会社がようやく落ち着いて、久しぶりの休暇をとった。
1日だけの休みだったけれど、どうしても行きたい場所があって、足を伸ばした。
あの観覧車――
駅ビルの屋上にある観覧車は、街を一望できる。
あの日、本当は夜景を見たかったのだけれど、そんな時間まで一緒にはいられないから、代わりに昼間乗ることにした。
今にも雨が降りそうな空は曇が多く、遠くの景色まで見渡せなかったけれど、菜々子は終始笑顔だった。
あの日と同じように、空を濃い雲が覆っていた。
そのせいか、観覧車の周りは閑散としている。
遊園地のアトラクションと違って観覧車はよっぽど風が強くない限り止まったりしない。
今にも雨が降りそうな天気だったけれど、観覧車はゆっくりと動いていた。
<初めて会った同じ日に観覧車の前で>
あのメッセージを送ったのが随分昔のことになってしまった
母娘連れが1組、乗り場とは少し離れたところで観覧車を見ていた。
小さな女の子が両手を広げて、母親に「抱っこ」という仕草を見せる。
母親に抱かれた女の子が、真っすぐにこっちを見たので目が合った。
「あーっ」
何を見つけたのか、女の子が指差したので、後ろを振り向いてみたけれど何もなかった。



