月城くんの偏食事情。

「ちょっ……と待って、月城くんの偏食事情?は、大体わかったけど、その……飲まれる方は大丈夫なの??」

「痛かったり、貧血になったり、しないのかな………?」

「緋美は、全然痛くないって。血も一気に全部飲むわけじゃないからね。献血に行ったら、古い血が抜けて、健康になった〜なんて言う人もいるでしょ?その感覚だと思うよ。」

「ね?緋美。」

緋美くんの方を見ると、

「ん?ああ、まあ、そうだね。」

緋美くんは口を押さえて、耳まで真っ赤にして照れている。

なんだこの兄弟!?だから照れどころわからないって…!!


「ってことで、お願い!」

「一口だけ、試させて?」


月城くんは胸の前で両手をぎゅっと合わせ、少し身を乗り出すと、潤んだ瞳で俺を上目遣いに見つめてきた。

そう来ると薄々わかってたけど、血を飲ませるなんて…。
でも……顔…狡いって…こんなの断れるやつ、いないだろ………!

「しーちゃん。俺は反対だよ!俺の血でここまで育ててきたんだぜ?今日会ったばかりの、どこの馬の骨ともわからない男の血を、しーちゃんが飲むなんて!」

奥歯をギリギリ鳴らしながら、緋美くんは俺を睨んできた。

お兄ちゃんのこと大好きなんだな。
…って感想でいいのかな?

「そういえば、緋美くんは、兄弟なのに体質違うの?食事摂れるの?」

「俺は、しーちゃんとは父親が違うんで。」

「えっ、なんか込み入ったこと聞いちゃってごめん……」

「いや、俺もしーちゃんも、父親のことはよく覚えてないから。でも、しーちゃんの体を作ってきたのは、俺なんで!それだけは、間違いないんで!!」

緋美くんも違った意味で噛みついてくるな。。

「緋美〜、もちろん緋美の血は最高だよ。でも、他人の血に、こんなに惹かれたことはないんだ。試すくらい、いいでしょ?」

いや試すも試さないも、俺次第だと思うんだけど…


「…あのさ、」

「うん?」

「なんで、俺なのかな?」

「あー…。」

「…多分、だけど…。」

そう言って月城くんは、赤い液体の入ったボトルを持ってきた。

「これ、緋美の血以外で、僕がなんとか飲める、市販の血。」
 

そのラベルには、
『Male Virgin Blood』と書かれている。


「…ってことは…。」

「そ、まだ誰とも交わりのない、ピュアピュア男子の血♡」

「!!そ、それで、緋美くんが、純潔守ってるとか言ってて……月城くんは、俺に恋人いるか聞たんだ…」

「うん、味覚は人それぞれ違うでしょ?僕は、処女より童貞の血があってるみたい。」

「あ、ごめん。ストレートに言っちゃった。」

「でも僕も普通に童貞だから!あははは!」


いや、だから、笑いのツボわかんないって…

「でもね、童貞なら誰でもいいワケじゃない。転んだ小学生の血の滲んだ膝見た時、「おっ♡」 とは思ったけど、別に飲みたいとか思えなくて。」

「おっ♡」、とは思ったんだ。
何そのラッキースケベ感……。

「性に貪欲なのに誰とも手さえ繋げていないような、ピュアッピュア!の童貞ボーイの血が、僕の嗜好にあってるんだと思う。」

「君みたいな、ね!」

〜〜〜そんな風に言われれば言われるほど恥ずかしいんですけど〜〜〜!!?


「……ってことで、いいかな?」

月城くんはスッと立ち上がり、俺に近付くと、
細くて白い手で俺の顔を包んだ。

ヒヤリとした感覚が耳と頬に伝わる。


「あっ、ややややや……ちょっ、まだ心の準備が…」

俺の心臓は、爆発しそうなほどに高鳴っている。

この高鳴りがなんなのか…恐怖なのか興奮なの…か……俺にもわからなかった。