ザッ、ザッ、ザッ…新月の夜、木々が風を受け騒めいている。その風と同化するかのような勢いで森の中を走り抜けていく忍びが居た。歳の頃は16くらいだろうか。長い髪を一つに結った少女で、整った目鼻立ちをしている。だがその顔には焦燥感と疲弊が滲み出ていた。
「どこへ行ったー!」「探せー!」
複数人の男の声が聞こえる。少女の忍者を追っているようだった___
はぁ、はぁ、はぁ、 自分の吐く息が、心臓の音が五月蝿い。怖い。見つかるのが怖い。自分から隊を抜け出しておいて。どうしてこんなことに。どうして見つかった。どうして失敗った。どうして私は隊を抜け…
一瞬意識が飛んだ。危ない。自分でもわかっている。もう二刻は走っている。やっぱり自分はあの城にはいられない。そう感じていた。でも、私が抜け出したのはそれだけじゃない。(もう、暗殺なんてしたくない__。)
前の城・外待雨城では身体能力の高さを買われた。仕事は暗殺だがそれでもいいかと言われた。 構わなかった。最初は嬉しかった。自分の存在意義ができた。仕事ができた。お金がもらえる。物乞いをしなくていい。邪魔と言われることもない。でも。罪のない人まで手にかけるよう指示された。怖かった。城主は元より非情な人だった。
そのうち、戦さを好み意味のない無差別な殺戮を繰り返していた。私・音にも非情な指示がたくさん出された。元の生活に戻るのが怖かったから、逆らえなかった。でも、もう限界だった。捕まってもいい。追い出されてもいい。最後ぐらい、自由に生きたかった。
そんなことを考えていたからだろうか。気づけば肉体、精神ともに疲労が限界突破していたようだ。
目の前が真っ暗になる。そのとき、誰かが私を抱えたような気がした。外待雨城の者に捕えられたのか。何も抵抗できないまま、意識は薄れていった。
「……」
森はもう、何の音もしなかった。ただ、木々が風に揺れ、葉が落ちる音だけがずっと響いていた。
そして、少女を抱き抱えて音もなく走る少年の姿があった。
「どこへ行ったー!」「探せー!」
複数人の男の声が聞こえる。少女の忍者を追っているようだった___
はぁ、はぁ、はぁ、 自分の吐く息が、心臓の音が五月蝿い。怖い。見つかるのが怖い。自分から隊を抜け出しておいて。どうしてこんなことに。どうして見つかった。どうして失敗った。どうして私は隊を抜け…
一瞬意識が飛んだ。危ない。自分でもわかっている。もう二刻は走っている。やっぱり自分はあの城にはいられない。そう感じていた。でも、私が抜け出したのはそれだけじゃない。(もう、暗殺なんてしたくない__。)
前の城・外待雨城では身体能力の高さを買われた。仕事は暗殺だがそれでもいいかと言われた。 構わなかった。最初は嬉しかった。自分の存在意義ができた。仕事ができた。お金がもらえる。物乞いをしなくていい。邪魔と言われることもない。でも。罪のない人まで手にかけるよう指示された。怖かった。城主は元より非情な人だった。
そのうち、戦さを好み意味のない無差別な殺戮を繰り返していた。私・音にも非情な指示がたくさん出された。元の生活に戻るのが怖かったから、逆らえなかった。でも、もう限界だった。捕まってもいい。追い出されてもいい。最後ぐらい、自由に生きたかった。
そんなことを考えていたからだろうか。気づけば肉体、精神ともに疲労が限界突破していたようだ。
目の前が真っ暗になる。そのとき、誰かが私を抱えたような気がした。外待雨城の者に捕えられたのか。何も抵抗できないまま、意識は薄れていった。
「……」
森はもう、何の音もしなかった。ただ、木々が風に揺れ、葉が落ちる音だけがずっと響いていた。
そして、少女を抱き抱えて音もなく走る少年の姿があった。
