キミの理想になりたくて

今日の放課後透君とカフェに行く約束を取り付けた。
透君はカフェデートだね!と喜んで二つ返事で了承をくれた。
もし今日振られてしまっても受け止める。

文化祭も終わり行事も一通り終了した今、また季節は進んだ。

秋の終わりを迎え、冷たい風が肌を撫でる季節。

受験ムードが校内を包み始めた。

俺は担任から職員室に呼び出された。
話の内容は理解していた。

「梅宮、おめでとう。合格だ。」

担任からそう告げられやっと一息つけた。

「入学当初からは信じられないくらい成績も伸ばして……。これも江井のおかげか?いい友人を持ったな。卒業後も大事にしろよ。」

そう言ってくれた。


大学に合格した。
ここをリミットとしていた。

俺は現実と向き合う。

恋人なのにお互いの進路も知らない。そんなの変だと思う。



この期間中、たくさん考えた。


でも、やっぱり俺は透君のことが大好きだ。
透君が海外に行くなら応援したい。地元から離れるにしろ、海外に行くにしろ、バイトを初めてお金を貯めて会いに行くし、俺ができる努力はしたい。

俺なんかに応援されてもウザイかもしれないけど受験の応援だってしたいし、できる限り最低限のサポートがしたい。

今度はちゃんと俺から行動する。
邪魔が入っても諦めない。
透君と離れたくないから。

今日の放課後透君とカフェに行く約束を取り付けた。
透君はカフェデートだね!と喜んで二つ返事で了承をくれた。
もし今日振られてしまっても受け止める。

もう疑ってなんかない。
噂に惑わされて、こんなに俺のことを思ってくれている人を疑うなんて蓮君の言う通りだ。なんて失礼なことをしてしまったのだろうか。

「敦紀、話してくれる?」

「文化祭準備期間中、透君と山本さんが並んで歩いてる所を見かけたんだ。あのとき、毎日考えないようにしてたけどグルグルぐちゃぐちゃ色んなこと考えちゃってて透君と山本さんが凄くお似合いに見えて憧れのカップルって言われてたの思い出して、それでなんか悲しくなっちゃって…自分じゃなくて彼女のほうが透君を幸せにできるんじゃないか。そんな考えをいつのまにか事実みたいに勝手に思い込んじゃってました。もっと早く、透君に相談するべきだった。ごめんなさい。」

言いたいことがまとまらなくて、なんて言えばいいのかわからなくて、でも頷きながら優しい眼差しで聞いてくれてそれが嬉しくて…

「もっと早く相談してよ。」

ビクッとする。
その通りだし、約束を破ったことに違いない。

「でも、先に嘘ついて約束破ったのは俺だもんね。お互い様だね。山本とは何も無いよ。詳しく聞く?」

俺は頷く。

「あいつ年上の彼氏がいるからその相談によく乗ってるから仲良さそうに見えたのかも。文化祭準備期間中もそんなような相談をされてた気がする。文化祭に彼氏来るんだけどさ~ってね、俺もよく惚気させてもらってるんだ。」

「惚気……」

俺のこと惚気てくれるんだ。と思わず赤面した。

「後、もちろんわかってると思うけど、ナンパも告白も敦紀以外には全く興味ないし心配しなくて大丈夫だよ。他に何か不安に思ってることはある?俺は敦紀が最近蓮?だっけ?と仲良すぎるんじゃないかなって気になるけどね」

蓮君?
頬を膨らませて、怒っていますというアピールをしている。

「れ、蓮君は何もないよ!大事な友達だけど...こ、恋人として大好きなのはと、透君だけ、だよ……」

……はぁーーーと深い溜息が聞こえた。
怒らせてしまっただろうかと見上げる。

「そんなかわいいこと言ってどうしたいの…。俺、今日話がしたいってカフェに誘われて振られるんじゃないかって生きた心地しなかったんだからね…」

「え、俺もだよ…。海外に行くから別れよとか色んな振られるパターン考えちゃってた……」


目が合い、自然と笑みが零れ同時に笑い合った。

喧嘩していたわけではないし、ほぼ毎日顔を合わせていたし、デートもしていた。

それでも今やっと元通りの俺たちに戻れた気がした。

あれから一ヶ月。

二学期が終了した。今日。
学校がいよいよ本格的な受験モードとなっている今、俺たちは絶賛喧嘩中だ。

「もうすぐ試験なのに、イルミネーションなんて見に行って風邪引いたりしたらどうするの!?確かに行ってみたいとは行ったけど今年じゃなくても……!」

「今年も来年も行きたいよ!恋人っぽいことしたいし、行こうよ!暖かい格好して、マスクしたら平気だよ!」

と、傍から見ればバカップルの喧嘩と思われてしまうかもしれないけど俺たちは本気だ。

「透君、今年は美味しいもの買って映画観ながらお家デートにしよ?ケーキも買ってさ!ね?」

最近になり、やっと透君の扱い方を理解してきた。
悔しいが、透君のほうが背が高いため目を合わせようとすると見上げることになる。これを利用するのだ。

上目遣いで首を傾げるようにすると大抵の事は許してくれる。

「う…………。わかった。今年は、そうしよ。その代わり!俺ん家にお泊まりだからね!」

「うん!」

そんなこんなで例年通りクリスマスと年越しは透君のお家にお邪魔してしまった。
透君のご両親にはご挨拶済みで、恋人であるということは言っていないが仲のいい友人ということで認知してくれているみたいで、かわいがってくれている。

お正月は一緒に過ごしたが、透君が勉強している姿を一度も見ていない気がする。
でも透君には透君の勉強方法があるだろうし、受験生ではない俺が口出ししていいのかわからず、でも俺がいることで集中出来ないからとかそんな理由であれば言って欲しいそう思い勇気をだして聞いてみた。

「透君、勉強はしないの…?」

「……敦紀がいるのに勉強なんてしたくないよー、」

やっぱり!俺が邪魔だったんだ。

「ごめ、透君のお家が居心地いいからって居座りすぎた!すぐ帰るから!」

「ちょーっと待って。勘違いしてる。敦紀との時間を勉強のせいで疎かにしたくなかったの!帰っちゃったら本末転倒だよ……」

「でも……」

もし、透君のことだからそんな心配あまりしてないけど俺のせいでなんてことがあったら……

「じゃあ、俺勉強するから隣にいてくれる?」

「もちろん!俺も課題やるよ」

「じゃあ久しぶりに勉強会だ!」

交渉成立で勉強会がスタートした。


あれから俺はアルバイトを始めた。
俺がバイトの間透君は図書館や塾の自習室で勉強をして、終わった後一緒に夕食を取ったりコンビニで買い食いをしてつかの間の談笑をしたりしながら

卒業旅行はどこに行こうか。

その言葉を楽しみに、残り少ない高校生活を送っていた。


そして試験当日。

「じゃ、行ってくるね敦紀!晩御飯母さんがご馳走用意するって言ってたから楽しみだね」

「お邪魔していいのかな…」

「いいの!受験期支えてくれた敦紀君を呼びなさいだってさ」

「そっか…嬉しいな。とにかく頑張ってね!家から応援してるからね」

前日は流石にと断ったのだが、どうしてもと珍しく食い下がってきたので前日も透君のお家にお泊りさせていただいた。
ご両親もいらっしゃいといつも通り歓迎してくれたことだけが不幸中の幸いといったところだろうか…

透君と駅で別れ、一度自分の自宅へと帰宅した。
十七時頃に試験が終わると言っていたのでサプライズ…になるのかはわからないが敦紀君の志望大学の最寄り駅まで迎えに行こうと思う。
それまで卒業旅行のプランを考えようと思う。

だいぶ時間を潰し、いい時間になったため最寄り駅へと向かう。

国立大学の最寄り駅というだけあって賢そうな学生が多く、普段使わない駅ということも相まってなんだかソワソワしてしまう。

人が多く、透君を見つけられるかどうか不安だったが一瞬で見つけられた。

「透君!」

「敦紀!なんで!?迎えに来てくれたの!嬉しい!帰ろ!」

俺が声を掛けた瞬間にぱぁぁっと顔を明るくした笑顔を見せてくれた。

その後、試験の話は特にせずいつも通りに腕が当たりそうな距離感で肩を並べ透君のおうちへと向かった。
透君のお母さんが作ってくれた美味しい食事を食べ、透君のお母さんが敷いてくれた敷布団は使わず透君の隣でベットで一緒に眠りについた。

冬の名残を残しながらも、季節は確かに春へ向かっていた。

初めて本当の友人と出会い、初めて恋心を知り、初めて心の底からの大事な人を見つけることができたこの高校と今日でお別れとなる。

クラスメイトの中には進学や就職で地方へ旅立つ友人もいる。
寂しくなるがお互い頑張ろうねと会話を交わした。

この三年間で一番といっても過言ではないほど感謝してもしきれない存在である蓮君は東京の専門学校に進学するため比較的会いやすい環境にいてくれて安堵したことはつい最近のことのようだ。

卒業式も何事もなく無事に終了した。
友人と写真を撮り、別れを惜しんだ。
お世話になった担任にも最後に感謝と別れを述べることができた。

「大学に行っても江井と勉強頑張れよー」

いつもと同じテンションでそう返答してくれてなんだか笑ってしまった。

「敦紀!」

「透君…」

透君の制服姿も今日で最後だと思うとしっかり見納めしておかなくちゃいけないな。
そうぼんやりと思った。

「最後に敦紀と行きたい所があるんだよね」

とだけ告げられた。
具体的な行先は伝えられなかったが足は勝手に進んでいった。

「……俺さ、この旧校舎の図書館にもまだ本が残ってるって聞いてあの日ここへ来たんだ。扉を開けた時埃臭くて引き返そうとしたとき敦紀を見つけたんだ。泣いてる顔を見て俺が笑顔にしなきゃいけない。自然とそう思ったんだ。あの日ここへ俺が来たのは偶然、偶々もしかしたら運命だったのかもしれない。いや!きっと運命だったんだね。敦紀。」

「俺は最悪だって思ったよ。主席の人にあんな点数のテスト用紙見られて、絶対馬鹿にされるって。また学校で虐められるって。でも透君がそんな人じゃないってすぐ分かったし俺はこの図書館に何度感謝してもしきれないよ。透君と出会わせてくれてありがとうございます。最後に来られてよかった…」

ここにきて本当に卒業なんだということを実感してしまった。
透君と同じ学校に通うのも最後なんだ。
そう思ったらぽろぽろと涙がこぼれてしまった。

「もー敦紀は泣き虫だな」

そう笑いながら透君はキスをくれた。

「絶対に敦紀を離しませんっていう、誓いのキスだよ」

「馬鹿……」

卒業式から数日後、透君の試験結果がでたらしい。

家まで来てほしいとだけ連絡があり、大急ぎで透君の家まで向かった。

家前で透君が待ってくれていた透君へ駆け寄った。
どうだったのか聞いてもいいものか...

「と、透君…結果は…」

「合格だったよ!これで一緒に大学生だね!」

「よ、よかった…」

合格という言葉を聞いて腰が抜けたように座り込んでしまった。

「今日も、母さんが合格祝いでごちそう作ってくれるからもちろんお泊りしていってね」

「だから…

「邪魔じゃないから!」

「はいはい。お邪魔するけど今から手土産と合格祝いでケーキ買ってくるね」

「俺も行く!早速ケーキ屋さんデート!だ!」

透君の笑顔だけでお腹いっぱいだよ。と思いながら透君のお母さんのご馳走を期待している自分がいた。

「……透君。」

「うん?なに?」

「大学生になっても沢山デートしてね」

「当たり前でしょ!というか、その前に卒業旅行もあるんだからね!」

俺たちは手をつないで顔を見合わせて微笑み合いながら、ケーキ屋さんへと向かった。
この幸せが大学生になっても何も変わらないことを願って。