは言わないけどね。もしよければ…ね?…」
そう強制ではなく、俺の気持ちを尊重してくれる言い方をしてくれた。
「……呼ばせてください。お、お母さん」
お母さんは、ぱっと表情を明るくした。
「うん、嬉しい。ありがとう敦紀君。」
なんだかグッと心がもっと近づいた気がした。
その後も小さい頃の透君の話を聞かせてもらったりしていたらあっという間に時間は経過し、料理も出来上がっていた。
玄関がガチャっと開く音が聞こえ、お父さんが帰宅したようだ。お母さんと一緒にで迎えに行く。
「おかえりなさいあなた」
緊張を押し殺して口を開く。
「おかえりなさい。お、お父さん…」
お父さんは一瞬呆気にとられたような表情をする。けれどすぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「ただいま。敦紀。」
その場がふわりと優しい空気に包まれた。
集中して文庫本を読み進めていた透君が俺たちに気づいたようで慌てて玄関にやってきた。
「何盛り上がってるの?」
三人で顔を見合わせる。
「内緒!」
三人の声が綺麗に重なった。
ムスッとした顔をした透君がぶつぶつと文句を言いながらリビングへと戻って行った。
ぷんぷんしながらもお父さんとお母さんと打ち解けた俺を愛おしく思うようなそんな顔をしていた。
