月城くんの偏食事情。

火照った体をどうにか冷まそうと、俺はしばらくトイレに籠もった。

あれが正式な血の舐め方なのか?
てか正式な血の舐め方って何?
噛んで飲む時も、あんな感じなのかな…?

考えれば考えるほど、よくわからなくなってくる…。

なんとか冷静さを取り戻した俺は、2人のいるリビングに戻った。

「こーくん、痛かった?ごめんね、大丈夫?」

「いや、痛みとかは全然…大丈夫なんだけど…。」

「…あのさ、首から直接血を飲む時も、あんな感じで飲むの?」

「あんな?うん、まあそうだね。」

「えっ、なんか、変だった?」

「変かどうかはわからないんだけど…変になったって言うか…(俺が)」

「普通の食事の作法とは違うかも知れないね。血を直接いただくわけだから、感謝とリスペクトの気持ちを表現するようにはしてるよ。」

感謝とリスペクト?
ハァハァ言ってたけど…?

「血が主食って、大変だなとは思うし、俺の血が美味しいのはまあ…不本意ではあるけど…。」

「そんなに美味しいなら、どうにかしてあげたいなとは思ってて…。」

「ええっ、こーくん…!」

月城くんは両手で口を覆い、大きな瞳をキラキラと輝かせた。

「でも、正直、首に牙でかぶりつかれるのは、怖い。」

「見せてもらうことは出来ないの?」

「緋美くんの血を、飲んでるとこ」

「えっ!」

月城くんは視線を左下に落とし、少し考えてから、

「…弟のを飲んでるとこ、見られるのって、なんか恥ずかしいなぁ…。」

「変態すね先輩。」

「えっ!感謝とリスペクトの食事でしょ?!」

「そうだけど、なんか僕、夢中になってハァハァ言っちゃうし…。」

自覚あるんだ。

「倫理的にも…ダメでしょ、弟のなんて…。」

いやその倫理観はわからんけど…。

「まだお風呂にも入ってないし…」

ふ、風呂?!

「俺は見せても良いと思う。」

「緋美…!」

「しーちゃんに血を吸ってもらえることに感謝できない奴が、しーちゃんに血を吸われる資格はない!」

「怖気付いて帰ればいい。」

「緋美は本当に、優しい弟だなぁ…」

優しさ…なのか?

「折角こーくんが、僕に吸われること考えてくれてるし、僕も無理やりは気が引けるから…じゃあちょっとだけ。」
「自分だったらって、イメージして見てて。」

「…うん、わかった。」


月城くんはさっき俺にしたように、緋美くんの膝に跨ると、首の絆創膏を剥がした。

そして、緋美くんの首筋を、

ツ──…

ピンク色の長い舌で、何度も舐め上げる。

「ちょちょちょ!待って…!それなに?!なんで首舐めてるの??」

「えっ?噛むからだよ?」

「こうしてから噛むと、痛みも和らぐし、傷の治りも早いらしくて。」

「そうなの?!」

「うん、緋美がそう言ってた。」

「だから、いつもはお風呂上がりに飲むことが多いんだ。」

「ちなみに、この跨り吸血スタイルも、緋美におしえてもらったよ。吸われるのに、一番楽な姿勢なんだって。」


「へ、へえ…」

「…….。」


緋美くんは俺と目を合わせないように、黙って顔を逸らしていた。


「じゃあ、続けるね…。」

月城くんは、更に緋美くんの首筋を、何度も丁寧に舐めた。

一方の緋美くんは顔を赤らめ、眉をひそめて目を閉じ、
何かを堪えるように声を殺している。

「そろそろ、いいかな…もう我慢できない…!緋美…(心の)準備できてる…?」

「うん、いいよ。しーちゃん。来て…。」

その会話要る?!
いちいちなんなんだよ…!

「いただきます…。」

と言った次の瞬間、月城くんは薄くて紅い唇を大きく開け、
鋭い牙で緋美くんの首元を、噛んだ。

「あっ……。」

緋美くんの顔が、苦痛で歪む。

やっば痛いんじゃん!!
『唾液が万能薬』みたいな設定どこいった!


「…ジュルッ…!ジュルッ………!ハァッ…!」

「ハァ…美味しいよ…緋美……!」


これは、感謝とリスペクト。
感謝とリスペクト、だよな…。


「あっ…!しーちゃん!!しーちゃんっ…!!あっ!ああっ…!!」

で?これは、何………?