月城くんの偏食事情。

「ところでお母様、もう反対されてないなら、一緒に住まないの?お父さんと。」

「月城家のお屋敷に彼を入れるのはさすがに気が引けるから、いずれは別に家を借りて、一緒に住もうと思ってるわ。」

「あなた達はどうする?私たちは一緒に住みたいと思っているけど…。」

「そっかあ、やっと一緒に住めるんだね!良かった良かった!僕のことは気にしなくていいよ。いつでも会えるでしょ。僕はお屋敷に残って、こーくんと住むから♡」

「えっ、そんな勝手に…!」

「大きなお屋敷に一人じゃ寂しいよぉ。」

「しーちゃん!俺も残るよ!!」

「いいよ。じゃあ3人で暮らそう♪緋美は時々こーくんの家に泊まってね。こーくんの弟たち寂しがると思うから。」

「毎晩こーくんと一緒に寝られるなんて…はあっ…♡最高…♡」

うっとりと目を閉じ、頬杖をつく静夢の周りだけ、むせるように甘い花園のような空気が漂っている。
静夢の背中に、期待でパタつく桃色の翅(はね)さえ見えてきた。
唾をつけたとばかりに鱗粉を撒き散らし、まるで『この世のすべての甘い蜜は僕のものだ』と主張する一匹の蝶……。

いや、夜行性だから、蛾か……?


──静夢はいつだって
月明かりを閉じ込めたように、妖しく光っている。

血に飢え 乾いた喉を潤すためか
はたまた 飽くなき好奇心で
月の雫でも啜ったのかと思うほどに。

でも、違った。
静夢の、この世のものとは思えない美貌の内で発光しているのは、果てしない欲望だ。

時には人を呆れさせ、時には恐ろしいほどに暴力的で、それでいてどこまでも純粋で美しい、静夢の欲。

俗世の『正しいか』『可笑しいか』なんて、静夢には関係ない。
彼の心が躍れば、それは全て正解だ。

なんて勝手な人なんだと思う。
でも俺はそんな貪欲な静夢が死ぬほど好き。
愛おしくてたまらない。
きっと俺が一番、狂ってる。───


「……俺って、ストイック過ぎたのかな……。静夢を見てると、自分がちっぽけな人間に見えてくるよ…。」

貪欲なベニスズメ蛾…もとい、静夢を黙って見つめていたお父さんが、弱々しい声で呟いた。

「いいえ、私が体質も境遇も可哀想だと思って、甘やかし過ぎたのかも…。」

「あ、その体質のことでひとつ聞きたいことが。」

「吸血一族は、吸血鬼ではないんですよね?」

「ふふっ、こーくん!またまた〜!」

これでお父さんとお母さんにも笑われたら、もう静夢を吸血鬼かもと思うのは辞めよう。もはや吸血鬼でもなんでもいいんだけど、条件揃い過ぎてモヤモヤするから、この際ハッキリ『違う』と笑い飛ばしてもらいたい……。


「ふふっ、そうね。」

そうだよな。
変なこと聞いて失礼だったかな……


「吸血鬼よ!」


えっ!!?